第2話 ピーマンは食えないがパプリカなら、あるいは?

「で? 人面瘡は取れたの?」

「人面瘡じゃないから…特に話しかけたりしなかったし、痛くも無かったけど、見た目がグロい巨大な出来物ってだけだから」

「そうね、ナミの股間に人面瘡も生えたくないわよね」

「股間じゃないから、内ももだから、何度言えば理解できるの? 乳に栄養行き過ぎてブレイン干からびてんじゃない?」

「干からびてんのは、アンタの股間よナミ」

「バカ乳だけが自慢のナツコには解らないのね、選んでるだけだから、選ばれし勇者だけがアタシを満たすことができるだけだから」

「3番目だったくせに」

「3番目じゃないから、限りなく2番に近い3番だっただけだから」

「3番で満たされてたのねナミ…可哀想」

「可愛そうじゃないから、別れてくれてやったから、悔しくないから、むしろ憑き物が取れて気分上々だから」

「取れたのは憑き物じゃないわ、人面瘡よ 喋らなかったのは無口なだけだったんじゃない?」


「遅れてごめ~ん、子供を幼稚園に送ってきたからナミ~退院おめでとう」

 ナミが経営するカフェで『佐藤ナミ』30歳、望まないバースデイと退院祝いを兼ねて集まった、数少ないナミの友人『山村コトネ』バツイチ、少々時間にルーズな既婚者『星ナツコ』

 かつては同じ会社の同僚であったが、それぞれの事情で別々の道を歩んでいる3人の三十路。

 月に1、2度このカフェで集まって溜まった愚痴を吐き出している。

 カフェ『兎彩うさぎいろ』彼女達は吐き出す場所『トイレ』と呼んでいる、コロナ化とは無関係にソーシャルディスタンスが保たれている、落ち着く空間である。


「ナミ~、良かったじゃない、退院できたし給付金バブルなんじゃない?」

「そうよ、アンタ、この店みたいな小さな個人経営はウハウハだって言うじゃない、税金の無駄使いよね~、納税者として遺憾の意を表明しとくわ」

「そうね、ウハウハ過ぎて、借金が増えたわ」

「バカなの? なんで?」

 ナツコは勝手にカウンターで紅茶を淹れている。

「イギリスからティーセットを取り寄せたのよ、もろもろ言われるがままに一式ね」

「あ~コレ~」

 ナツコがカウンターに飾られた高級そうなティーポットから紅茶を注いでいる。

「ナツコ‼なんでアンタは私が使う前にシレッと使用しているのよ‼」

「なんか、お高そうだったから」

「お高いのよ‼ なんかすでに中古品の感覚になったんですけど‼ 使用済み感でたんですけど‼」

「使用済みで価値を高める商法って考え方もあるわ」

「ティーバックじゃないのよ‼ ティーポットなのよ‼」

「アハハ、ナミの使用済みティーバックとかウケる~」

「ソッチに方向転換すればナミ」


(前向きに検討すべき課題なのかもしれない…)

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