食事で遊べるのが先進国

第31話 大食いとか?

「腹たつのよね…」

 大食い番組を観ていたナミ、ご立腹である。

「べつにいいじゃねぇか、スカッとする人種もいるんだしよ、こういうの観てさ」

 ナミの自宅兼店舗の奥で、くつろいでいるコトネはボケーッと大食い女王のハグハグと胃に収まっていく飯を観ている。

「人様のリビングで主以上に、おくつろぎのアンタにもよ‼」

「べつにいいじゃねぇか、店にいるか、ココにいるか、それだけの差だぜ、今日は横になりたいほどに怠いんだ」

「…おんにゃの子の日?」

「いんや、ワクチン接種2日目…生理より怠い…」

「辛いの?やっぱり」

 ナミ、2回目の接種はまだなのだ。

「辛くはねぇ…が…ひたすら怠い…なに…なんか今なら世界が終っても許せる感じ、受け入れられる気怠さ」

「気怠く地球滅亡を受け入れないでくれる、私、まだやりたいことあるのよ」

「へぇ~興味ないけど、暇だから聞いてやるよ、なにがしたいの?」

「イースター島でモアイを掘りたいの私」

 ゆっくりとナミの方を振り返るコトネ、真剣な眼を確認すると大きくため息を吐いた。

「オマエ…無駄に長生きしそうだよな…元気に老いろよ」


 カランッ♪

 空間空虚率が高めの『カフェ兎彩』のドアが開いた。

「ナ~ミ~、お仕事持ってきたわよ~」

 金に成らない常連客ナツコである。

「仕事って、ナミ、オマエなに?バイトでも始めるのか? 応援するぜ、オマエが務める会社をよ~」

「バイトはしない、補助金があるから、でも副業はするの、弁当作るの、始めたのよ代理弁当屋」

 ナミお得意の直筆POPをコトネの尻にバンッと貼り付ける。

「テメェ‼ あっ…糊付けしてるじゃねぇか‼ オマェ、コレ買ったばっかのパンツなんだぞ‼」

「ウエストを甘やかすゴムのサルエル~、コトネったら笑える」

 ケタケタと笑うナツコ。

「で? 弁当いくつ?」

 ナミの顔は真剣である、当然だ、ビジネスである。

「5つ~」

 ナツコが両手の指で『5』をつくり前に出す。

「……なんで右手が3で、左手が2なんだよ…なんか気持ち悪りぃ5のつくりかただな…」

「意味があるのよ~」

「意味?」

「カオウと旦那と私で3つ~、ナミとコトネで2つ~」

「毎度‼ ……私とコトネ?」

「2週間後の~土曜日~カオウの運動会なのよ~」

 幼稚園の、お知らせを差し出すナツコ。

「おいおい…行くことになってるのかよ…幼稚園の運動会」

「……行くわ、弁当5つ引き受けた‼」

 ナミがグッとサムズアップで応える。

「おいおい、オマエ、土曜日休むことになるんだぞ店」

「大丈夫‼ 補助金が入るから‼」


 生活の糧を補助金で賄う店主、それがナミである。

「…アタシも行くのか…」

 コトネが尻のPOPをベリッと剥がして大きくため息を吐いた。



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