第15話:4-1;街に戻るかな
4
2人は旅を始めたばかりだ。
2人はいきなり魔王の幹部を倒した。
2人はその勢いのまま進んでいった。
2人は街に戻っていき、ギルドの受付に進んでいた。理由は、モンスター退治の報酬や敵が落としたアイテムの換金だ。
「どうしてだ!」
怒鳴る声が聞こえる。コオだ。どうしたのだろうか?
「どうしてお金にならないんだ!」
「ですから、幹部撃破のクエストはなかったんですよ」
「でも、倒したんですよ。そこはなんとか」
「そう言われても規則ですし。それに、倒した証拠がないでしょ?」
「そ、それは」
「クリズリーと同じように、冒険者カードに討伐数が記録されていたらいいんですけど」
「これ、すごくハイテクですよね」
「まあ、ハイテクという言葉を使う時代よりは」
「うっ」
コオは恥ずかしさを噛み締めて、受付から離れていった。
ギルドの外。レンガの壁が圧迫する。
「結局クリズリー3体分の報酬と、クリズリーの毛皮だけか」
「いいじゃない。命あっただけでも」
「それはそうだけどさ、俺には借金があるんだよ。そのうち社会的に殺されそうだよ」
「ははは……」
コオの発言にナオは苦笑い。お金のことはナオの魔法でもどうしようもない。
「せっかく魔王の幹部を倒したのにだよ? 世界のために戦ったのにだよ? それなのに報酬がないとか。しかも、防具とか整えることを考えたらマイナスだよ」
「そうだけど、それでみんなが幸せになれば……」
「なったところでどうするんだ!」
コオは壁を叩いた。物に当たるくらい切羽詰っていた。
「……」
「みんな自分のことしか考えていない」
「……」
「……」
「……いいじゃない」
ナオはぶっきらぼうに言った。それはコオには予想外の理解できない言葉だった。
「はっ? なんて?」
「別にいいじゃない。自分のことだけで」
「お前、本当にそんなことを?」
「そうよ。だって、私もそうだもの。私はあなたと旅をしたいだけ。魔王討伐とかどうでもいいの。だから、あなたも自分のために、自分のことだけを考えたらいいの」
「お前、そんなことを考えていたのか」
「そうよ。だから、あなたも自分のことだけを考えて。お金儲け、みんなから尊敬される、モテモテになる、なんでもいいのよ。あっ、モテモテはやめてほしいわ、うふふふ。とにかく、自分のことだけ考えて」
コオはナオの助言を聞いていた。他人のことではなく、自分のことだけを考えると……
「当分は、借金を全額返済することだけど、いけるかな?」
「大丈夫よ。あなた、商人でしょ? それに私がついている」
「でも、宿代とか医療費とか考えたら、返済どころか砂金が増えるばかりだよ」
「じゃあ、アイテムを高く売ったり、商人の力の見せ所ね」
ナオはコオにガッツポーズを見せて励ました。コオはそのたくましい笑顔が見せる姿に救われた。
「そうだな、商人の力でアイテムを高く売って、ボロ儲けだ!」
〈コオはテンションが上がった〉
〈コオはテンションが下がった〉
がっくりとうなだれるコオをナオはなだめていた。先ほどのテンションはどこに?
「まあまあ、普通よりは高く売れたんじゃないの?」
「それでも、少ないよ。1食分くらいだよ」
「うーん、あ、そうだ。何か飲み物買ってくるね。何が欲しい?」
「なんでも」
はぁー、とため息をつくコオはナオを見送ることもしなかった。どうしよう?と悩むコオだった。
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