第12話:3-3;モンスターは強いかな
そのモンスターは、3つ首スライム。さっきのクリズリーよりさらに大きく、スライム状の体から3つの蛇のような顔を持っていた。3つの顔は赤・青・緑の三色に分かれており、体もその3色が渦のように混ざっていた。
「「「魔王様をどうすると?」」」
幹部はギロリと2人を睨んだ。
ナオは恐怖で震えた。
と、ともにコオは倒れた。
「コオくん、どうしたの? コオくん」
ナオはうつ伏せに倒れているコオに駆け寄って揺らした。急に倒れたことで心配したのだ。ナオは敵に訴える。
「(返事がない?)ちょっとあなた、何をしたの?」
「ひっひっひ」
赤い首が意地悪そうに笑い始めた。何かをした雰囲気だった。そしてナオに言う。
「俺たち、何もしていないけど……」
「嘘を付かないで!」
「いや、本当に何もしていないけど」
「だったら、なんで倒れているのよ」
「知るか。そいつに聞いてみろ」
「聞くもなにも……」
その時ナオは気づいた。その倒れたものの表情に恥ずかしさがあることを。ナオはコオに静かに話しかける。
「あのー、コオくん?」
「……」
「……コオくん?」
コオは意識がないように倒れていた。しかし、ナオは疑った目でコオの横っ腹をつねった。
「いだだだっ!」
〈コオは元気だった〉
死体を装っていたものが生き返ったように跳ね起きた。そんなコオをナオは冷めた目で見ていた。痛さに体をくねらせるコオは苦悶の表情だった。
「何つねってんだよ!」
「コオくんこそ、何寝ているのよ?!」
「寝ているんじゃない! 死んだふりだ。熊に会った時の対処法だよ」
「さっきのくまさんたちにはしていなかったじゃない。それに本当にクマにあった時は死んだふりしたら危ないわよ」
「そういう問題じゃない。危ない時にするんだ! ……って、あれ? 本当は危ないの?」
「そうよ。本当は目を見て威嚇したまま後ずさりして逃げる方がいいらしいわよ」
「そうか。わかった。ありがとう」
コオは幹部の目を見て威嚇した。そして、1歩2歩後ずさり。逃げようとするが……
「「「逃がすか」」」
幹部の赤は口から炎を出した。それはコオの退路を断った。逃げられない
「あつつつ! くそ、逃げれない」
「コオくん、逃げようとしたでしょ?」
熱い炎のなか、ナオの口調は冷たかった。百年の恋も冷めるというものだった。
「だって怖いじゃん。声には威厳があり、ギロリと睨むその目はヤバイ奴のそれだって」
「ふーん」
ナオの態度は冷たかった。もうコオに対して興味がなさそうだ。
「あれ? ナオさん?」
あまりの雰囲気の違いを察知したコオは敬称呼びに変えていた。ナオは笑顔だけれども、目は笑っていなかった。
「何?」
「いやーなんかー怒ってませんかー?」
「怒ってないわよ」
「(怒っている。笑顔だけど絶対に怒っている。何か目の奥が怖い)」
「……」
……
「勝負だ!」
〈ナオの怖さが幹部の怖さに勝った〉
コオは引きつった顔で手足は生まれたての小鹿のようにフルフル震えていた。本当は敵に立ち向かいたくない。しかし、ナオの存在が怖かった。
「「「ほお、逃げないか」」」
「あ、当たり前だ。ほ、炎なんか、こ、怖くないぜ」
コオは怖さ全開で強がっていた。敵幹部の青首は口から水を勢いよく出した。コオは逃げずに立ち向かった。もしかしたら、覚悟を決めたコオなら立ち向かえるかも!
「ごぼぼぼぼぼ」
〈コオは陸で溺れた〉
コオは今度は本当に倒れた。立ち向かえなかった。実力の差が歴然だ。
「――な、なんだ今のは?」
意識を取り戻したコオは咳き込んだ。口から水を吐きながら、思ったことを吐露した。
そんなコオを気にせず、幹部の緑首は口から大量の胞子を出した。
「あわっわっわ」
コオは体を草木で絡まれていた。これも敵の能力。しかし、さっきと違う能力でコオはさらに立ち向かえない状態だ。
「んあ、なんだこれは?」
コオは困惑していた。手も足も出ない。降参したい心情だ。
「「「おかしいな?」」」
幹部も困惑していた。圧倒していた。降参させたい心情だ
「何がおかしいんだ?」
「わたしたちの攻撃を受けても、なぜたいしてダメージがないんだ?」
コオの質問に赤は答えた。ダメージの無さに疑問を呈する。
「そうだ。俺たちの攻撃はお前ごときなら即死のはずだが?」
青も言った。即死しないことにハテナマーク。
「あっしら相手にこれは……お前、なにものだ?」
緑も言った。もしかして、ただものではないのか?と言いたげだ。
「なんだこいつ? なんか違う」
「たぶん、それぞれの頭で特徴が違うのね」
「ナオ? (機嫌直ったかな?)」
「おそらく赤は炎、青は水・緑は草の能力を持っているのよ。そして、それぞれで性格も違うのかも。少なくとも、自分の呼び方が違うわ」
「すごいな! 今のだけでそこまでわかったのか!」
コオは羨望の眼差しを向けた。自分がわからないことを一瞬で理解するナオは優秀であると考える。そっか、ナオはすごいやつなんだ!
「ううん。街で買った敵一覧表に載ってあった」
「そんなのあるの!?」
〈情報社会だった〉
コオは肩透かしを感じた。しかし、それはそれ、これはこれ。
2人はその一覧表を見た。たしかに3つ首スライムの欄にはナオが説明したことが書いてあった。というか、それしか書いていなかった。
「弱点とか書いてないの?」
「仕方ないじゃない。敵の幹部よ? 安い情報じゃないのよ?」
「じゃあ、どうすればいいんだ?」
「とりあえず、頑張ってきて!」
「ええ! ちょっと!」
コオはナオに背中を押された。ナオが機嫌を直していることにコオは安心したが、また強敵と戦わないといけない恐ろしさも感じた。もう、なるようになれ!
「あっしの草魔法をくらっても普通に動くとは」
「俺たちも久しぶりに本気を出せるのかな?」
「わたしは本気出すの嫌だな」
そう余裕をぶっこいている幹部に、コオの短剣攻撃。半ばヤケクソで行われた行動だ。
「どうだ!」
コオはドヤ顔で幹部に振り向いた。当たらないと予想していた攻撃が奇跡的に当たって喜んでいた。ザコ敵を一撃で倒した攻撃だから、ある程度のダメージは期待した。
「「「痒い」」」
〈幹部はノーダメージだ〉
コオはショックで開いた口がふさがらなかった。実力の差が露呈したのだ。
「(だ、ダメージがない。どうしよう?)」
「「「お前、商人か」」」
「そ、それがどうした」
「だからあっしらの攻撃があまりダメージがなくて、この程度の剣さばきと短剣でこの痒さの感覚が残るのか」
「武器の価値を上げる能力か、やっかいだな。短剣と服の性能を上げ、俺たちに対して攻撃力と防御力を上げるのか」
「商人なんかと戦うことは普通はないから忘れていたな。まあ、わたしたちの敵ではないけどな」
幹部は独り言をつぶやいていた。それはコオの能力に関することだった。耳より情報。
「こんなに独り言が独り言に見えないのは初めてだ」
「それよりもきいた? さっきの話きいた? コオくんの能力のこときいた?」
「ナオ? そ、そうだ。たしかにきいたぞ。まさか、商人にそんな能力があったなんて」
「コオくん、すごいすごい」
自信なく幹部を見ていたコオは、ナオの言葉で自信がついた。2人はテンションが上がった。コオは勝てそうな気がした。
「よーし、やってやるぞ」
〈コオは幹部と戦闘開始〉
〈2秒で戦闘不能になった〉
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