第44話 ワライダケって美味いらしいよ

「ナミ、寝るとき電気を消す派?」

 コトネがクリームソーダにブランデーを垂らしてカウンター越しにナミに尋ねる。

「うん、つけっぱなしで寝るのコトネ?」

「いや、そうじゃなくてさ、酔っ払ったときは、つけっぱなしになっちゃうけどさ、真っ暗で寝るかってことよ」

「ううん、オレンジのだけ、つけてるよ怖いし」

「怖い?」

「幽霊的な存在が」

「幽霊…信じてるの?」

「信じてるよ、いるもん」

「見たことあるんだ?」

「ううん、ないけど…いるよ」

 信じているのだが根拠はないんだなとコトネは悟った。

「アタシはさ、真っ暗でないと寝れねぇんだ」

「ふぅん…酔ってなければね」

「そう、酔ってなければ…不思議なんだ、酔っていても自宅でないと寝れねぇんだアタシ」

「で?」

「ん?」

「いや、暗くしないと寝れないとか、何の話?」

「うん…そう考えるとさ…オレンジの機能いらなくねぇ?」

 何を言い出したんだろう、この女は…ナミは思った。

「来たよ~ナ~ミ~」

 ナツコが入ってきた。

「おっナツコ、オマエ、寝るとき明りを全部消す派?」

「ん? 電気~……どうかな~…消してるつもりだけどな~」

「アレンジのも?」

「オレンジ~…グロー球のこと?」

「アレ、グロー球って言うんだ、知らなかった」

「ナミは何にも知らないのね~」

「グロー球って、なんか護られてる感じがするの、幽霊から」

「幽霊~?」

「そうなんだ、ナミは幽霊を信じているんだと」

「へぇ~、ま~ぁ、人面祖が出来るくらいだからね~」

「ギャハハ、そりゃそうだ、自らの身体が都市伝説だもんな~」

「私の身体は都市伝説じゃない‼」

「そうだ、オマエの股が都市伝説なんだよナミ」

 バカ笑いしているコトネ。

「ナミの股~伝説の股~? ウケる~」

「人の股でウケないで、なんか凹むから、意味なく凹むから」

「なんかアレじゃね? 菌類の新種に侵されてるとかじゃね?」

「未知の~ウィルスじゃなくて~?」

「そう、ウィルスじゃなくて菌類ってのがナミっぽいんだよ、ギャハハ」

 もうコトネもナツコも笑いが止まらない。

 机をバンバン叩いて楽しそうな2人を肩を震わせて涙をこらえているナミ。

 そう…自分だって他人のことなら大笑いできるのに…。

 話題の震源地は自分の内ももなのである。

「ナミ、オマエ、へんなキノコを下で咥えたんじゃねぇの?」

「変なキノコ~、ブツブツの~? アハハハ」

 大笑いする友人2名を目の前に、スマホで『ワライダケ 入手 相場』と検索しているナミ。

(手に入ったら、こいつ等に食わせてくれよう…)


 ワライダケの画像を見て、ニマニマと不気味悪く微笑むナミであった。

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