第234話 桜技流の背信者たちの始末と俺たちの未来ー②
すかさず、局長警護係の1人である
「咲莉菜さま。ここからは、私が説明いたします……。学内では監視の目があるため、囲んでのリンチや物を盗むといった行為は無理。だから、彼女たちは学外の活動に狙いを定めた。その手段が、霊的な守護のない衣装と
やっぱり、
そう思っていたら、瑠璃がチラリと見てきた後に、説明を続ける。
「最初は、ある女子が鍛冶場の男と密通したことで、話が始まったらしいの……。その時点では隠れての
衣装を扱っている
省略したのは、時間と手間がかかる術式の刻印といった、オカルトの部分。
一部の教職員もグルだったから、抜き打ち検査を『入れ替え用の本物』で誤魔化していたそうだ。
その補充と再発防止の仕組みで、幹部はしばらく、寝る暇もない忙しさだろう。
咲莉菜たちも、かなり疲れている様子だ。
聞けば、支援者への陳情と謝罪で、ひたすらに回っているとか。
偽物をつかませていた連中は、共犯者になることで結束しつつ、新入りを引きずり込んでいた。
男には、まだ学生で弱い立場の
そういう目的だから、
女にも裏金の一部を使って、美味しい思いをさせる。
その一方で、従わない者は容赦なく始末するという、
桜技流の権力者が仕切っていて、半永久的に続くか? と思われた裏稼業だが――
「今年の止水学館の高等部1年に、北垣凪という天才がいた。新入生であるのに、御前演舞で並みいる強豪を倒して、本戦の上位に食い込んだ。本来なら、有力な派閥が諸手を挙げて迎えるはずだったけど……」
瑠璃の説明によれば、凪は天然で、年上の同性に嫌われやすいタイプ。
おそらく、無意識にリーダー格の神経を逆撫でしたことで、目をつけられた。
天才に特有の、これもできないの? とか、言っちゃったんだろうなあ。
あるいは、暗黙の了解を気にせず、最も合理的な方法を選んで、激怒させたか。
それでなくても、1年のくせに勝ち進むのは生意気と思われるだろうし……。
俺たちの反応を見た瑠璃は、話を続ける。
「北垣さんは、よっぽど連中の
証拠は、もはや関係ない。
瑠璃の表情と口ぶりを見る限り、囚われた連中は、もう人ではないだろう。
「彼らとしても、ここまで大騒ぎになるのは想定外だったらしく……。不正をしていた連中の
そこまで説明した瑠璃が、俺のほうを見た。
看板がかかっていれば、報復で数人の幹部をやる話だな。
瑠璃に話しかける。
「俺たちのせいで、事態が混乱したと……」
首肯した彼女は、詳しく解説する。
「私たちは『偽の御刀と衣装である』と判断して、ひとまず北垣さんを
不正を摘発した後に凪を回収して、その名誉も回復させる予定だった。
しかし、その前にオウジェリシスの
彼女は正規の手続きで復帰する前に脱獄した、
「
錬大路
その支払いは、咲莉菜が引き受けた。
瑠璃は、最後に付け加える。
「東京のマンションに
要するに、あの2人は、ずっと泳がされていたわけか。
どうやら、話せる部分は終わったらしい。
壁際まで下がった瑠璃を見た俺は、咲莉菜に水を向ける。
「夢の中で会っていた
「はい、その通りですー。わたくしは信頼できる者だけに伝えて、内偵を進めましたー!」
咲莉菜の説明では、安心していたのか、けっこう
裏帳簿、主犯と、色々な情報が集まってきたものの――
「偽物の御刀と衣装は、なかなか押さえられませんでしたー」
彼女は、ポツリと
偽造については徹底的なガードで、ここは関係者の口が堅かったのだ。
肝心のブツを手に入れなければ、せいぜい
学生の演舞巫女との関係もスキャンダルだが、当人同士の気持ちと主張されたら、それで終わり。
しかも、私は被害者と言えないように、絶対的な弱みを握っていた。
たとえば、神事をバカにしたプレイも散々やらされて、その様子を録画されていたのなら、口が裂けても言えるわけがない。
逃げ場のない、寄宿学校だ。
一部の教職員も協力していたから、拘束されたうえでの説得。
水と食料を断ち、とあるモノだけ、与える。
その女子が自発的に応じたら、褒美として、普通の食事も。
次に、媚薬……とはならない。
野生種の山芋を使ったそうだ。
拘束したままで、アイマスクもつけさせ、どことは言わないが塗りつける。
同じ女の手による料理だから、さぞやピンポイントだったろう。
特に関係ない話だが、それはとても痒みがあるとか……。
だいたい、ここで墜ちるし、耐えても無限ループ。
無事に相手を済ませて、共犯者になれば、今度は打って変わって大事にする。
典型的な、洗脳の手口だ。
だが、それを丁寧に説明されても、コメントのしようがない。
どこのエロゲだ?
いや、【
ブツがなければ、桜技流の名家である武羅小路家と天衣津家への立ち入り調査や身柄の拘束はできない。
中途半端につつけば、彼らは手段を選ばず、今度は敵対者への盗撮や盗聴で弱みを握る。
あるいは、汚職の濡れ衣を着せる、といった方向へ進むだろう。
だから、すでに千陣流との火種になった凪と、その親友である澪、さらに被害者の俺を巻き込んだ。
そもそも、凪を嵌めた手口は、いつもとは違い、大慌てだった。
刑事ドラマであれば、犯人が現場に証拠を残してしまったり、その場にいた人間だけが知る情報を口に出したりと、
咲莉菜に質問する。
「東北地方の土蜘蛛の大量出現で、不正をしていた連中は余裕がなくなった。おまけに、夏休み中で教職員と生徒も気が緩んでいる。なればこそ、立て直す時間を与えず、慰霊のための御前演舞で俺を撒き
「はい。
俺は、千陣流の宗家の元長男。
今でも、家格が高い。
妖刀使いの名家の娘が婚約者で、自身も妖刀を式神にしている。
着火剤どころか、火炎放射器ぐらいの大火力だ。
さて、1つずつ確認していくか。
「咲莉菜、それで具体的な始末は?」
「武羅小路家と天衣津家は、
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