チェリーパイって言っときゃ、アメリカンジョークは成立する。

第24話 素材を語れりゃ、なんとかなる

「一応…材料は揃ってるみたいね」

「あぁ…一応って言うか、まぁ…余計なモンがあり過ぎるというか…ハンバーグの他に何品作る気なんだオイ‼」

「や～ね～、思いつくまま買ってきたのよ～、美味しくなりそうなものを」

「混ぜりゃいいってもんじゃねぇんだ‼」

「料理は足し算なのよ～コトネ」

「テメェ様の料理は引き算じゃねぇか…薄味の精進料理みてぇなもんばっか、こさえやがってよ～‼」

「不思議よね～、足せば足すほど味が無くなるのよ～魔法みたいよね～アハハ」

　コトネとナツコがガチャガチャ言い合っている間、黙々と準備をするナミ。

　そう、大雑把なコトネ、凝り性だが結果に結びつかないナツコ、この2人に料理を強いるのだ…サルに自動車免許を取得させることのほうが容易いかもしれない。

「さぁやるわよ…バカ共…」

　静かなナミの一言で調理は開始された。

　そう、この場はナミのホームグラウンドなのだ。

「なんか～肉を混ぜるの…キモくない？」

「そうだな…色といい、手に伝わる感覚といい、気持ち悪りぃな…吐きそう」

「アンタ達、調理に向いてないんじゃない？」

「馬鹿だなナミ、向いてりゃナツコはココにいないぜ」

「コトネだって私と似たようなもんじゃないの～」

「ナツコ…オメェとは一緒にしてほしくねぇ、アタシのは一応、足しただけの味は残るぜ」

　無駄口と悪口が調理時間を遥かに超えて、焼く過程までには数時間を要したという…。

「疲れたわ…ハンバーグを作るのに、こんなに疲れたのは初めてだわ」

　ナミの顔に歳を超えた疲労の色が付け足されていた。

　そして…

「おいおい…そのカラフルなハンバーグはなんだ？」

「ん？ まぁ…いつもこんなもんよ～」

「ナツコ、オメェのハンバーグだけ、アメリカのグミ細工みてぇな、どギツイ出来栄えだな」

「ちょっと目を放すと、色んな物混ぜるのよ…ナツコは」

　ナミが遠い目をしてナツコのハンバーグを見つめている。

「だな…アレだけあった無駄な食材が見事に無くなっているものな…」

「そうね、ある意味…お亡くなりになっているのかもね」

「あぁ…ハンバーグっていうか…半バクだな、ありゃ」

「散々な言われようね～、焼けば驚きの出来だと自負しているのよ～」

　酷評を受け止めないナツコ。

　タフハートな女である。

「焼きましょうよ～」

　やたらとテンションの高いナツコ、そして毒を持っていそうなハンバーグ。

　ナミは思った。

(なんで一番、ダメそうな奴が一番テンション高いんだろう？)

　フライパンが熱されていく…

「コレ、焦げ付かないフライパンだ～、いいな～私も欲しいな～」

「ナツコ…一丁前の料理ができるようになったら買ってもらえよ…旦那も喜んで買ってくれるだろうぜ」

「ホント？ じゃあ、もう買ってもらえたも同然ね～」

(なんで、この女は、これほど、自信をもっているのか？)

　横目でナツコを見るナミの目は冷ややかである。