第314話 俺の知らない原作ヒロインが据え膳になった
久々の自宅。
安全で快適な空間だ。
俺は、リクライニングチェアに身を沈めながら、ボーっとした。
「そうしていると、
「すみません。わざわざ、来ていただいたのに……」
話の途中で、うたた寝。
急いで身を起こして、向かいのソファに座っている
「
「愛澄、よくやったのじゃ。お主は、抵抗できない状態で袋叩きのポジションだったからな。室矢家は、その覚悟を決して軽くは扱わん」
室矢カレナの
そこには、北海道エリアの守護官、
咲良マルグリットの重要度が高く、他流の上位家の愛人となれば、保証人をつける必要があったようだ。
隣で覗きこんでいる
反対側にいたマルグリットは、文句を言いながら、彼女のほうへ回り込んでいく。
「梁さんのご尽力に、心より感謝申し上げます。ポイントZにいた
「彼らは、
愛澄の返事に、俺は
読み終わった詩央里は、マルグリットに書類を渡しつつ、愛澄と向き合った。
「本当に、ありがとうございました。ところで、他の方々は?」
それを聞いた愛澄は、自分の横に座っている女性を紹介する。
「
「
上官の発言を
一見すると姉妹のようだが、年齢差はけっこうありそうだ。
女子大生かな?
「私は、20歳です。ベル女を卒業後に魔特隊へ入り、幹部候補として梁准将に引き抜かれました。士官学校で
「あ……。丁寧に、ありがとうございます」
お礼を言ったら、梨心は微笑む。
愛澄とは違い、まともな性格のようだ。
そう思っていたら、梨心の隣に座っている2人のうち、年上のほうが喋り出す。
「愛澄さん。もう話しても、よろしいので?」
夜を思わせる、長い黒髪。
パープルの瞳。
いかにも大人の女という、色気がある女だ。
それに対して、愛澄はすぐに返す。
「あっ、はい。どうぞ……」
自由気ままな愛澄さんが、気を遣っていらっしゃる。
もう、この時点で関わりたくない。
だが、目の前の美女はニッコリと微笑み、自己紹介をする。
「陸上防衛軍の技術
そこで、ティーカップで
「自画自賛ではありますが、私の悠月家は真牙流の中核の1つです。咲良さんの待遇は、一時的なもの。高校を卒業するタイミングで、再び
うちと仲良くしておいたほうが、マルグリットを奪われずに済むぞ。と言いたいわけか。
この女に取り込まれるリスクを
「ご丁寧に、ありがとうございます。そちらの研究所のテストに関しては、前向きに検討させていただきます。ところで、悠月さんのお隣にいる方は?」
俺が問いかけたら、待っていたと言わんばかりに、女子高生ぐらいの少女が微笑んだ。
赤みがかった、紫の瞳。
よく手入れをされた、ロングの黒髪。
上品な雰囲気で、女としての曲線を描き出した美少女。
その造形は、五夜を若返らせたようだ。
どう見ても、彼女の娘か、親戚です。
本当に、ありがとうございました。
その少女は、外見通りの淑やかな口調で、自己紹介をする。
「悠月五夜の長女、
この言い方では、詩央里も断りにくい。
俺がちらりと横を見たら、顔を引き
それを受けて、明夜音は、
「室矢さま。私、これまで全寮制の女子校でしたから、共学に通ってみたいです。ワガママかと存じますが、1週間ぐらい、お時間をいただけないでしょうか? その後には、室矢さまと同じ通信制で、単位を取得しますから……」
ちょうど文化祭があるし、顔を出してもいいかなあ?
「明夜音が良かったら、うちの文化祭を見てみよう。紫苑学園の生徒会とも接触する必要があるし、短期間だけ通学に切り替える。……詩央里、どうだ?」
「そうですね。いったん、状況を整理しましょう。カレナや私の占いも、『今までのペースでやるのか?』を考える必要がありますし」
その一方で、五夜は、少し離れている相手に話しかける。
「愛澄さん。今回の
真剣な顔の愛澄は、座ったまま、離れている五夜の顔を見た。
「ハッタリを利かせるには、相手が疲れ切っている状態にしたうえで、死角から思い切り殴ることが必要だったのですね? それに、室矢くんと
首肯した五夜は、穏やかに続ける。
「はい。時間を与えれば、よからぬ手段で室矢さんと咲良さんに接触します。咲良さんの力を知れば知るほど、欲しがるでしょうから……。彼らは、なまじ国家権力に食い込んでいるから、じわじわと圧力をかけていく可能性が高く、強引に決定する恐れがありました。
「いえ。そういう理由ならば、仕方ないですね。重力砲の解析に手間取れば、今度はあなたの発言力にも影響したでしょうし……」
愛澄は、ふうっと溜息を吐いた。
気になった俺は、訊ねてみる。
「御二人には、感謝の言葉もありません。ちなみに、もし
「そうですね……。
マルグリットとの繋がりを利用して、揺さぶったわけか。
そう思っていたら、五夜は俺の顔を見ながら、説明を続ける。
「足りなければ、今度はベル女の卒業生も冷遇して、彼女たちにも加勢させます。その配偶者、親族も対象にして『咲良マルグリットのせいで、自分たちの人生が潰された』とするのです。もちろん、これから進学・就職する子供たちも、例外ではありませんよ? 私たちは国家権力、地方権力、政財界に顔が利くので、
黙っていられず、口を挟む。
「俺に力がある、と示しても?」
呆れた表情になった五夜は、それでも淡々と説明する。
「重力砲は驚異的ですが、それを街や罪のない市民に向けられますか? どの
この言い方から察するに、五夜は、俺たちが対戦艦ライフルなしでも重力砲を撃てる、と知っているようだ。
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