第32話 スパイス入れりゃクラフトコーラか‼
「やっぱ、原点に返るわ」
「なにが~?」
「カフェのよ‼」
「オマエ…今更…」
「そもそも返るほど進んでないじゃな~い」
「カフェにペットボトルを持ち込むような客しか来ないことが問題だったのよ‼」
ナツコをナミがジロッと睨んだ。
「もう、憩いの場感覚だよなココ、なっ?」
コトネがナツコに同意を求める。
「コーラ飲みたかったのよ~今日は暑いし~」
「ところでナミ、弁当の件、進んでいるのか?」
「大丈夫よ、重箱は準備したの」
「うん…中身の方だよ、アタシが心配してるのわっ‼」
語尾が強まるコトネ
「中身ね…うん…卵焼きはね、入れようと思っている」
ナミがうつむきながら答える。
「卵焼き?」
コトネの眉間に深い縦じわが刻まれる。
「うん、定番ね~、で?」
ナツコがニコッと笑ってうつむくナミの顔を下から見上げる。
「…うん…でなんだけど…まったく決まってない…ません」
思わず敬語で言い直すナミ。
「オメェ、1週間切ってんだぞ‼」
血中のアルコール濃度が上昇してきたコトネが声を荒げる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
思わず3回謝罪を連呼するナミ
「オメェ、ビートルジュース呼んでんじゃねぇんだぞ‼」
「あぁベテルギウスね~、昔、映画で観た~幽霊のヤツ、ビートルジュースって3回唱えると召喚できるってヤツ~」
ナツコがポンッと手を叩く。
「何を召喚するつもりか知らねぇが、卵焼き以外未定って…オマエ…ナミ…いやさ‼ナミさん‼」
「はい‼ 当日には度肝を抜く弁当を、お持ちする所存であります‼ ゲロゲロリ」
「その心意気やよし‼ 当日、貴殿の成果を期待している‼ 本日は解散‼」
若干、アルコールに負けて酔っ払ったコトネの一言で、本日は解散となったわけだが…ナミの顔は晴れなかった。
(ハードル上がっちゃった)
カウンターのテーブルにうつ伏せるナミの後頭部を看板猫♀『ザルソバ』が踏んづけて移動する。
もはや主人などとは思っていない。
そんなことすら気にならない程、なぜか運動会の弁当メニューが決められないのだ。
思い返せば、小学校の頃から運動会などというものは、両親に来てほしくない派であったことが災いしているのか?
「カロリーメ〇トしか食ってなかったような気がする…」
それもフルーツ味を。
思わずナミの頭に四角い重箱にキレイに並べられたカロリーメ〇トが浮かんだ。
「チーズ味をおかずにフルーツ味を食べる的な?」
迷走したまま夜が更けていく…
思わずスマホで『運動会』『弁当』で検索しちゃうくらい迷っているナミ。
(どうしてこんなに悩んでいるのだろう?)
思考の終着駅は、いつも『そもそも論』なのである。
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