第68話 俺氏の闘い3 【ざまぁ前編】

俺氏達は露店を閉まって工房に戻った。


「どういうつもりだタケル!? コミケート男爵は本気だぞ! あの人は王族に顔が効く! 例え離れた国といえど、話しが届いてしまえば、城兵のお前なんか簡単にクビにできてしまうんだぞ!」


「オータク。これは闘いだ」


「た、闘い??」


いや、しかし……。

俺氏の事でタケルに迷惑をかけられないぞ!


だってタケルは……。


と……。


と……。


友達なんだからな!


大事な友達に迷惑なんかかけられない!!


「明日は人形を売らないぞ!」


「オータク……。悔しくないのか?」


そ、そりゃあ悔しいさ。

悔しくて悔しくて涙が出る!

俺氏は25年も美少女人形を作ってきたんだからな!

で、でも……。


「それとこれとは話が別だ! お前が失職するなんて、俺氏が我慢ならん!」


「オータク……」


そう言うと、タケルは俺氏を真剣な眼差しで見つめた。




「闘う者は美しい」




彼のつぶやきに顔を赤らめる。


た、闘う者って……。

俺氏のことか?


「な、何を言ってるんだタケル! 俺氏の事と、お前の事とは話が違うぞ! 今は、お前が職を失うかもしれないんだぞ!」


タケルは俺氏の言葉に耳を貸さない。

手を振って工房を出た。


「もうオータクとは関係を持ってしまったからな。明日は朝早くに来るから、ありったけの人形を用意しておいてくれ」


タケル、一体、何を考えているんだ?



◇◇◇◇



次の日。


俺氏は朝早く、タケルに言われたとおり、売り物にできる美少女人形を倉庫から出して準備した。


その数300体以上。


こんなに出した所で、一体も売れる訳はないんだ。

俺氏は何をしているんだろう?


そんなことを考えていると、工房の扉が開き、タケルがやってきた。


すると、途端に香水と石鹸の匂いが工房一杯に広がる。


な、何だ?

この現象は??


俺氏は目を見張る。


天使!?

いや、違う……。


タケルの後から、次々と美少女達が工房に入ってくるではないか!


な、なんだこれは!?

夢か、幻か?


俺氏の工房に母親以外の女子、しかも美少女が入ってくるだとぉ!?

いや、しかもただの美少女じゃない!

超がつくほどの超絶美少女達だ!


サラサラに輝く髪、細い脚、白い肌!

めちゃくちゃ良い匂いではないか!


た、たまらんなりぃっ!!


超絶美少女達は、工房に飾られた人形を見て天使のような笑顔を見せた。


「うわぁ、噂どおりの美少女人形ですねぇ」

「タケル様凄いです! マーリアはこんな可愛い人形を見たのは初めてです」

「とても良くできている人形ね! 凄く可愛いわ」

「私はこんな人形を見るのは初めてだな」

「あたしも、こんな人形見るのは初めてね」


2人ばかし、少女ではない女子が混じっているが、美人なのは間違いない。


乙パイがカイデー過ぎて俺氏パニックッ!


タケルは申し訳なさそうな顔を見せた。


「オータク。すまんが仲間を連れてきた」


俺氏は詰め寄った。


「タ、タタタタケルゥウウウウ!! こ、これはどういう事だぁぁああ!?」


「うむ。彼女達に人形の売り子をやってもらおうと思ってな」


イケメンで性格の良いタケルならば、こんなにも可愛い仲間がいてもおかしくはなかった。


し、しかしだな!

こんなにも美少女達を間近で見るのは初めてなのだぞ!


犯罪に走らないように見守っていてくれたまえ、我が友よ!


人形のモデルで散々美少女達と出会ってきたが、格が違うなり。


興奮冷めやらぬ俺氏であったが、タケルから全員の自己紹介を受けて、落ち着きを取り戻した。

しかし、みんなが可愛いすぎて性的興奮が冷めなかったのは言うまでもない。


こうして、俺氏の人形は美少女3人と美女2人に売ってもらうことになった。


◇◇◇◇


カフェの前に出した美少女人形の露店は人集りができていた。

こんなことは初めてである。


「いらっしゃいませーー!」


僧侶リリーたんの黄色い声が響く。

彼女は俺氏一推しの美少女である。

絶妙に膨らんだ胸。ミニスカート。

年齢13歳と聞いて飛び上がってしまったのは言うまでもない。


しかし、巨乳属性のマーリアちゃんとシシルルアちゃんも捨てがたい。

あの胸の谷間を泳ぎたいでござるよ!


そして、大人の魅力が香る、レイーラちゃんとバルバちゃん。


たまらんなりぃッ!!


もう天国と言っていい。


そんな彼女達の効果もあって、美少女人形がポロポロと売れ出した。


感無量である。


道行く人達は彼女達の魅力に惹かれて集まり、美少女人形を手にとって買う。

初めは男だけだったが、次第に女性も買うようになった。


遠くからは、あの小石を投げつけてきた子供達が複雑な顔でこちらを見つめる。


フフフ……。

ここまで人気が出てしまうと何も言えないのだろうな。

しかも、超絶美少女達が売り子をやっている。なおさらだろう。

子供達よ、美少女のオーラが輝きを放って近寄れんか? クハッハッハッ! 

勝ったなり!


そんな中、コミケート男爵がやってきた。男爵は5人の屈強な冒険者を引きつけれている。

とことんまで、タケルと俺氏を痛めつけたい算段である。性格の悪さがあふれ出ていた。


しかし、男爵は、昨日とは違う売り場の雰囲気に眉をひそめた。


「な、なぜこんなにも人集りができているのだ?」


男爵は美少女達を見てハッとする。

そして、集まった人達が嬉しそうに美少女人形を買って行く姿に釈然としない様子であった。

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