第26話:6-3;助けてくれる人たちかな
コオたちは広場に出た。別の世界でも見た広場だ。
「ここは?」
「共同墓地だ」
ナオの質問にコオは応える。
モンスターたちが墓を荒らしていた。
「ひどい」
「ああ、めちゃくちゃだ」
「この者たちに神のご加護を」
「(あの神様に誓ってもなあ)」
コオは神様を思い出し、期待できなかった。
ナオは祈った。
と、背後からモンスター。
「!」
「ナオ!」
2人の振り向きとともに、モンスターは真っ二つ。
ジウが剣を光らせていた。
「2人ともあぶないよ、こんなところで」
2人は息を吐いた。不意に死ぬところだった。
「そうだよナオ。お前、何回後ろを取られているんだ!」
「へへ、ごめんなさい」
「ごめんで済む分けないだろ。もしお前が死んだら」
「もし私が死んだら?」
……
恥ずかしそうにしているコオを見て、ジウはニヤニヤしていた。ジウは色恋沙汰に敏感だった。
「ごちそうさんです」
「なんだ、その言葉は!」
「いやね……ごちそうさまです」
「だーかーら、その言い方」
「……ごちそうさまです」
「うるさい!」
コオは顔をリンゴのように真っ赤にさせていた。幼馴染に茶化されて恥ずかしさが高まるのだ。
「コオ、大丈夫?」
「大丈夫だ、ナオ。気にするな」
「ところで、さっきの言葉続きは?」
「それも忘れろ」
その2人を見てクスクス笑うジウ。ナオは少し鈍感だった。コオは未だに顔が赤い。
「ジウ、何を笑っているんだ!」
「べーつにー」
「腹立つ言い方だな」
「……ところでナオさん」
「は、はい」
急な呼び止めにナオは少し驚いた。なんの用だろう?と不思議がる。
「さっきから、コオくんではなくコオと呼び捨てですが、言い方を変えたのですか?」
「ええ、まあ」
「それはどうして?」
「どうしてといわれても、ねえ」
ナオはコオを見た。
コオは顔をナオから背けてジウに向けた。
ジウは2人を相変わらずニヤニヤ見ていた。
「……ごちそうさまです」
「もういいわ」
コオは怒りでさらに顔が赤くなった。恥ずかしさと怒りのコラボレーション。
「さて、初々しいところをごちそうになったことだし、ここは僕が引き受ける」
「初々しいって……え? なんて?」
「だ、か、ら。ここは僕が引き受けるから、さっさと向こうに行って欲しいの」
「ジウ……お前」
コオはためらった。何十ものモンスターをジウ1人に相手させるのはさすがに気が引けたのだ。
「これ以上ごちそうになったら、お腹痛くなるし」
「やかましいわ」
いたずらっぽく吹き出すジウを、コオはためらわずに怒った。それが自分たちを先に行かせる冗談だと理解しながら、優しく起こる。
「はいはい。これ以上からかわれたくなかったら、さっさと行くように」
「わかったよ。おい、ナオ、行くぞ」
「は、はい」
コオとナオは去っていった。ジウに信頼しているのだ。
「お前、今度はもう後ろを取られるなよ」
「大丈夫。気をつけるわ」
……
ジウはその会話の様子をやさしく見守り続けた。そして一言。
「コオ、ありがとう。そしてナオさん、おめでとう」
2人がさらに進むと、狭い路地にたどり着いた
1人だけで通るのでもやっとだった。
モンスターがギュウギュウに占領していた。
「これなら後ろを取られる心配がないわ」
「ばか、そういう問題じゃないだろ」
ナオの後にコオが続いた。狭い道で後ろから追いかけてくるモンスターはコオが相手するのだ。
「だって、コオが後ろを守ってくれるんだもん」
「ばか、こっち向くな」
コオの方を振り向いたナオの後ろ――進行方向――はモンスターにとってガラ空きだった。
そのガラ空きスペースに突如現れて背後から襲うモンスター。
不意をつかれたナオ。
立地的に手が打てないコオ。
――そこにアイテムを投げつけるウロ。
モンスターは消滅した。
「……ウロじいさん」
「なんじゃいコオ。まだこんなところにおったんかい」
ウロは飄々と再登場した。ベテランの味が出ていた。
「それよりじいさん、なにをしたんだ?」
「何って、ワシの店のアイテムを使ったんじゃ」
「じいさんの店って、あの品揃えの悪いボロい店?」
「そんなことを思っていたのか?」
「す、すみません」
「いやいや、いいんじゃよ。わしもそう思っていたから」
「はあ」
「そんな店だがの、今は冒険とかでいいアイテムを獲得したりして、それなりにいい店になっているんじゃ」
「そうか、じゃあ、ここはまかせるから、よろしく」
「それでな……っておい、まだ話の途中じゃぞ」
「……任せても大丈夫だよな?」
コオは真面目な顔で聞いた。やはりこの人も代わりになってくれるのだろう。
「当たり前じゃ。モンスター相手なら毒薬使いたい放題じゃ」
2人は去っていった。それを見てウロは一言。
「……大きくなりおって」
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