第25話 ソースでなんとかするのが、フランス
三者三様のハンバーグ、それはなんか製作者の性格を表しているような出来栄えであった。
ナミのハンバーグは、見た目が整って、焼いても崩れなさそうな感じである。表面が硬いというか見た目がハードというか…なんというか。
コトネのハンバーグは、平べったい、おそらく水分が多すぎるのだ。下ごしらえが適当という感じ。
ナツコのハンバーグはすでに見た目がハンバーグに見えない。異次元の様相を醸し出している。迷いなく、ゴーイングマイウェイ‼
「いいのね…焼いて?」
一応、ナミがコトネと特にナツコに確認する。
「…何か問題でもあるのかナミ?」
コトネはすでに投入モーションに入っていた。
「や~ね~、焼かなきゃ、ただの生肉じゃない~」
何言ってんだコイツ?って感じの表情で返されて、驚きを隠しきれないナミ。
「ゾンビも避けて食わなそうなもん作り上げた奴らに言われたくないわよ‼」
「バカ、ナミ…ゾンビはフレッシュミートしか食わねぇんだよ、こんな死肉の加工品なんか見向きもしねぇんだって」
「悲鳴が最高の調味料って感じよね~」
「食ったほうが悲鳴をあげそうなもん作っておいて…もういい、焼けばいい…まずコトネからフライパンにINして」
「やらいでか‼」
数歩下がったナミ
焼けたフライパンにベチャンッと落ちるフレッシュミート、ビチビチ…パンッ‼
食欲が失せそうな音の後に水っぽい破裂音が幾度が響く、昼寝中の『ザルソバ』の耳が危機を感知して、物陰に身を潜めた。
そして店内に響くコトネの悲鳴。
「アヂッ‼ いやマジで‼ えっ? なに? 火薬入り?」
軽快な破裂音を奏でだしたハンバーグから離れるコトネ。
「見たことあるわ~、中国のお祭りで~」
「アタシのハンバーグは爆竹じゃねぇ‼」
熱した肉を四方に飛び散らせ、付着した肉は親の仇のように熱い。
「次‼ ナツコの地球外の物体X投入‼」
「ブラックマター入ります~‼」
「自覚があったのかよ…アイツ」
腕に軟膏を塗りながらコトネが呟いた。
ボトッ…ジジジジ…
首をかしげるナツコ
「何も起きねぇな…」
「油断しちゃダメ…プレデタークラスの襲撃備えて‼」
「アタシ達、刈られる側ってことか?」
「ナミ~、焼けてる気がしない~」
「ナツコ…蓋をして頂戴、なんか封印したほうがいいような気がしてきたわ」
「料理に封印って用語聞かねぇな」
「えっ? 蓋どこ?」
ナツコがフライパンから目を離した瞬間、『プレデターX』は牙を剥いた。創造主のナツコに反旗を翻す、それはフランケン博士を殴る人造人間のようであったという。
「悲しいモンスターだったな…」
「ハンバーグで泣けるとはね…これはホラーじゃない悲劇よ」
「食べられたような気がしたわよ~」
とりあえず自分の作ったハンバーグを食べながら、ナツコが焦げ付かないフライパンを買ってもらえるのはずいぶん先の話だなとナミは思ったのである。
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