第25話:6-2;いつもと同じ人と違う人たちかな
「――あははは、ごめんね」
可愛らしく謝るナオ。たしかに可愛いけど、とコオは恋に盲目だった。
「いいよ。終わったことさ」
男前に許すコオ。ナオも恋に盲目で男前に見えた。
「でも、本当に恥ずかしかったんだもん」
「はは、ごめんな」
恥ずかしそうに謝るコオ。本当に恥ずかしかった。
「いいわよ。別に」
恥ずかしそうに許すナオ。それであの力を発揮するとは恐ろしいものだ。
「……」
「……」
「「ごめんなさい」」
謝る2人。一時的とはいえ仲違いしたことで気が病んでいたのだ。
「「何を謝るの?」」
声が被る2人。互いに自分が悪いと思っていた。
「「……なんでもない」」
2人は進んだ。物理的にも精神的にも。
「こっちに幹部がいるはずよ」
「あのやろー。今に見ていろよ」
そう意気込むコオたちの前にモンスターがウヨウヨ。しかし、もう尻込みしない。
「やっぱり、多いわね」
「いちいち相手してられるか」
2人はモンスターたちから逃げながら進んだ。倒すのは苦手だが、避けるのは得意だった。それでも、数が多すぎる。
「やっぱり、魔法で」
「それは置いておけ。幹部に勝てなくなる」
「でも、このままじゃあ」
そう言うナオの背後にモンスター。
コオはナオを横に倒した。
モンスターの攻撃がコオを襲う。
それを見るナオ。
攻撃が当たった。
「――ぎゃー!」
モンスターが血を引き出す。
モンスターを切るもの、モンスターの攻撃を受け止めるもの、倒れたナオを抱えるもの、3人の影が見えた。
それは、いじめっ子3人組だ。
「「「よう、いじめられっ子」」」
3人は軽快にハモる。いつも通りハモる。
「あ……あ……」
「「「ん?」」」
「あんたたち、顔一緒ですね」
「「「ふざけてるのか!」」」
〈すっかりお約束になっていた〉
さっきまでの緊張感が和らいだ。いじめっ子たちはイライラした顔でコオに集まってきた。いじめる風景に似ていた。
「せっかくカッコイイ登場したのに、台無しにしやがって」
「おめえのそういうところが嫌いなんだよ、ボケ」
「おーい、こいつ締めてやる? ボコボコにしてやる? ああ?」
これはこれでピンチの場面だ。しかし、冗談ということはわかった。
「おまえたち、どうしてここに? というか、今までどこに?」
コオは自分に敵対しない3人に疑問を持った。いじめっ子たちは恥ずかしそうに見合わせた。そして応える。
「……それがな、お前に負けてから修行し直したんだ」
「心身ともに1から鍛え直したんだよ、俺たちは」
「だからよ、こんな奴らに負けるほど弱くないんだ。ああ?」
それを聞いて、コオは嬉しくなった。別の世界の悪い3人と違う!
「なんだ、お前たち、いじめっ子から卒業したのか」
「「「ああん?!」」」
いじめっ子は詰め寄った。それは変わらないようだ。
「調子乗っているじゃねーよ、ボケ!」
「あとでボコボコにしてやるからな、覚えておけよ!」
「目障りだ、どっかいけ、ああ?」
コオは苦笑いした。そして、覚悟を受け取った。
「ここは任せていいんだな?」
その言葉を聞いて、いじめっ子は敵の方向を向いた。コオに対して面向かって言うのは恥ずかしそうなことを言い始める。
「戦闘の邪魔だ、どっかにいってろ」
「俺たちの秘密の力を見せる訳にはいかねえ。見えねえとこに行きな」
「さっさといけ、ああ?」
その背中には覚悟があった。3人の発言を聞いて、コオはあることを思った。
「お前たち」
「「「……」」」
「言うことも同じだな」
「「「やかましい。はよ行け!!!」」」
そう言われて、コオはナオとともに去っていった。
それを見送る3人。
「言うことの同じ、か」
「そんなに似ているか、俺たち?」
「似てねーよ、ああ?」
3人は向かってくるモンスターを迎え撃った。そして、一言。
「「「コオ、死ぬなよ」」」
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