第27話:6-4;再戦かな

 2人はギルドの前を通った。

 倒れている人を見送りながら。

 崩れていく町並みを聞きながら。

 その元凶である3つ首スライムを探し当てた。そのものは2人に気づき、重い腰を上げた。部下たちを退かして前に出てきた。


「「「ひさしぶりだな」」」

「ああ、本当にひさしぶりだな」


 コオは睨んだ。恨みしかない幹部がいたからだ。


「「「そんな怖い顔をするなよ」」」

「ああ、お前を倒して終わらすよ」


 今度は幹部が睨んだ。1度は自分を倒して宿敵だからだ。


「「「売り言葉に買い言葉か。大した男だ」」」

「だったら、買ってくれるんだよね。高くつくぜ」


 コオはニヤリとした。幹部は額に青筋が浮かび上がった。


「「「商人風情が、調子に乗るんじゃねえ!!!」」」


 威圧であたり一面のモンスターが吹き飛んだ。コオとナオはピリピリとした威圧の風に耐えていた。


「てやー!」


 コオは突っ込んだ。

 幹部は炎・水・草攻撃を順次に放った。

 コオは石を投げられた猫のように素晴く避けた。


「はああー!」


 コオは短剣で切りつけた。連撃。


「「「そんなものは効かん」」」


 幹部はコオを攻撃する体勢。

 と、そこに幹部の体に衝撃が当たる。

 ナオの魔法が幹部を狙ったのだ。


「どうだ、陽動作戦!」


 避ける体勢で爆煙を見るコオ。

 と、そこから浮かぶ眼光。


「!?」


 炎と水が爆煙からコオを襲う。

 コオは鳥のように避けた。


「効いてないのか?」


 そう漏らすコオの前で煙が消える。

 そこには、青々と繁く草の盾が立ちふさがっていた。


「『草の家』」


 幹部は対策を取っていた。技を使っていたのだ。


「お前、そんな技を」

「「「魔王軍幹部をなめんなよ」」」


 再び炎と水がコオを襲う。

 コオは犬のように元の場所に戻った。


「ごめんね。うまくいかなくて」

「いいや、俺も舐めていた。


 迫り来る攻撃。コオとナオは避けることで精一杯だった。


「どうする? もう1度?」

「ああ、そうするしかない」


 2人は攻撃を避けて、コオは先ほどのように突撃。ナオは後方で待機する。


「「「ふん」」」


 炎はコオ、水はナオを追い、草は幹部を守っていた。三者三様の技を使ってくる幹部だった。


「はああー!」

「ちょこまかと」


 幹部は狙いを定めると、コオに直撃。

 ニヤリとする幹部。

 と、炎からコオが突撃。


「くらえ」


 コオは炎を纏った体で草の縦に体当たり。

 盾は燃え始めた。


「「「し、しまった」」」


 コオは盾を破った。

 幹部は盾の裂け目からナオを見た。


「コオ、すごいね」

「サンキュー」

「「「くそー!!!」」」


 ナオの魔法が幹部を襲った。ナオの魔法攻撃は盾を通って幹部に直撃。


「「「がぁぁぁ!」」」


 幹部は身悶えた。ダメージが通った。


「やっぱりすげーダメージなんだな」

「それより、体は大丈夫?」


 コオはナオのところに戻っていた。威力に驚くコオに、ダメージを気にするナオ。


「ああ、この服のおかげでな」

「商人の力じゃないの?」


 2人は静かに笑った。余裕が生まれていた。こういう余裕の時は危ないものである。


「「『水炎の霧』」」


 急に周りに霧が立ち込めた。2人の知らない技だった。


「こ、これは?」


 コオはナオに尋ねた。しかし返事がない。

 コオはナオの方向を向いた。しかし、霧が邪魔で見えない。

 コオはナオを探した。しかし、存在を感じない。


「この霧は?」


 と、何かが体をかする。何かわからないが……


「(やばい?!)」


 コオは咄嗟に霧から出た。すると、左手が少し焦げていた。


「なっ?」


 左手を体で覆った。ズキリと痛みを感じながら。


「(どういうことだ? 知らないあいだにやられている? 霧の中にいたとしても、視界が塞がれていたとしても、ここまでのことが?)」


 コオは頭の中が霧で覆われた。

 と、目の前に見たくない光景があった。

 ナオが倒れていたのだ。

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