第196話 ファイル2:山奥の過疎地域で金髪少女が踊るー⑦
色々な意味でグッタリした女子2人を
隊長の
その反面、うちの隊員に精神攻撃をした件で、
けれども、翌日の午前中、
いつものように覆面パトカーでマルグリットを迎えに来た
その理由は――
「柳舵家の屋敷が、襲撃されたのですかー!?」
全く心当たりのないシャーロットが、素っ頓狂な声を出した。
それを見た真は、彼女たちは無関係だな、と早々に結論を出すも、説明を続ける。
「ああ、そうだ……。現場に残された
夜のお店で気持ちいいサービスを受けていた
小心者だけに、自分たちが犯人扱いをされそうだと、守りに入っている。
マルグリット達がいたと
お店のほうも警察から
出されたコーヒーを飲んだ後に、真が続ける。
「市議会議員の先生である
「私と女子2人は、あの豪邸の奥で白い腕を見たのだけど……。それは見つかったの?」
「いいや、そんな報告はないぞ」
マルグリットは、根拠はないものの、鉄慈はどこかに呼ばれたと考える。
しかし、魔術師ではない彼女にとって、それ以上の追求はできない。
代わりに、1つの疑問を口にする。
「どうして、柳舵の家が襲撃されたのかしら? 日本で、そう簡単に入手できる銃じゃないんでしょ?」
肯定した真は、自分の考えを言う。
「どれも密輸品だろうな。おまけに、無抵抗の人間まで、お構いなしよ! プロかは別として、従軍か殺しの経験があるに違いない……。あの家で遭遇しなくて、運が良かったな?」
冗談めかした言い方に苦笑するマルグリットは、あの白い腕を強奪するために押し入ったのでは? と感じた。
体の向きを変えた彼女は、シャーロットに話しかける。
「あの異人館にいた透明の化け物は、倒し切ったの?」
笑顔のシャーロットは、調査班のおかげで根源を潰せましたー! と宣言。
しかし、そこから一転して、悲しげな顔に変わった。
「昨日の夜、私たちが去った後に、あの異人館も襲撃されたようでーす」
襲撃者は武装したグループで、現場を保全していた警官2人が犠牲になった。
定時連絡に応答せず、近くにいた機動捜査隊が急行した時には、もう手遅れだったのだ。
最低でも数人と思われる軍用ブーツの足跡に、アサルトライフルと思しき空薬莢が散らばるのみ。
シャーロットたちを守った陸上防衛軍のチームは秘密裏に動いていたので、敵のスナイパー2人の死体を確認した後に帰還している。
正規軍が無許可で実弾を使用したとバレたら、大問題になってしまう。
異人館は床板までひっくり返されるレベルの荒らされぶりで、何が奪われたのかも不明。
たぶん、あの異人館と柳舵家の2つがターゲットで、残されていた白い腕などの物品を回収したのだろう。
どこかの邪神を信仰するグループかしら?
そう思ったマルグリットだが、今更言っても、後の祭り。
武装した襲撃犯たちは港で船に乗って、もう日本から出国しているに違いない。
関係者が残っているとしても、つながりを証明することは不可能だ。
マルグリットの胸に苦い思いが残るも、これは所轄署の領分ね、と考え直す。
ふーっと息を吐いた彼女は、自分のスマホを取り出して、ある番号にかけた。
『よくやったのじゃ……。そこは空振りだったが、問題を片付けられた。次は、――へ向かえ』
スマホの画面を触ったマルグリットは、自分を待っていた面々に声をかける。
「私の調査は、全て終わったわ! 襲撃犯たちは、もう遠くまで逃げ延びているでしょう。おそらく、目的を遂げたうえで……。私も、そろそろ次のミッションに向かわないと」
◇ ◇ ◇
手の平を返した署長は、あっさりと彼女の移動を認める。
いったん街に移動して、カレナに教えてもらった目的地へ向かおうとしたのだが――
「ほら! 柳舵さんのような、お金持ちじゃダメでしょ? いくら先生でも悪いことをやっているから、今回みたいに破滅しちゃうの! やっぱり、
スーパーのレジ打ちの女が、どこで聞きつけてきたのやら、同じく写真で見かけた中年男と一緒に押しかけてきた。
マルグリットは伝えにきた警察職員に断ったのだが、署内の小会議室で待っているから、ご自分でそう言ってください。と丸投げしてきたのだ。
丁寧な言い方だったが、その女には明らかな敵意があった。
その若さで巡査部長、しかも美人であることが気に食わない。
地元でも特大の鼻つまみ者に粘着されて、ざまあ見ろ! といったところか。
「最後の最後で、コレとはね……」
呆れ果てたマルグリットが、
レジ打ちの女は、自分の意見に同意したと判断したのか、ここぞとばかりに大きく頷いた。
「そうでしょ、そうでしょ!? ひょっとして、もう身体を許しちゃった? でも、
「う、うん……。き、君だったら、上手くやっていけると思う!」
ねっとりした視線で見られたマルグリットは、笑顔で言い返す。
「実は私、桜の精なの! 春の訪れが終わって、夏の盛り……。もう、ここには滞在できないわ」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔の親子は、思わず声を上げる。
「は?」
「え?」
しかし、マルグリットは舞台の劇団員のように、1人で話を続ける。
「希星さん……。あなたは、自分が強い好意を抱かれていることに気づくべきよ? あなた達を案内してきた警察職員の人、あなたを見る目が違ったもの!」
当惑する親子だが、そのうちの
「で、でも! ボクは、君のことが――」
「私は、もう行かなければ……。あなた達の関係が上手くいくこと。それを心から願っているわ!」
言い終わるが早いか、マルグリットの姿は消えていた。
警察署の小会議室に窓はあるものの、音や動きを察知されずに出て行くことは不可能だ。
呆然としたまま、今まで話していた相手のことも疑い出す親子だが、やがて母親のかおりが口を開く。
「こうしちゃ、いられないわ!
「う、うん……」
マルグリットは、魔法で相手の感覚を鈍らせた後に、ドアから出た。
彼らの主観では時間が止まっているに等しく、彼女が急に消えたと誤認したのだ。
署長への挨拶を終えているため、1階の受付を避けて、適当な窓から飛び降りる。
さんざん足を引っ張ってくれた葦上署から離れたところで、辰真と氷熊心也の覆面パトカーに拾ってもらい、街まで送ってもらう。
助手席に座っている真が、しみじみと呟く。
「何だかんだで、また退屈になるぜ……」
後部座席のマルグリットは、気になっていることを尋ねる。
「柳舵家と異人館の件は、どうなるの?」
「立て続けに銃撃事件が起きて、これだけ警官と市民が殺されたんじゃ、さすがに県警本部と本庁も絡んでくるだろ! 俺も、辞めようかなあ……。ところで、嬢ちゃんは、うちの連中に取調べを受けたか?」
首を振ったマルグリットは、否定する。
「いいえ。聞かれたら、普通に話すつもりだけど……。わざわざ、自分から言う気はないわ!」
「賢明だな! 俺と氷熊は、お前さんを送ったことだけ証言する。嘘ではないし、それ以外のことはどっちみち、よく知らん……。
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