第14話 食えると美味いは=にならないのが野草

「悩むわ…」

「ナーゴ」

 カフェ兎彩、キッチンで悩むナミ。

 ソレを退屈そうに眺めている看板猫ザルソバ。

 悩んでいるのはカオウの誕生会、その準備である。

「よしナミ‼ 飾りつけはまかせておけ‼」

 コトネのセンスに任せることにしたナミ、けっして面倒くさかったわけではない。

 ただ…やりたくねぇな…そう思ってしまったところにホロ酔っ払いが、ほざいたので乗っかっただけだ。

「カオウは、甥っ子みてぇなもんだしな」

 ホロ酔っ払いコトネさん、呑むと色々な面の許容範囲が大幅に拡大する性格なのだ。

(姉御肌なのかもしれない…)


 そしてメニューに専念することができるようになったナミ。

 絶賛、迷宮入りなのである。

 牛肉がミノタウロスに見えちゃうくらいラビリンス入りしているのだ。

「そもそも、あの子ホットケーキ以外の好物あるのかしら?」

 味覚のステータスの伸びが悪いカオウ(家庭の事情)が喜ぶ料理のイメージが湧かないナミ。

 ホットケーキにクリームソーダ飲ませときゃ大人しいカオウ、家では豆腐並に特徴のない料理しか食べてないカオウ。

(あのガキ…味覚なんてあるのかしら?)


 同時刻…

「ママ…コレ?」

「あらっ? 麻婆豆腐よソレ」

「……ママ、噂ではピリッと辛いらしいよソレ」

「あらっ、よく知ってるわね」」

 一口レンゲですくって食べてみたカオウ、顔から表情が消えていく…まるで何かを悟った仏のような顔である。

「ママ…このネバドロッとした鼻水みたいなのが辛いらしいんだよ」

「う~ん、何をどうしたら辛くなるのかしら? 今度ナミに聞いてみるわ、早く食べちゃいなさい冷めるわよ」

(熱いだけの湯豆腐と、ひき肉…コレがウチの麻婆豆腐か…)

 昼食で麻婆豆腐にしか見えない湯豆腐を釈迦のような顔で食べるカオウであった。

(ナミばぁ…料理だけは美味いんだよな~)

 一応、味覚は破壊されていないようである、がしかし、心はすでに粉微塵、諦めの果てに悟りを開いている保育園児カオウ。


 刻んだシイタケをヨーグルトに混ぜて、ほくそ笑んでいるナミ。

(コレをベースに…)

 子供が嫌いそうな素材を並べて楽しそうに、ヘルシーなだけのナニカを作っている。


「チッス~おいっす~」

 コトネがシレッと入って来る。

「うっせ、邪魔すんな」

「邪魔しに来てねぇよ、飾りつけを買ってきたんよー」

 マイバック5袋からガサガサと色々なものを乱雑に取り出しては店の机にテキトーに並べていくコトネ。

「いや~買ったわ~、買ってるうちに楽しくなっちゃってさ~小学生以来じゃない? お誕生日会のノリ」

「アンタ…予算3万なのよ…」

「……やべっ…3万超えたわ…わりぃ…」


 早くも赤字が決定した。

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