第45話 フルーツって思ったほどは食えない
「コレが皮ごと食えるバナナか…」
『カフェ兎彩』オーナーであるナミが仕入れた『皮ごと食べられるバナナ』の、お披露目会が行われている。
いつもの面々が高価そうな箱を眺めている。
「食べられるのは~、熟してからなんでしょ~」
「ナミばぁ、皮ごと食えるって凄いことなのか?」
「うん、皮ごと食べれるって凄いことよ」
果物の皮に並々ならぬ執着を持つ女ナミ。
「しかし、なんで買ったかね?」
結構、どうでもよさそうなコトネが高価そうな箱をスプーンで突く。
「なんで? それは保証金で買った」
「無駄使いだな…このバナナの分は返納してこいナミ」
「無駄使いしないもん、コレでフルーツサンド作る」
「皮入りの~?」
「そう皮入りフルーツサンド…バナナ・ヨーグルト」
パカッと化粧箱を開けるナミ、鼻をフンフン鳴らしながら、まだ青いバナナを嗅ぐ看板猫『ザルソバ』
「ウエッ…」
吐くような声をだしてフイッとソッポを向いてしまった。
「ザルソバ咽てるじゃねぇか‼」
青いバナナを指さすコトネ。
「猫はバナナ嫌いなのよ~…きっと~」
「このバナナ6本で、普通のバナナが何房買えたのかと考えると期待しかない」
「その価値を考えると不安しかねぇよ…バカ」
「そうよ~ナミ、いくらで店に出すつもりなの~」
「……考えてない…面白そうだから買っちゃった…」
「ナミばぁ…商売ってのは利益でなきゃやらないほうがいいんだぜ」
幼稚園児にごもっともなことを言われてショックを受けるナミ。
「面白いだけでメニュー考えてると痛い目みるぜナミばぁ」
言葉のナイフがクリティカルヒットである。
「しょうがねぇなナミばぁは、将来は俺が、この店を立て直してやるかな」
「カオウ…オマエが成人するころまで、この店があると思ってるのか?」
「そうよカオウ~、この店の面倒を見るという事は~ナミの将来を背負うということなのよ~、ママはナミみたいな嫁はいらないわ~」
「そうだぞカオウ、オマエが20歳になる頃で、ナミはもう50歳に楽々手が届くんだぜ」
「アハハハ~それはコトネも同じでしょ~」
「いや、ナミばぁの面倒は俺がみなくちゃならない、なんかそんな気がする、そうなる気がする」
グッと拳を握り決意を固めるカオウ、幼稚園児である。
「ママは反対よ~、ナミが義理とはいえ娘になるとか~」
「ナミ、オマエとりあえず15年も待てば結婚できるみてぇだぞ‼ ギャハハハ」
言葉のナイフがガラスのハートに亀裂を入れて、もう泣きたくなるナミ。
(でも…15年待てば結婚はできるんだ)
幼稚園児の放った無責任な言葉に希望を見出そうとしていたのである。
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