第29話 カレーは全てを受け入れる
『ふりかけごはんダイエット』の有効性について、自身の身で検証結果が得られない状況に疑問符を打たざるを得ないことを、ようやく理解したナミ。
(体重…増えてない?)
逆効果であったと悟り、余った大量の『ふりかけ』主に『おかか』のポテンシャルを発揮するメニューを考案すべく炭水化物を摂取する日々を経て、辿り着いた結論は…『カレー』と『ラーメン』であった。
「結局、モースト・オブ・庶民派じゃねぇか‼」
コトネの、ツッコミに返す言葉もないナミ。
「違う…和風カレーと魚介系ラーメン」
コトンッとコトネとナツコの前に置かれる『和風カレー』と『魚介系ラーメン』
「普通よね~、2つとも」
「そりゃそうだろ…大手メーカーのキャラクターふりかけが、出汁だからな…味も平均点に落ち着くってもんだ」
食べているコトネとナツコを尻目に、黙々と作業を進めるナミ。
「何してんだナミ?」
コトネがカウンターの向こうを覗くと、大きな画用紙に手書きで
『ランチ限定 和風セット 魚介系ラーメン+半カレー 990円』
とマジックでPOPを作成中のナミの姿。
「無駄にケツが丸みを帯びていやがる…腹たつわー、アイツの、あぁいうところ…」
「ポジティブよね~ナミは、反省とか挫折とか感じない性格なのよね~」
「血税の何%かは、この店の補助に回されているかと思うと、国民感情が理解できんのよアタシ」
コトネがカレーを食べながら嫌味を言う。
「カレーって、インドだかイギリスだか知らないけど~、凄いわよね~、受け入れるものよね~ビックリしちゃう」
ナツコは気に入っているようだ。
「そうだな、この包容力は、孫を見る祖父の心並みの深さと広さだよな、母には出せんわ」
「無条件に甘やかす無責任さを感じるわよね~」
「そうだよな、アタシ、ナミのことも、そういう視線で見れたらイラッとしないのかもしれんわ」
スクッと立ち上がり、スタスタと店の外に出るナミ。
手書きのPOPをセロハンテープで雑にドアに張り付けた。
「なっ、あぁいうとこなんだよ」
コトネがナミを指さしてナツコの顔を見る。
「未来予測が貧弱なのよね~ナミ」
「990円っていう、1000円切ってるけど、消費税入れたら暗算が面倒くせぇなってラインを設定する感じとか、なんか腹たつ‼」
「絶妙に損した気分にさせる支払いよね~」
「そうなんだよ、美味い不味いが残らねぇんだよ‼ 支払いとおつりしか残らねんぇんだよ‼」
「そうね~、税込み990円なら、あるいは?って感じよね~」
「大体、カフェでラーメンとカレー食う客いるかね? メイド喫茶以下だぞ」
「アハハ、冥途喫茶? アハハ、熟女が魔法かけてくる感じ?」
「ナツコ…熟女って…アタシ達、タメだけどな…笑えんわ」
「……そうね…」
なんか味はともかく、色々、落ち込んだ試食モニター2名には散々な言われようだが、できたPOPの完成度には満足しているナミであった。
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