第15話 果物には王族、貴族が多すぎる

 カオウ誕生日前日の夜。

「ナミ~調子はどうかしら~」

 ナツコとカオウが店のドアを開けて入ってきた。

「……御覧の通りよ」

「すげぇ…意味なく派手だぜナミばぁ」

 カオウは唖然としている。

「うん…入ってきた瞬間に解ったけど~何に影響されたのかしら?」

「うん…コトネに聞いて、費用の件もね」

 ナミの背後に明王が召喚されそうなほどのオーラが、どんよりと立ち込めている。

(今のナミばぁに勝てる気がしねぇ…)

 空気を読めるタイプのカオウは全てを察している。

 コトネが、やり過ぎちゃったのである。

「事前視察かカオウ」

 そして空気を読まない女コトネがシレッと入って来る。

 ピリッとしたナミの冷たい空気が店内を支配する。

(おおぅ…氷系か…ナミばぁ)

「いやぁー、ちょっと足しとこうかと思ってさ、また買ってきたわ、後、アパートから不要な物も持ってきた」

「廃品回収してんじゃないんだけど‼ この店をゴミ屋敷にしないでくれる‼」

「まぁ~、随分3段カラーボックスが沢山になったわね~」

「そうなのよ、コトネがやたらと運び込むのよ‼」

「ナミ、カラーボックスは便利なんだぜ、重ねて使えるしな、いくつあっても邪魔にならねぇ」

「コトネ…邪魔じゃないなら持って帰ってくんない、マジで…豊富な色と柄が目障りなのよ」

「ソコは、オマエ気分で組み替えりゃいいじゃねぇか、それこそカラーボックスの醍醐味ってもんだぜ」

「そうね~立ててよし、寝かしてよし、使い方は無限よね~」

「じゃあ、持って行ってよナツコ」

「でも、いらないわ~、なんか邪魔になりそうだから~」

「ほら見なさいよ、結局、邪魔になるのよ‼」

「いいじゃねぇか、カオウの誕生会が終ったら、粗大ごみに出せばよ」

「結局、ゴミ持ってきたんじゃないの‼」

 カフェ『兎彩』は小学生がノリノリで教室をパーティ仕様にしてしまった感が不必要に溢れ出ている。

「……子供は喜ぶか」

 ナミは渋々納得して(もはや諦めて)いた。


「で~ナミ~、ケーキとか料理は大丈夫なの~」

「誰に聞いてるわけ? もしかして私にかしら?」

「…オマエでないとすれば逆に誰なんだ?」

「ふふふ…無問題‼」

「なに? もぅ満杯? なにが? 試食で?」

「栄養のバランスを考慮に入れて、野菜から揚げ物まで和洋折衷、準備は万端‼」

 薄い胸をバンッと張るナミ。

「カロリーフレンドみてぇな感じ?」

「まぁ? ナミ、皿にカロリーフレンド各種を並べる気?」

「並べねぇわよ…さすがにね…ふふふ明日をお楽しみあれ」

「あれって…言ってるぞナツコ」

「ナミ~、カラーボックスにカロリーフレンドを詰め込んで、召し上がれとかなしよ~」

(フッ…誕生日だってのにゾクゾクするぜ…)

 ほくそ笑むナミの横顔に悪寒が走るカオウであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る