第37話 最近ハマってる程度でドヤ顔?

「なんでアタシも?」

 結局、申込用紙に3名の参加者指名を書いてナツコが提出してしまった…。

「いいじゃな~い、どうせ暇じゃな~い」

 前日に参加を聞かされ、しっかりと当日参加しているコトネ、お察しの通り暇なのだ。

「コトネ、練習してきた?」

 ナミは人差し指をクルクル回して、やる気満々である。

「するわけねぇだろ…なんだその指? エアピザ回してるのか?」

「イメージトレーニングよ」

「そうよ~、私とナミは、毎日クルクルしてるのよ~」

 ナツコもエアピザを回している。

(やべぇ…ピザバカが2人になってやがる…)

「完璧よね~ナミ」

 同意を求めたナツコの顔を真顔で見返しコクリと無言で頷くナミ。

(クルクルしすぎて、頭がクルクルしてやがる…)

「クラクラするぜ…」

「グラグラさせちゃダメなのよ~‼クルクルするのよ~コトネ」

「うっせぇわ‼」


 眩暈を感じつつ、市民会館の一室へ入る3人、教室には、1すでに10人ほどの女性が席に座っていた。

「意外に集まるもんだな」

「ねぇ~、ナミのカフェでは、こんなに集まらなかったのにね~」

 悪気はない…と思いたいナツコの一言を薄い胸で受けつつ着席するナミ。


 しばらくすると先生が表れた。

「ピザ好きそうな身体してやがるぜ」

 コトネが小さく呟く。

 顔はジャパニーズ、ボディはイタリアンみたいな40代のおばさんである。

「あの帽子が説得力あるのよね~、ナミもアレ被ってみたら~?」

 ジャパリアン先生のコック帽を指さすナツコ。

「え~、私?似合うかな~」

 満更でもない顔のナミ。

「おい…そこのバカ2人…ジャパリアン、めっちゃ睨んでるぞ」

 コトネがジャパリアンをビシッと遠慮なく指さす。

「あらっ? 嫌だ~、コトネの方を睨んでるのよ~」

 ジャパリアンの視線を追ったナツコ、指摘通り、ジャパリアンはコトネにターゲットを移したようだ。

「えっ? ホントだ…なんでアタシ?」


 そんなこんなで3~4人で班分けされたのだが、ジャパリアンはナミ・コトネ・ナツコを別々の班に振り分けた。

 ベテランの勘がそうさせたのだ。

 ジャパリアンが笑顔でパスタを取り出した。

「では、初日はイタリアンの代名詞パスタから始めます」

「パスタかよ‼」

 コトネがナミの顔を見る。

 無言でパスタの束をしっかりと握っているナミ。

 料理に対しては真剣なようだ。

 そして、班のイニシアチブをしっかりと捥ぎ取るつもりだ。

 そう…ナミは真剣なのである。

 暇つぶしや花嫁修業気取りの連中と心構えが違う。

(私が何日クルクルしたと思っているの? こいつ等と一緒にしてほしくない)


 ピザではなかったが、いずれピザに行き着く日まで…まずはパスタを極めんとするナミであった。

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