第22話 ブロッコリーは舌ざわりで損してる
「さ~て、先生、まずは、何から教わればいいいのかしら~」
ニッコニコで真新しいエプロンのリボンを締めるナツコ。
「まずは…お金の話をしましょう、ねっ‼ おねがい‼」
「これをキッカケに料理教室でも開けばいいじゃない~、アッという間に回収できるわよ~、私が料理を作れるようになれば~、それは凄い実績じゃな~い、生徒なんて幼稚園の連中を参加させるわよ~……半ば強制的に~フフフ」
モッサリとした口調で、バッサリしたことをサラッと言い放つナツコ。
(さすが幼稚園ママ友のボス感…)
まぁ、案外、料理教室はいいかもしれないと前向きに検討を進めようと思うナミ。
「料理教室はともかく…まずは定番料理から作れるようにならないとね」
「定番ね~、なにをもって定番というやら…定義が難しいわよね~」
「定義とかいらないわ‼ オムライス一択よ‼」
ナミの、ど真ん中は『オムライス』であるらしい。
「そうなの?」
「そうよ‼ 昨日の残ったご飯、使いかけのケチャップ、安っすい鶏肉、いつでもある卵、これだけでイケるわ」
「そういう感じなの~」
「そうよ‼ 多少失敗しても、もえもえキューンでおいしくなーれ♡の呪文でカバーできるんだもの♡」
キュンッとポーズをとるナミ。
「三十路はイタいわ~ナミ…ベテランのメイドとかイタいわ~」
メンタルに軽いショックを伴い現実に引き戻されたナミ。
軽く咳払いして無言で卵を割り出した。
「さっ、フライパンでチキンライスを作ってナツコ」
「私ね~卵割りには自信があるのよ~」
「重要なのは味よ、アナタの場合、食べられるギリギリのラインまで特徴を消し去るんだから、まずは消さないようにすることよナツコ」
「足したはずなのに~、減るものってな~んだ?」
「アンタの料理よナツコ」
「ブ~‼ ナミの預金よ~」
「大きなお世話よ‼」
ナミの隣でオムライスを作ってみたナツコ。
「いつも思うのよ、見た目は抜群のなのよ」
そうナツコの料理は、すぐ解散するビジュアル系である。
見た目はいいのに中身がない。
メジャーの壁は高いのだ。
そんなわけで、いざ実食…
「不思議ね~味がするわ~ケチャップ味」
「何が違ったのかしらね、今まで…」
そう可もなく不可もなく点数をつければ70点のオムライスであった。
「じゃあね~ナミ~、また来るわ~」
その夜、カオウからナミへ電話があった。
「ナミばぁ…ありがとな…オムライス、ケチャップだったぜ」
カオウ、涙声であったという…
「感謝はされたわけね…」
後は、お時給の問題だけだ。
頑張れナミ、いつか回収するために、今はナツコの料理を向上させるのだ。
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