ep.04 光る文章は引き算が命
先月に完結させた中編ファンタジーの振り返りをする間もなく、怒涛のKAC2021 〜カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2021〜 全十回に、祭り気分で参加してしまったため、ひと月以上遅れて、ようやくの創作論更新となってしまった。
やれやれ。しかし楽しかった。
お題に振り回されることなど、正味、学生時代以来だと思えば、久々に血湧き肉躍る感覚だった(笑)
毎度のことながら、作品を公開・更新するたびに、一話あたりの適切な文字数に頭を悩ませているのだが、今回、運営主催のスピード企画に参加したことで、一条の光明が差したように思う。
KAC2021では、一話あたりの文字数制限が設けられていた。
それが即ち、1200 文字以上 4000 文字以下。
つまり、これが運営の推奨する一話あたりの適切な文字数範囲である、と、私は理解している。
そして、実際に参加作品を拝読して回っているうちに、私自身も感じたことがある。
確かに、一話あたり MIN 千二百字では物語る上での情報が足りず、MAX 四千字が集中力を切らさない最長の範囲と思えた(個人差による)。また、この範囲に一話完結するストーリーを展開しようとすると、相当の起承転結力——文章力が必要になる。
ダラダラと冗長な文章を書いていると、全くもって足りない文字数。
しかし、起承転結を施そうと思うと、千二百字未満では、話を膨らませる前にオチに向かって収束するしかない(個人差による)。
かといって、外枠を組んだだけの文章では、だぶだぶに余り、読後の物足りなさが際立つ。しかし、ここをうまく制御できれば、二時間ドラマ級の余韻を与え得る絶妙な範囲。
この文字数範囲の中で迫られるのは、「言葉の取捨選択」だと改めて痛感した。
物語とは、書き込めば書き込むほど良いというものでは決してない。時には、バッサリと描写を削り取ることが求められる。
その中で、伝えるべき事柄を余すことなく伝え切るには、言葉を選ぶセンスと、ある種、模範的な誤解のない文法力、そして圧倒的豊富な語彙力が必要である——というのが、企画に参加したあと、私が得た気付きである。
その上で、きらりと光る個性が、仕上げに乗っかるイメージだ。
独創性とは、それありきではなく、取捨選択の賜物として付随するもの——というのが、この KAC2021 を通じた私個人の見解だ。
ゴテゴテと言葉や情景を飾りたくるのではなく、極限まで削ぎ落とした中に個性がポッと現れて、それをどう最上の状態へと持っていくか——。そこに物語る醍醐味があるのではないか、と思った次第だ。
今更だが、この究極に削ぎ落とした形式美が、俳句なのだろうと思う。
引き算の美学とでも言えば良いか。
私の得た一つの結論としての「読みやすい文章」、あるいはストーリーとは、豊富な知識と語彙力及び文法力に下支えされた、選び抜かれた言葉のセンスが光るもの。
そこから導き出された「面白い文章」、あるいはストーリーとは、その選び抜かれた言葉のセンスが、正しく伝わることを前提に、適切な言葉の空白(言外・行間)で読者に作品の奥行きを存分に感じさせることができるもの。
それは即ち、語り過ぎるな。必要最低限の情報を差し出したなら、あとは読者に委ねて感じさせろ——ということだ。それが今回、私の得た教訓であり、まさに理想とする作品の姿と定義できる。
シンプルに、読者を信じる。これに尽きる。
書き手として、あれもこれも書き詰めて発信したい欲に駆られることは常なのだが、結果として、出来上がった文章を静観すると、ごった煮の闇鍋状態になることが、しばしばある。
自分は何が起こっているか分かるけど(あるいは今後の展開を知っているけれど)、読み手にそれが伝わらない、というもどかしい現象だ。
伝わらないから(正確には、伝わらないと思い込んでいるから)、余計に情報を詰め込んで、元の骨格が埋もれるという悪循環に陥り、自分が何を書きたかったのか、収集のつかない精神迷子になっている。
とどのつまり、文章が不健康極まりないデブになっていることに気付いていないのだ(自戒の念)。
改めて、そこに気が付き、文章ダイエットに挑んだと思えば、KAC2021に参加したことには、大きな意義があったと思っている。
ん?
何も祭りだ、わっしょーい! ばかりを叫んで、はしゃいでいたわけではない(いや、はしゃいでいた)。
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