どうしたって教祖様!
@ponchacha
第1話 こんな時代にお見合いするのかワシャ
27は別に今どき結婚を考えるような年でもないだろ。と私はずっと思ってる。結婚したいですか?と聞かれれば別に……いい縁があったら……それはそれで……って感じだし。
でもなんでか知らんけれど、世の中の27歳は男女問わず割と結婚をしていきだすらしい。これはデータとかあるうえで言ってるわけじゃない。あくまで私の肌感覚的な情報だ。つまり同期が結婚したとか、同じ中学に通ってた高田君が結婚したらしいとか、そういうことだというわけです。
というか、なんでここまで結婚の話を永遠にしているかというと、私今日お見合いをするんですよね。お見合い……?お見合いをします。経緯を追って話すと、まあめちゃくちゃ簡単で地元の友達の結婚話をきいて若干焦った私(さっきと言ってることちゃうやんって思うじゃん。でも人の心って難しいねんよ。だって聞いた直後は確かに焦る気持ちあったけど、今現在はないもんな。わろてまうでほんま)が、大家さんに「いい人いないですかね~」っつたらあれよあれよと事が進んで普通にお見合いの日取りが決まってたということなんですわ。
でもね、そうよね。普通に断れるでしょ、焦る気持ち消えた後なら。と思うよね。でもね、聞いてほしい。お見合い写真の人がね、結構良かったんだよ。結構……結構ハンサムだったってわけ。一度顔見るくらいええか……どうせお断りされるし……と思ったわけです。ガハハ!!!!
お見合いか~……お見合いね。正直なことを言うと生まれてから今まで人と付き合うとか親密になるというイベントをこなしてこなかったので、遥かなる死みたいなことは正直感じてたから、今回を機に結婚もまあ悪くないかな、とか思ってるんだけど断られる確率は99%だってデータが言ってるんだよね。本当に容姿も性格も終わりを迎えてるから、人と付き合える気がしないんだよね。
でも2.5次元舞台もみたいけど見れないこんな自粛の世の中だったら一瞬だけでもハンサメン(ハンサム男性のこと、なお、ハンサム女性はハンサウーメンと呼ぶ)をこの目に入れることを許してほしいもんな~。という気持ちでお見合いに行くわけです。飯は……うまいやろ。なんか浅草のでかいアパートの上にあるところらしいし、デパートの飯は全部おいしいって相場が決まってんだ……。
というわけで(どういうわけ?)お見合いの会場に向かっているわけなのだが、浅草なんて都内に勤めていても観光とかするわけでもなし行くことも少ないので若干緊張してます。浅草ってさ、交通の便若干悪いよね。スカイツリーも微妙に悪いよね?浅草に山手線乗り入れてくれないかな?と思ってる。なんでかっていうと、駅の真上にあるって言われてたお見合い会場のデパートが駅の上になかったんで……。
?????
どうしてなんですか?大家さん言ってたが??
「秋穂さん、浅草駅まで来てくださったらすぐよ。松屋は駅直結だから。地下鉄で来ても地上に出ればすぐ見えますよ」
って言ってたが??地下鉄どころか地上鉄道に乗ってきたのに、デパート君消えているのですが?
「ええ……?ここは……?」
かれこれ5分は胡乱な顔でうろついている。ちなみに地図アプリとかは読むことが不可能であるため最初から自分の中では候補から外れている。神よ許してよ、せめて浅草駅じゃなくって浅草橋駅とかについちゃってたとかそういう落ちをつけてくれよ。
「お客様、どちらかお探しだったりされますか?」
見かねたっぽい駅員さんが話しかけてくれた。見た感じ新卒くらいの年齢なのに、偉いな。やっぱり接客してる人はみんな優しい部分がどこかしらあるということである。そう思いたいよね。
「アッ、えっと、松屋に行きたいんですけど……どこから行けば」
「松屋ですね。こちらはつくばエクスプレスの浅草駅になりますので、出口を出て東武さん方面にいっていただければ大丈夫ですよ」
「ト、トウブサン方面ですか?」
「えっと、そうですよね。少々お待ちください、今マップお持ちしますよ」
「マップ!あ、!マップ!」
「えっと、マップ、あの、地図!地図です!」
「あ、地図、地図は分かるんですけど、わかんないっていうか」
駅員さんの優しさがあらぬ方面に行きかけてわちゃわちゃしていると、もう一人バージョン違いっぽい駅員さんが出てきて旧駅員さんに声をかけてきた。なんかトラブってるように見えたんだろうなぁ。まあ実際お見合いの時間すっ飛ばして遅れてるのでトラブルは起き続けているのですが……。
「筑波、そちらの方東武行きたいって?」
「あ、東さん。そっすね。松屋に用事あるそうで……」
「じゃ、ついでだし俺送っていくわ。筑波は戻れよ」
「いいですか。お願いします」
どうやらツクバクンは先輩のアズマサンに私を託すことによって仕事を終えたようである。ツクバクン、君は偉いよ。誇っていいから……。
「お客様、松屋までご案内しますね」
アズマサンは私と同じくらいの年齢に見える。同じくらいなのに後輩にちゃんと頼られててすげえんだわ。世の中いいやつが多すぎて涙出るね。
「このあたりには昔、瓢箪池っていう池があってね結構景観も綺麗で人気があったんですよ。今はWINSにでもなっちったかな……」
「あの辺はね、坂口安吾って知ってますか。あの人が良く飲みに来てたんですよ。そう、堕落論の人ね」
アズマサン、駅員さんのはずなのに観光案内はとバス並みにしてくれてすごいんだわ。普通そんなこと出てくるか?って知識がズバズバ出てきて5分くらいの間にかなりいろんな情報をGETした感じある。
「もしかして駅員さん地の方ですか?」
「おれ、あ、私ですか?いや全然、生まれは千住……足立なので」
一瞬俺って言いかけたな。というか説明しまくってるときは余裕で素っぽい口調だったけどそれ気づいてないのか?だいぶ誤魔化してるっぽいけど、かなり元は荒い口調でしゃべる空気感ある。帽子から少しこぼれてる髪もよく見るとパーマかけてるっぽいし、遊び人(あそびんちゅ)なのかもしれない。
「へ~。すごい詳しいんでここら辺で育ったのかと思いました」
「あはは、まあ長いこと勤めてはいますから」
「ほ~……」
長いことってったって、そんなに詳しくなるものだろうか?まじでおじいちゃんの代からここにいましたよ!的な情報もいくつかあったので、遊び人としての交友関係がアズマサンをここまで育て上げたのかもしれないな、とか思う。
「見えましたよ、松屋」
通りを抜けてアサヒビールの金色の雲が橋の向こうに見えるその大きな川のそばに巨大なデパートがそびえていた。いや、よく見たら駅舎だ。駅とデパートがドッキングしてる。あんまりにも大きいんで、よく私これを無視して違う駅についてたなと驚いた。立派だ。大きな電子広告には、着物を着た女の子が紅葉した街並みを歩いていると思ったら、もくもくと煙を上げて走る汽車が通っていく、不思議な映像が流れている。
「お客さん、あれ松屋です。じゃあ、私は仕事に戻ります。次はぜひ東武鉄道をご利用くださいね」
アズマサンはニパっと八重歯を見せつつ私に笑いかけると、軽く頭を下げると駅に入っていく。どうやらツクバクンとアズマサンはバージョン違いの服を着ているのではなくそもそも他社の人間だったらしい。とんだ罠じゃん……いや、ラッキーな話だったのか?たまたま間違った場所来たけど、目的地が勤務地の人間がいて案内してもらうことにたまたま成功する、かなりアンラッキーの中ではラッキーな部類なはずでは?ちょっと楽観的すぎるか?
「秋穂さん!待ってたわ!迷っちゃったのね!」
どこからか、小柄で美しい老女が小走りできた。大家さんだ、大家さんをしてくれている川村さん、面倒見がいい、お上品、いろいろ彼女を説明できる言葉があるが、今日に限って言えば私のお見合いをまとめてくれた人というのが一番しっくりくる。
「すみません!なんか違う駅に行っちゃってて」
「あら!そうだったのね、連絡くださればよかったのに」
「アッ!確かにそうですね!」
「でもいいのよ。間に合ってるわ!ちょっとソワソワしたのは事実だけど!」
「エッ!間に合ってます!?」
「間に合ってるわ!ダッシュでお店に入ればね!」
それはギリギリ、間に合ってないかもしれない!でも川村さんがいいのなら、私はそれはそれでいいのだ。こんな時代にお見合いするのかわしゃ、って思ってるくらいだし、思い出にするんならそれくらいグダグダだってかまわないんだから。
どうしたって教祖様! @ponchacha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。どうしたって教祖様!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます