第34話 家畜には敬意をもって『様』を付けろ‼
シュルッと、ふろしきをほどくと、仰々しい4段の重箱が姿を現す。
「おいおい…高そうじゃねか」
「漆と金箔で仕上げられております」
鳳凰と龍が彫られ金箔が施されている重箱。
「センスが…成金~」
ナツコのファーストブーイングで開梱の義は終わった。
ナミが立膝でススッと重箱の後ろに移動する。
「一の段‼ 参ります‼」
「そうだ…問題は中身だぜ…まさかのカロリーフレンドでオトすつもりじゃあるまいな…」
フッ…小馬鹿にしたような冷笑を浮かべナミが一段目の蓋を開ける。
「お豚様でございます」
それは見事までに、お豚様尽くしであった。
観覧席の先頭で何やら騒がしいママ友の会、暗黙のリーダーナツコの周囲には、軽い人だかりができていた。
そして…ざわついた…。
「生姜焼き…トンカツ…そして…ビックカツ‼」
ナミがスッと駄菓子をカオウに差し出した。
「ナミばぁ…コレ…魚肉だぜ…」
「………大きな勝利の栄光をキミに‼」
なんとか誤魔化したナミ。
「そして…二の段‼」
一の段を退けると、ギャラリーがどよめいた。
「カーネルさん家のフライドチキンと焼き鳥…ベビー〇ターチキン味‼」
ナミがスッとコトネにベ〇ースターチキン味を差しだした。
「オマエ…本気か?」
「ピーナツ入り……おつまみに‼」
強引に乗り切ったナミ。
「三の段‼」
ママ友の表情が強張った。
「冷めた、すき焼き‼」
そっとナツコの掌に生卵が乗せられた。
「ナツコ…卵は…割れる?」
「大きなお世話よ~」
もはや視線すら合わせてもらえなかったナミ。
「与の段‼ お米の章‼」
もはや落胆の声しか聞こえなかった。
「コンビニのおにぎりじゃねぇか‼」
「レギュラーの具……フルコンプ‼」
「ナミばぁ…俺、シーチキンマヨ食べていいか?」
カオウの手にトスンッとシーチキンマヨが置かれた瞬間のカオウの笑顔を忘れないでいてあげたい。
「オマエ…ファストフードからスーパーまで幅広く買い漁ってきたな」
「駆けずり回って疲れた」
「コレでいいのかオマエ」
「作るより買った方が安かった」
ナツコのママ友内の地位が少し下がり、ギャラリーが散った頃、バイクの音が近づいてきた。
「コッチでーす」
ナミがバイクを呼び寄せた。
「お待たせしました、ピザキャップです、ご注文のピザとパスタお届けに上がりました」
程よいタイミングでピザとパスタが届けられたのである。
「コイツだきゃー‼」
コトネとナツコの文句を百も聞きつつ黙々とピザを食べるナミ。
(照り焼きって、万能ソースなんじゃない?)
周囲の落胆など意にも介さずに、テリヤキソースに秘められた無限の汎用性に驚愕していたのであった。
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