第42話 味覚の『美味い』ってどういうこと?

「鍋に、シイタケ入れるなよ‼」

 例によって、閉店後の『カフェ兎彩』にて集まる面々、早々にコトネがキレだす。

「コトネ~、鍋にシイタケは付き物なのよ~」

「そうよ、鍋に深みが増すのよ」

「バッカ、大体ナツコなんて何を作ったって味を無に帰すのに何が深みだバッカ、シイタケに旨味なんてあるか‼」

「僕も…シイタケ苦手だな…ママが作った鍋のは、クセが消えるから食べれるけど…」

「ほら~カオウは好き嫌いが無いのよ~、私の教育の賜物なんだわ」

「味が消えるから、好きも嫌いも無いのよ、味覚が発達してないのよ…ナツコのせいで」

 とりあえず、まとめるとナミは鍋の深みが増すのでシイタケは入れる派。

 ナツコは雰囲気で鍋にシイタケを入れる派。

 コトネとカオウはシイタケが嫌い。

「シイタケ嫌いとか? 美味しいシイタケを食べてことがないからよ」

「ナミが好きなシイタケの部分が嫌いなんだよ‼」

「アレじゃな~い、最初に食べた印象が悪いのよ~、私も茶碗蒸し嫌いだもの、あったかいプリンだって言われて食べたらしょっぱいんだも~ん」

「そういうことか…ワタシもウニが苦手だけど…潮の香りと感じるか、ウンコと感じるかの差よね」

「ウニは食えるわアタシ」

「茶碗蒸しは~」

「まぁ食えるけど、食いたいとは思わないわナミは?」

「作ったことないかも…買ったこともないと思う」

「ナミばあ、食べていいか? 煮えたっぽい肉から」

「どうぞ」

「待て‼ カオウ…シイタケから食えよ」

「なっ? コト姉ちゃん…肉を差し置いてシイタケからか?」

「あぁ…食ってみてくれ、オマエが食えたら、アタシも一口食ってみる」

「人の料理を危険物扱いしないでくれる‼」

 ナミは不機嫌である。

「ナミ、鍋の問題じゃねぇんだ、シイタケが問題なんだ」

「私、豆腐とネギ食べよ~、あっ? カマボコが入ってる~」

「鍋に? なぜに?」

「えっ? 入れない? コトネの家」

「記憶にねぇな…鍋にカマボコ」

「練り物は入れるわよね~」

「不味いとは思わねぇけどな…うどんには入ってるし…」

「そうよ~、チャーハンにも入ってると嬉しくなるわよ~」

「炒め物の話じゃないのよナツコ、カマボコは鍋に入れるか?という問題よ」

「違うだろ…シイタケが食えるかどうか?だったはずだぜナミばぁ」

「食べるわよシイタケだもん」

「いや、シイタケを入れた時点で、全ての鍋はシイタケ鍋に変わるんだ、シイタケの浸食率は半端ねぇんだ、全てがシイタケ味になっちまうんだ…」

「そもそも…コレ何鍋なんだ?…ナミばぁ」

「……闇鍋?」

「ナミばぁ…そりゃねぇぜ…」


 冷蔵庫で中途半端に余ってる系の食材を煮ただけの鍋とは言えなかったナミであった。

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