第4話 シーフードは頭足類と甲殻類で充分

「ムググググ…」

 ナツコの腕から逃れようと足掻く『ザルソバ』

「ナミ…股に顔が生えたからって人生を諦めちゃダメよ」

「コトネは2度目があるなんて信じちゃダメよ、アレは奇跡だったのよ」

「奇跡じゃないわ、幻だったのイリュージョン」

「バカ乳が引き寄せた最初で最後のミラクルだったのよ、その乳が引き寄せるのは痴漢だけだから、バツイチバカ乳だから」

「言い過ぎよ~ナミ、コトネの唯一の取柄なんだから~」

「唯一じゃねぇわよ‼ 顔だって並より上だわ‼」

「えっ? 私より上? それはないでしょ、私、客観的に見て美人だよ、コトネより遥か高みに位置しているわよ」

「そうね、身長は高いわよね~……それが、また男を遠ざけるのよね~」

『ザルソバ』に手を引っ掻かれてプラプラと手を振りながら席に戻ったナツコ、戻るなりナミを無意識にディスる。

「そうね、高身長の底辺そして股に顔だからね」

「なに? ソレ、図3の面積を求めよ的な悪口なんだけど」

「杜撰はアナタよナミ~」

「そうよ、股に顔生やすようなズボラな女なのよアンタは」

「私を杜撰からズボラに勝手にシフトチェンジしないで、ローからバックみたいなチェンジだから、牛歩からバック走だから」


『ザルソバ』がアクビをしてカウンターで丸くなる頃まで、何一つ意義のある単語が拾い出せないまま15時を回っていた。

『ザルソバ』昼寝の時間である。


 ナツコのスマホがピロリン♪と鳴る。

「あっ、幼稚園に行かなきゃ~、ナミ、またね、暇で暇でしょうがない時に寄るわ」

「選択肢としてケツの方なのね、私の店は…」

「あぁ、オーナーが貧相なケツの持ち主だけにな」

「あらぁ、コトネ、ナミはスレンダーなだけよ、貧相ではないわ…貧しい民、貧困層ではあるけどね」

「それ以上、エグッてやるなよ、コイツの貧困は浪費癖のせいなんだから、自己管理が出来てりゃ、普通に暮らせるんだよ」

「アンタも帰れば? コトネ 私の柔いハートは、もうズタズタよ コレ再生させるのに、幾らかかるか見当もつかないわ…すでに今日だけで6万超えたわ…ネットショッピング…自分でビックリ」

「ナミ~…私、帰るけど…一度、病院に相談してみたら? 買い物依存よソレ」

「また医者に行くの? アンタ、医者狙い?」

「狙ってない、狙うは10臆、宝くじのみ」

「アタシは、もうちょっといるわ、ワイン飲むの…アソコのヤツ」

 コトネがビシッと指さしたワイン

 ちょっとした貴腐ワインである。

「アレ違うから、飾りだから‼」

 ナミが慌てる、ナツコが棚からワインを手に取る、コトネの手に渡される。

「じゃあね、ナミ また来るわ」

「うん、またね…って開けてんの?」

「うん、開けてるの」


 コトネが手の代わりに貴腐ワインの瓶を振ってナツコは帰った。

 独身2名の夜の部である。


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