第245話 保護者連れのゲストに振り回される(前編)
――ファン・グランデ・リゾートホテル
チャラ男に絡まれたうえ、魔法技術特務隊の下士官にも因縁をつけられたので、俺たちはホテルへ戻った。
シーツなどのリネン類が交換されたスイートルームに入って、ようやく一息。
ソファにドサッと身を投げ出しつつ、俺は嘆く。
「まったく、ついていない! メグ、ちょっと
冷蔵庫から冷えたドリンクを取り出した
「そうね! 一度、相談しましょう」
メッセージアプリで連絡したら、“1時間後に、ロビーラウンジでお待ちしております” との返事。
マルグリットに伝えた後で、何を話すのか? を考える。
1階のロビーラウンジに行ったら、
ソファに座ったまま、手を振ってくる。
それぞれに冷たいドリンクと軽食を手に取り、彼女の向かい側に座った。
簡単に事情を説明したら、琥珀は、すぐに返答する。
「この度はご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。ビーチでナンパしてきた連中は、すでに話をつけました。もう1つのほうですが、陸防の魔特隊であれば、
トラブルを起こしそうな勢力についてレクチャーされ、会談が終わった。
スイートルームに戻ってきて、次の予定を決める。
「今日は、海鮮のバーベキューでいいか?」
「ええ、それでお願い!」
内線でレストランへ連絡して、部屋番号を伝えた。
今日の夕飯は、夕焼けの海を眺めながらのバーベキューに決定だ。
リビングの大型モニターでは、ダイビングの番組。
心が癒される、幻想的な光景が続いていく。
コポコポというダイバーの呼吸音、魚や光の動きに、控え目なヒーリングミュージック。
ボーっと眺めながら、ふと尋ねる。
「昼に出会った
マルグリットは、俺の隣に座ってきた。
「ん……。私が、ベル女の中等部に編入した時にね――」
ベルス女学校の中等部にやってきた直後は、まだ軍人の気質。
ルームメイトと一緒に暮らすことで慣れさせつつも、色々な
「そのうちの1人が、雑賀だったわけ! 当時は、私がベル女の中等部3年で、彼は高等部3年だったかな? あの時の私は、かなり荒れていたから……」
マルグリットはメンタルケアの一環として、自分と近い年齢の男女に会ったそうだ。
「雑賀は、勘違いしちゃった
マギクスの養成施設は、俺が行ったベル女の他にも、色々ある。
ブロン高等魔法学校は男子校で、そちらも交流会。
「今日の様子じゃ、婚約者はいないと思う。まだ結婚を考えられないのか、私と結ばれたくて断ったのか、他の女から相手にされなかったのか……。そのいずれにしても、私たちには無関係! これ以上、しつこいようなら、とっととベル女の校長に連絡するわ!」
マルグリット
「ひっでえ……」
思わず口から漏れた嘆きに、マルグリットが俺の肩を叩く。
「フフッ! もちろん、それと釣り合うぐらいの良い噂もあるわよ? でも、教えてあげない♪ 調子に乗って、『じゃあ、少しぐらい遊んでも』とは考えて欲しくないから!」
良くも悪くも、注目されている。
だから、善意と悪意のどちらも、目立っているわけか。
そういえば、ベル女とは違うマギクスの女子校からも、手紙が届いたっけ。
読む前に、
キャンプファイヤーのように、歌いながら。
最近は、
陸防の特殊部隊としての、マギクスによる魔法技術特務隊。
その実質的なトップが、ベル女の校長、
仮にも先進国の正規軍で、30代の
異世界転生で、チートをもらったのか?
海にせり出した、オープンエアのレストラン。
立派な屋根があるから、雨でも食事を楽しめる。
案内されたテーブルで、中央の網に海産物を置いていく。
貝が開き、中でグツグツと煮立つ。
本日に水揚げされた鮮魚も、皮がパリパリに焼けていく。
海老は沈みゆく夕日のように赤くなっていき、その香りでも食べごろだと教えてくる。
サーロインなどの肉も多く、マルグリットと競い合うように、焼けたものから小皿に取った。
沖縄でも牛を飼育していたことに、ちょっと驚き……。
海の上で、夕焼けが心に残る赤色を塗っていき、やがて黒一色へ。
ご飯は “焼きおにぎり” ぐらいだったが、十分に満腹。
3日目の夜は、イライラしたことから、マルグリットを征服する感じで対戦。
初日とは打って変わり、顔を見えない体勢にして、気が済むまで打ち付ける。
自分でも動きながら、呼応するように鳴くメグ。
その後に話し合い、どちらともなく眠りについた。
ガヤガヤ
窓を閉めていても、下のビーチから人の声が聞こえてくる。
もう朝。
いや、午前10時か?
「メーグー! 起きる時間だぞ!」
「うーん……」
いつも通りに、順番でシャワーを浴びながら、今日の予定を確認。
ついでに、シーツ類の交換も依頼した。
「さーて、今日はどうしよう――」
プルルル
ガチャッ
「はい、室矢ですが……。え? 少し待ってください。そうですね、3分ぐらいで折り返し連絡しますので。……はい、失礼します」
内線を切った俺は、急いでマルグリットを探す。
「メグー!」
「なーに? どうかした?」
俺の呼びかけを聞いて、シャワーブースから返事。
「今、フロントから連絡があった。ロビーラウンジに、昨日の雑賀たちが来ているんだと! それで、どうしようかって相談!!」
端的に説明したら、マルグリットは息を吐いた。
棚に置いてあるバスタオルを身体に巻き、内線まで歩いていく。
スッと受話器を持ち、ボタンを押すことでフロントを呼び出す。
「室矢です。先ほどの訪問者について……。はい……。それで、具体的にどなたが? …………少し、お待ちください」
ピッ
“保留” のボタンを押したマルグリットは、俺のほうを見た。
「
大事にしたくないから、保護者が謝罪に連れてきたのか。
面倒臭いな、本当に。
つーか、この動きの早さを見るに、昨日は魔特隊の監視もいたのか?
あの雑賀という男が、自分で報告するとは思えない。
どいつもこいつも――
「メグが良ければ、話を聞こう。ホテルのロビーなら第三者もいるし、陸防の士官が保護者でも、その上の意向が絡んでいたら、無視するのはまずい!」
「うん、分かった! 急いで用意するわ!」
マルグリットは、15分後に行く、と告げた後に、内線を切った。
急いでドライヤーを手に取って、髪を乾かす。
俺も、セミフォーマルぐらいにしないと……。
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