第40話 カタツムリ≒ナマコ

「補助金また来たのよ~」

 日本は独身者に厳しい国である。

 ウッキウキで『カフェ兎彩』に入ってきたナツコをジロッと睨むコトネとナミ。

「なにが18歳以下の子供に10万とか? クソが‼」

 コトネが冷めつつある紅茶を一気に飲み干す。

「いいなー、私も補助金欲しい」

 ナミはカウンターに顎を乗っけて感情の無い顔と声でナツコを見ている。

「いいじゃねぇか‼ ナミは休業補償も出ただろうが‼」

「不思議よね~開店していても休業みたいなものなのに、お金が貰えるのよ~」

「ナツコなんて無条件じゃない‼」

「無条件じゃないわよ~カオウがいるから貰えるのよ~、コトネは対象外じゃな~い、子供居ないから~」

「うっせぇ‼」

「そうよナツコ、コトネは子供以前に結婚相手もいないんだから、子供なんてハードルが高すぎる」

「オマエもだろ‼」

「大丈夫よ~、ナミは股から勝手に生やすんだから~キノコみたいにポコポコ増えるるのよ~」

「ギャハハ、人面祖か? 人面祖だな」

「別に生えないし…増えないし…薬塗ってるし…飲み薬も飲んでるし」

「えっ? 塗って飲んで?」

 コトネが意外そうな顔で聞き返す。

「そう、塗って飲んで」

「それで通院してんのよ~、2か月スパンで~未だに…ウケる~」

「ウケないで‼ 深刻なの‼ この不安が解消されないと結婚どころじゃないの‼」

「オマエ、ソレを理由に男作れませんってのは、ちょっと無理があるんじゃねぇか?」

「そうよね~、それ以前の問題よね~」

「違うの‼ 考えてほしいの、もし、そういうことになったとき…なんかそんなものが生えてたらって…タイミングよく、顔を出したらって…そう考えると躊躇するの」

「いやソレ、ウケるだろ? 股に顔突っ込んだら、股から顔がニョキッと…生える…えっ? 怖くね?」

「ホラーよね~」

「ちょっと想像しちゃったぜ…ナミ…ゴメンな、なんか笑えねぇわ」

 ポンッとナミの肩を叩くコトネ。

「ドンマイ…ナミ」

 慰めるナツコ

「やめて、同情いらないから‼ それと股から生えてないから、付け根の内側よりが化膿しただけだから、そもそも顔じゃないし」

「アタシから言えるのは…使い道が無くても、よく洗えよな…それだけだ」

「そうよ~ナミ、デリケートゾーンってくらいだからね~」

「洗いすぎも良くねぇって言うけどな」

「そうね~、なんか洗浄薬もあるみたいよ~」

「大丈夫だから…一回、股から離れてくれる? 股じゃないから、くどいようだけど、股じゃないから」


 否定するも股だけが独り歩きしていく土曜日の夜…。

 2人が帰った後、TVを観ながら思い出したのである。


(そういえば補助金の話してたんじゃない…なぜに股に?)



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