第5話 小骨が無ければ魚も食える
「魚肉ソーセージが魚だとは思わなった」
「ナミ…魚肉って書いてあるじゃない」
「うん、でも…魚感が無いじゃない?」
「魚嫌いも食べれる貴重な存在よね」
「結局、磨り潰して再構築したら大概のものは食べれるのよ私だって」
「アンタ、偏食だもんね」
そう、ナミは好き嫌いが激しい。
どちらかと言えば食べれない、もしくは食べないものが多いのだ。
なぜ、そんな彼女がカフェなど開くことになったのか?
「どうも会社務めには向いていない…さりとて、自立できる資格もない、レンチンでトッピングして出すだけなら出来るかも?」
そんな程度の理由で開店させたのだ。
「良かったわね、銀行が金貸してくれて」
「うん、でも今、利息を課してくる…それが銀行なの」
「そうね、ヤクザがやってるか、サラリーマンがやってるか、金貸しって、その程度の差よね」
「そう、後は利息の差…敷居がね低いと奥がラビリンスなの」
「そうね入らないと解らないものよ、迷って初めてラビリンスだからね」
「もう、抜け出せる気がしない迷宮物語のヒロインなの」
「三十路でヒロイン気取るなよ、そのラビンリンスでアンタに寄って来るのはミノタウロスだけだから、半分牛肉だから」
コトネが貴腐ワインをラッパ飲みする。
「グハッ…甘…クソ甘え」
「コトネ、それ貴腐ワインだから、麗しく腐ったワインだから」
「麗しく? 腐った? アンタみたいなワインだね」
「私、腐って無いから、まだ賞味期限バリバリだから」
「そうね、なんか一口飲めばいいやって感じがね」
「違うから、そのワイン高いから、価値ある腐った酒だから」
「よく解らんけど、違う酒頂戴、もう焼酎とかでいいから安っすいの…あの4リットルのやつ」
カランコロン♪
店のドアが開く
「あっ、まだ居た~」
再びナツコが入ってきた。
コンビニの袋を買ってきたよ~とばかりにブラブラさせる。
「ナツコ子供は?」
ナミがグラスを出しながら尋ねた。
「旦那が見てるから大丈夫~」
ナツコの家は、ナミの店から徒歩15分くらい。
ナツコが一人で来るときは金は払わない、旦那が一緒だと、ちゃんと金を払う。
(一人で来たということは…今日の売り上げ0円確定)
ナミが奥からデッカイ焼酎を持ってくる。
『ザルソバ』がツマミを狙って、3人の周りをウロウロしている。
カマボコ大好き。
「とりあえず、ナミの退院を祝って、かんぱ~い‼」
高いグラスに安い焼酎を注いで、コンビニのツマミを食べる。
そんな腐りかけの女が3人、腐れ縁を辿れば遠き日を思い出す。
あの時は、こうなるとは思わなかった…。
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