レッツ・パーティ

第16話 カシューナッツを超える豆はない

 カフェ『兎彩』

 本日貸し切りである。

 ある意味、いつでも誰でも貸し切り状態みたいなものだが。

 ガタガタ積まれたカラーボックスの中で丸まるザルソバがアクビする。

 猫にとっては、このゴチャゴチャ感は嫌いではない環境であるらしい。

 目が痛いほどの、やっすいカラーの渦、落ち着かないチープな装飾の真ん中でナミは思った。

(誰が片付けるんだろう?)と…。


「ナミばぁー‼ 俺、来たよー‼」

 ナツコに連れられて、カオウと、仲間の園児がゾロゾロと入って来る。

「おいおい、狭ぇ店にワサワサと入ってきたじゃねぇか、えっナミ」

 コトネが意外な参加園児の多さに驚いている。

「そうなのよ~、この子意外に友達多いのよ~」

「親が意外とって…我が子をどうお考えなのかしら?」

 ナミはナツコを横目で見ながら聞いてみた。

「う~ん…ほら、あの子、なんというか自由の幅が広いじゃない? アレで人と上手くやっていけるのかな~とか思う時があるのよ~」

 心配そうにカオウを見ているナツコ。

「そうね、自由人まっしぐらモードよね」

 ナミが深く頷く。

 酎ハイをプシュッと開けたコトネは、その会話を聞きながら思ったのである。

(それは、ワタシ達のせいである)と…。


 そんな保護者達の心配と後悔を他所にカオウは絶好調である。

 幼児のテンションの感染率は非情に高い、アッ?という間に『兎彩』はカフェから託児所へ様相を変え、今や世紀末である。


 ウォーターガンで撃ち合いが始まった、野菜率高めのオードブルは好評だった。

「ナミ、野菜スティックのディップソース美味いわコレ」

 コトネの飲酒ペースを速めた。

 ビニールの日本刀で斬り合いが始まった、何色にも彩られた小さなケーキバイキングも好評だった。

「あら~ナミ、可愛いケーキね~、顔に似合わず細かい作業好きよね~ナミって」

 ほとんどナツコが食べた。

「アンタ達に出してんじゃないのよ‼」

「いや~そうは言っても、ガキ共は遊ぶ方が忙しいみたいだしよ」

「そうよ~ケーキ乾いたら大変よ~、バースデーケーキがメインだから大丈夫よ~」

「……そのバースデーケーキよ」

 ドンッとテーブルにケーキを置くナミ。

「うぉっ、すげぇ」

 カオウが派手にデカいケーキに驚く。

 園児の注目がケーキに注がれる。

 まるで金属のような光沢ある紫のケーキ。

「きれいー‼」

 大人気である。

「ナミ…コレ食えるのか?」

 コトネがナミに尋ねる。

「ふふふ…食べれないケーキなどつくらないわよ」

「センスはともかく~器用よね~ナミは」

「センスも爆発してるわよ‼」


 色々あったが、紫の光沢あるケーキを囲んで

「ハッピーバースデー‼ カオウ‼」


 とりあえずは、無事、誕生会は終了したのであった。

(疲れたわよ…)




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