第30話 後一振り たったそれだけで料理は決まる
「どうよ~コレ~、レアパチモンなのよ~」
ナツコがスマホをナミに差し出す。
画面にテンプレのフランケンシュタインの怪物、ボロボロのシャツに付けられた名札に『三浦』と書かれている。
「フランケン三浦? なに?」
「嫌ね~、今、カオウがハマっているゲームよ~」
「あ~、ふりかけのか?」
コトネは興味なさそうにストローを咥えたまま答えて、『ザルソバ』を構っている。
「そう、パチッとモンスターよ~、パチモンGETだわさ~‼」
バシッとポーズを決めるナツコ。
「決め台詞以前に…省略の仕方よ…パチモンて…イタッ‼」
コトネの咥えたストローにじゃれていた『ザルソバ』、まさかの前足でストローを押し込むという戦法で挑んできた。
「は~ん…で?」
ナミも興味はなさそうである。
「ヤダ~、2人ともやってないの?『パチッとモンスター』ママ友の間でも子供と一緒に流行っているわよ~」
ナツコが、おっとりとした口調で、その魅力を語りだす。
目の前に置かれた和風オムライス(おかかふりかけシリーズ第3弾)が完全に冷めるほどに語ったわけだが…
ナミは思ったのだ。
(興味のないものについて、熱く語り、あまつさえ薦めてくる、目の前の信者って…ウザいな~)
「ナツコよ~、パチモンってよ~」
コトネが負傷した唇を舐めながら、ソレどうなんだよ口調でナツコのスマホを覗く。
「おいコレ…見てみろ‼」
コトネが画面を拡大する
『フランケン三浦』の左手に『フランクミュラー』の腕時計…
「コレ、まずくねぇのか? 商標とか?」
「大丈夫よ~、ソレ『フ〇ンク三浦』のだから」
よく見れば…そう、それ自体がパチモンである。
「おいおい…有名ブランドのパロディ商品からの更なるパロディなのかよ」
コトネの表情が強張る。
「こんなのもいるのよ~」
ナツコがスマホの画面を切り替える。
「アディ(オス)…って…(メス)もいるのかよ?」
「さぁ~? 増えるからにはいるんじゃないかしら~」
「そもそもアディってなんだよ‼」
「アディはパチモンよ~」
「当然…スニーカーは……微妙にロゴが違うな…」
「なんか、誰もが知っているブランドを微妙に掠るラインを攻めているのよ~」
「おいおい…なんか、ターゲットが解ってきたような気がするぜ…」
子供の心を掴むデザイン、ブランドを集めたがる主婦、双方をターゲットにしている『パチッとモンスター』
恐るべしマーケティング戦略である、おそらくはギリギリのパロディ商品ならば訴えられないという打算で成り立っているアプリなのだ。
スクッと立ち上がったナミ
「パチモンGETだわさ‼」
手にしたスマホには
レアパチモン『EVEさん楼蘭』
チャイナ服を着た女性型パチモンを、しっかりGETしていたという。
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