第43話 味覚の『不味い』は個人差あるけど?

『カフェ兎彩』、相変わらず貸し切り状態となる平日の夜。

 居酒屋と勘違いしているコトネ仕事帰りに立ち寄ることになっている、もう日課である。

 週4で不定期にやってくるナツコ、主婦だけあって時間はバラバラ、まぁ2人とも近所なので顔を合わせることが多いわけだ。

 そして今夜は…。

「何味か当ててみて~」

 ナツコがナミとコトネにソフトキャンディを手渡す。

 フニュフニュと噛むナミとコトネ。

「解る~?」

「解ったぜ‼ ゆずだ‼」

「ブッブ~‼ ゆずではありませ~ん」

「当てるわ…ミカンの皮味」

「……マジか?」

「ナミ~、ミカンまでは解るのよ~、皮ってなに?」

「ミカンだけではないと思うの、なんか、この香り…指に残るミカンの皮って感じがする‼」

「ナミ…オマエ…ミカンの皮味って売れるわけねぇだろ…」

「クイズになるくらいだから在り得ると思う、自信がある、ミカンの皮味‼」

 マジマジとナツコを見ているナミ。

「ナミ~、ミカンの皮味ではありませ~ん」

「えっ? ミカンの皮じゃないの? じゃあオレンジの皮味‼」

 まさかという目でナミを見るコトネ。

「中身を捨てて、皮の方は捨てねぇんだ…この女」

「ミカンでもオレンジでもないの~ナミ」

「えっ? グレープフルーツ?」

「の皮か?」

 コトネの顔を見てコクリと頷くナミ。

「ナミ~、皮ではないわ…残念だけど」

「皮でなければ…もう、お手上げ」

 ナミが両手をあげる。

「なんで完結系の皮縛りなんだよ…」

「コトネ、鶏皮好きじゃない」

「うん、鳥はね‼ 果物は皮食わねぇよ‼」

「そうよ~ナミ、出来るだけ剥くのよ~可能な限り~」

「可能な限りってなに? むしろ可能性を感じるんだけど皮食に」

「ソフトキャンディに皮は入ってねぇ、皮食を感じる必要性もねぇ‼」

「じゃあ、何味なの?コレ」

「それを~当てるからクイズなんじゃない~ナミ」

「ふりだしに戻ったじゃねぇか…」

「ミカンの皮が食べれるかって話?」

「ソフトキャンディが何味か?だろ‼」

「ミカンの皮味‼」

 結構、頑固なナミである。

「ナ~ミ~、皮じゃないのよ~」

「じゃあ、ミカン…にしては皮感が凄まじい気がする」

「なんだよ皮感って‼ オマエ、ミカン皮ごと食わねぇだろ‼」

「剥いて食べる、でもミカンを剝いた後に爪の隙間に残る皮感って凄まじくない?」

「解る~、いつまでも残るわよ~」

「あの感じがする、残り香的な感じ」

「せめて後味って言え…」

「味って、食べたことないし味は語れない」

「じゃあ、なんでオマエは、自信満々でミカンの皮味を宣言してんだ‼」


 そんな夜を過ごして店を閉めて、就寝するナミ。

 電気を消して、ふと思った。


(で…結局、何味だったんだろう…気になる)

 答えを置いて行かないマイペースなナツコにモヤッとした夜を過ごすナミであった。

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