我慢と引き換えの健康とか…釣り合わない
第41話 味覚に『辛い』は存在しない
「コレ土産な」
コトネが県外出張へ行ってきた、ホイッとナミに土産を渡す。
「なにこれ?」
「なんかカンズリなる調味料だそうだ」
「で?」
「コレで何か作ってくれ」
「調味料から料理を想像するの?」
「ダメなの?」
「素材からっていうなら解るけど、調味料からイケるものなの?」
「料理を想像したことがないから知らんけど…まぁ、舐めてみ」
カポッと蓋を外してひと舐め…
「うん…辛い系」
「よし‼ 頼んだ、週末にナツコも連れてくるから、笹団子もあるから食えよな、じゃあな」
それだけ言い残してコトネは帰っていった。
『カンズリ』なる調味料と『笹団子』を残して。
「ザルソバおいで」
スプーンにちょっと『カンズリ』を乗せて看板猫『ザルソバ』に舐めさせようとするナミ。
フイッ‼
ちょっとフンフンと嗅いで、ソッポを向く『ザルソバ』
「むむむ…やはり辛いものは避けるのね…野生の本能だわ」
そう、動物が感じる『辛い』は死の危険サインでもある。
コレを楽しむのは人間だけだとナミは思っている。
そして『辛い』を好む人間は浮気性だと決めつけている。
「だって脳内麻薬に依存しやすく、危険を楽しむ性格だから…浮気、不倫を楽しめる性格なの」
断わっておくがナミの持論である。
過去に何かあったのかもしれないが…。
「とりあえず…適当に使ってみよっと」
昨夜の残り『おでん』に辛子の代わりに…
「イケる、コレはイケると思ったのよ」
そんなわけで意外性を求めることにしたのだ。
「凄~い、ナミ、こんなものに合わせるなんて、さすが天才よね~」
「おう、さすがだぜナミ」
そんな妄想内での称賛がナミを奮い立たせた。
脳内テーマ曲はロッキーである。
そして気分はアイアンシェフである。
大体、感覚は掴めた、和の調味料だから和食はOKだということを。
「じゃあ、洋食にいこーっと」
ピザを頼んだ…大丈夫であった。
作る気はサラサラないのである。
「タバスコの代わりにもなるじゃない」
「中華…幅広いな~、とりあえずポピュラーのものでいいか」
麻婆麺、あんかけ炒飯…問題なかった。
麻婆などベースの方が辛くて入れても変わらん。
「大発見だわ…辛い物は足し算じゃないのね…」
ナミは発見した。
辛いは、一番辛い物だけ生き残るのだと…
「最後に独りしか生き残れないシビアな世界なんだ」
週末、コトネとナツコが『カフェ兎彩』にやってきた。
「よし、作ってくれ」
「楽しみにしてたわよ~」
ナミの表情に感情はなかった。
「どうした?ナミ」
「全部…使っちゃった…」
カンズリ2瓶、ALL試食で使用したのである。
「感想は、意外に何にでもイケるけどワサビの代わりにはならん‼」
『刺身』はどうかと思った。
試食したナミの感想であった。
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