第7話 自己主張の強いキノコ、それはシイタケ

 総務部

 暇な時は、とことん暇である。

 だが、忙しいときはアホほど忙しい。

 マイペースな私には不向きであったと…ナツコ本人談である。

「私、顔全体が笑ったような作りじゃない、なんか甘く見られるのよ~」

 ナツコは目が細く、口角が上がっているような顔で、ニコニコしているように見える、そのため、よく痴漢にあったし、会社では先輩にも甘く見られがちで、雑用を押し付けられていた。

 最初は、そんなもんかと「はい、はい」と従っていたわけだが…1年もすると、どうも自分だけが働かされているような気がしてきた。

 ナツコは短気ではない。

 ただ、言葉選びに配慮が足りない…というかないだけ。

「先輩方は、会社に何をしに来られてるのでしょうか?」

 悪気はない…こともない。

 この一言で完全に総務部で孤立してしまった。

 それはそれで問題無かったのだが、急に仕事を干され、完全に暇を持て余していた。

 総務部長は完全に窓際であった、他部署で面倒くさい女性社員の辿り着く先、溜まり場と化していた総務部、そこに最初から配属となった、まさに、この会社では、マイナススタートだったわけだ。

 そんなナツコが、シレッと結婚を決めたのは入社して4年目の春、各課の配属された新人に部署を案内しているときに出会った営業課の係長、群れからはぐれた、協調性の無い新人だと思って若干キレ気味に新人の群れに押し込んで、そのまま半日、会社案内したことがキッカケであった。

「逆らい難い雰囲気があったんだよね…」

 現在の旦那である。

 ホイッスルを吹きながら数十人の新人を引き連れて社内を練り歩くナツコ、3年目ですでに、お局を押しのけ総務のクィーンとして君臨していた。

 列を乱す新人にピーッ‼

 私語をする新人にピーッ‼

 3年間で逞しく成長していたナツコであったが、途中で他部署の係長だと知ったときには、さすがに落ち込んだという…。

「行ってくれれば良かったのに~、ノコノコ付いてくるから~、中途採用の人が混ざってるなくらいに思ってたのよ~」


 結婚式に呼ばれたナミとコトネ、2人でハイペースでシャンパンを飲み続け、泥酔状態で歌い、記念撮影のときには、吐く直前の顔色だったのはいい思い出としてデジタルデータとして色褪せることない思い出となっている。


 ナツコは3年間でOLから主婦へジョブチェンジした。

 現在は幼稚園を仕切ることを目論んでいるとのことである。


『笑顔の仕切り屋』それが星ナツコという女である。


「圧の強い仏像のようだわ」コトネ談

「いや…ピンクの戦車みたいな女よ」ナミ談



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