第17話 タマゴ+肉料理=神

「じゃあねナミ~、私たち、子供を送って、そのまま帰るから~」

「いや~、お世話になりました」

 旦那が迎えに来て園児は帰っていった。


「ヘトヘトよ…」

 机に倒れるナミ、子供に構われザルソバもグッタリしている。

「もはや天災の跡みてぇだな…おい」

 コトネが荒れ果てたカフェを見回して呟く。

 あの小さな体の何処にこれだけのエネルギーを蓄えているのか?

 喰って飲んで騒いで…もはやコトネの量産型。

 カウンターでグッタリとしているコトネ、さすがに疲れたようだ。

(量産型とはいえ、数で攻めてくるとオリジナルを凌ぐのね)

 ナミはナツコの苦労が少しだけ解ったような気がした。

「愛がなきゃ無理だわ」


 結婚とかしなくて良かった…負け惜しみかもしれないが、今は素直にそう言える。

 自分には子育てとか無理そうだと。


 翌朝…

「おはよ~ナミ~片付けだけ手伝いに来たわよ~」

 ナツコが早朝から顔を出した。

 当然のように泊まっていたコトネが出迎える。

「うぃっす、はよっす」

「泊ったの?コトネ」

「うん…もはやアパートまで歩く気にならんかったわ」

「ナミは?」

「奥で寝てる…ザルソバも」

 ナミの腹の上で丸なって眠るザルソバ、薄目を開けてナツコを見ている。

「ザル~、昨日はゴメンね~うるさくて~」

「ミャッ」

 小さく鳴いて尻尾でナミの顔を叩いてナミを起こすザルソバ。


 ナミは夢の中にいた…。

(ビキニを超えてるわ)

 寂びれた田舎の海岸、曇り空、狭い砂浜にチラホラとパラソルが並ぶ、一際派手なパラソルの下でコトネが水着に着替えている。

 ビキニを超えたビキニだった。

「コトネ、そんな水着‼ 隠す気がまるでないじゃない‼」

 防波堤の上からコトネに向かって叫ぶナミ。

「人の事言えるの~ナミ?」

 後ろからワンピースのナツコが声を掛けてきた。

「なにが?」

「アンタこそ、ソレ隠したら~」

 ナツコがナミの股間を指さす。

 コトネのビキニをさらに上回るビキニを着ていたナミ、その股間からニョキッと見知らぬ顔が生えている。

「やぁ、僕の名前は……」

「ぎゃぁぁぁー」

 そこで目を覚ましたナミ。

 バシッ‼

「うっせぇわ‼」

 コトネが、おしぼりを投げつけてきた。

 ザルソバはナミの寝起きの絶叫に驚いてカラーボックスの上に避難している。

「ハッ‼」

 慌てて自分の股間に手を伸ばすナミ。

(大丈夫…生えてない…)

「朝から股に手ぇ突っ込んでねぇで片付けするぞ、オマエの店なんだからな」

 コトネがバケツを差し出す。

「ナミ~やっぱ欲求不満なの?」


「違います‼」

 高校生の頃のジャージに着替えてカラーボックスを外に運び出すナミ。

「男手が欲しい…」

「男の手が恋しい?」

「ナミ~やっぱ欲求不満じゃない」

「違うっての‼」

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