第8話 食に歴史が無い…それがアメリカ

「はっ? 何費用? いや聞いたことないですね」

「バリカタ? とんこつですか? あぁ~借り方ね…で? なにが?」

 配属初日から言葉のラビンリスで迷走している、経理課へ配属された『山村 コトネ』その人である。

 なぜ自分が経理課とか?

 配属初日から歯車の噛み合わなさにストレスを感じていた。

 資格と言えば運転免許と野菜ソムリエくらいしか持っていない簿記とか??? そんな私がなぜ経理課?

 ナミ曰く

「コトネは営業とか無理でしょ、喧嘩になりそう、人事部も諸々検討して…消去法で配属が決まったんじゃない」

「ナミ、私が人事部なら、そんな人材、最初から採用しないわよ」

「アハハ、コトネ、自分で不採用って~自分ってもんを理解できてるのよね~凄いわ~」

「ナツコ…もっさりした口調でディスらないで、なんかダメージもスローでくるから、ゆっくり刺されてる気分になるから」


 そんなわけで、コトネの前途は多難であった。

 マイナススタートなエブリディである。

「スタートラインが遠い…見えない…」

 机にゴンッと額を打ち付けひれ伏したコトネ。

 昼食はかつ丼大盛である。

「まぁ、新入社員なんてそんなもんよ~」

「ざまねぇ、ヤニカス」

 社員食堂で昼食中の3人である。

 特に落ち込んでも食欲には影響を出さないコトネである。

「ナミ…そのパンプスいい色ね」

 コトネがニコッと笑ってナミの足元を指さす。

「そう? 私センスいい?」

「センスは解らないけど~似合ってるわ~」

「そう?」

「いいわね、自分で確認出来て…」

 コトネの目が鋭くなる、獲物を補足した猛禽類のように。

「どういうこと?」

 ナミがコトネに聞き返す。

「私は、胸が邪魔して…もう、つま先なんて簡単に見れないから、似合ってるかどうか…確認が難しくて、知ってる靴屋の鏡って、だからあるのよ、私みたいな人用にね、ナミには無縁の鏡でしょうけど」

 ニヤッと勝ち誇ったようにコトネが笑う。

(なんて嫌な女だろう…人のコンプレックスを長文で晒す様に…)

 なんとなく足元を見るナミ、つま先どころか、足首まで丸見えであった。

(更地のようだわ…ロードローラーが、いい仕事したみたいな感じ)

「ナミ~気にしなくていいじゃない~服も脱ぎやすそうだし~」

 ブホッ‼

 コトネがかつ丼を噴き出す。

 脳裏にアンコウが皮を剥がされた姿が浮かんだナミであった。


 そんなわけでコトネも職場脱出を目的に、つまらん男と結婚退職するのである。

「新婚旅行がピークだったわ…マジで」

 数か月でスピード離婚を、ぶちかますのである。


 現在はアパート暮らしで、OL兼、週二でスナックでアルバイトをしている。

「気まぐれ出勤で丁度いい価値観を醸し出してるのよ」


 昼食のストレスをバイト先で発散してる女なのである。

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