第28話:6-5;決着かな

「ナオ?!」


 コオは抱き上げた。左手の痛みはどうでもよかった。


「……コオ?」

「なお、大丈夫か?」

「ええ、よくわからない状況になったから、体を召喚した炎で覆ったの。そしたら、知らないうちに今の状況」


 ナオの体には召喚した炎はまとわれていなかった。攻撃をモロに受けていた。


「おそらく攻撃されたんだ。炎が盾となって致命傷は避けたんだろう。でも、状況はわからない」

「ええ、そうね。何が何だかわからないけど……」


 そうこうしているうちに、2人の頭の中の霧が晴れないうちに、目の前の霧が晴れていった。ナオもまだ戦える様子。その様子を周りのモンスターはヒソヒソと観戦。


「(3つ首スライム様の『水炎の霧』だ)」

「(相手の五感を奪うという技)」

「(知らないあいだに殺されるはずなのに、あいつら生きているぞ)」


 その視線の先には、コオが再び幹部に向かう様子。ナオがやられたことで怒っていた。


「らああー!」

「「『炎草の槍』」」


 幹部は炎がまとった草を伸ばしてきた。

 コオは逃げた。

 が、草が鞭のようにしなって追尾する。


「いたたたた!」


 苦痛の叫びをあげながらコオは叩き落とされた。

 と、ナオの攻撃。

 幹部は草で盾を作った。

 そこにコオ。


「たたーらああー!!」


 コオは体についた火の粉を投げ飛ばした。

 それは幹部がつくる草にあたった。


「コオ、すごいわ」

「ナイスだろ」


 ナオの魔法が幹部を狙う。が。


「「――『草水の穴』」」


 水でたくましく育った草の盾は魔法を防いだ。頼みの攻撃が当たらない。


「な?」

「なにー?!」


 すぐさま炎の草が2人を襲う。不意をつかれて敵の速攻。


「きゃー!」

「うわー!」


 二人はなぎ倒された。

 周りは炎や水たまりや草木でめちゃくちゃだった。


「「「なかなか筋は良かったが、これまでだ」」」


 幹部は大きく見下ろしていた。

 周りのモンスターは歓声。

 周りの人間は閑静。


「「「お前たちの望みのものたちは倒れた。これで終わりだ」」」


 声高々に宣言した。幹部。

 その様子を見る周りのモノたちは、各々の陣営に適した反応を続けた。


「「「さて。降伏をするのなら、少しは……」」」


 と幹部が語っている時に、周りの反応が変わった。ともに同じ反応、ザワつきになった。

 幹部は語りをやめた。

 そして。


「――こ、これで」


 幹部は声の方に反応して……


「――負けて」


 その姿を見た……


「たまるか!」


 そして、コオは突撃……


「「「まだ来るか。しかし、この盾の前には」」」


 とコオが草の盾を触る。

 すると、急に柔くなる盾。

 盾が崩れていった。


「「「なっ???」」」

「お前、知っているか? 商人の能力は、値切るために物の価値を下げることもあるんだぜ」


 そう言いながら倒れていくコオの向こうからは、ナオが構えていた。準備は出来ていた。


「覚悟しなさい!」


 召喚したものを勢いよく破壊。

 そこから出る魔法が幹部の盾を通る。

 それは、今までより強い力がこもっていた。


「「「がああああーーーー!!!!」」」


 幹部は焦げ上がったように立ちすくんでいた。

 周りが静かになった。

 近くにいたコオは立ち上がり静かに様子を見た。


「倒した……のか?」


 顔を覗き込む。

 すると、目がギロリ。

 コオに悪寒が走った。

 ――急に爆発


「コオー!」


 叫ぶナオのところに、コオが吹っ飛んできた。見事にやられたのだ。


「ぐはぁ!」


 コオは血を吐いた。体中の皮がめくれていた。重傷だ。


「コオ、死なないで」

「……がっは、はあ、死なねえよ」

「でも、重症しゃないの」

「ああ。今までにない痛みだ」


 コオの体からは血がポタポタと流れるところと、血が流れない火傷跡とが交互にあった。それは奇妙な模様みたいになっていた。


「いったい、なんなの?」

「俺は一瞬だけ見た。見えた。やつが何をしたのか」

「なんなの?」

「なーに、簡単なことさ。今までの応用さ」

「応用?」

「炎・水・草の能力を使ってきただろ? さらに、その能力を2つ組み合わせてきただろ? その次のことさ」

「ということは」

「そうさ、3つの能力を組み合わせたのさ」

「それで、あの威力」

「ああ、最終兵器ってやつだな」


 2人は状況把握した。

 幹部は2人を確認した。

 にらみ合った。


「これが最後、ね」

「ああ、いけるか?」

「こっちのセリフよ。コオこそ、いける?」

「当たり前だ」


 互いに動き出した。

 コオは鈍い足取りで突撃。

 ナオはフラフラになりながら円を描く。

 幹部は無い力を絞り出す。


「「「くらえー!!!」」」


 3つ首から各々の力を1箇所に向けた。

 そこに向かってコオは走る。


「「「どうした? 前が見えないのか? それとも自殺行為か?」」」


 3つの力が集中しようとしたとき、コオはポケットから何かを投げた。それは、ここに来る途中に助けた老人からもらった毒草だった。


「「「なんだ?」」」

「なんてことのない毒草さ。でも」


 コオはニヤリとした。幹部はその顔を見て寒気がした。


「お前の注意を引くには十分だぜ!」


 視線誘導された3つ首の力がずれた。各々の放つ攻撃がバラバラに別のところを攻撃する。


「「「なっ?」」」

「商人というのは、物の価値を上げることが仕事なんだ。知っているよな?」


 不発に終わった幹部の攻撃。

 宙に浮くコオが投げた毒草。

 毒草を巻き込んで幹部に進むナオの攻撃。


「「いっけーー!!」」

「「「あああっっっーーー!!!」」」


 2人の攻撃が幹部を襲う。それは、モンスターを倒すには十分なものだった。


〈コオとナオはモンスターを倒した〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る