第170話 澪のお願いによって新たな事件に巻き込まれる(前編)
【
準備万端に整えていく澪ルートのノーマルエンドでは、国の1/4が×××の勢力圏になります。
もはや与野党で争っている場合ではなくなり、
生き残りの
しかし、×××はもういないため、滅びたエリアの立て直しを行いつつ、ほぼ自給自足の生活で細々と生活していきます。
復興に従事する代わりに、恩赦を与える形ですね!
誰にとっても禁忌のため、次の政府は復興作業の指示と援助だけで、野党も激しく追及せず。
いっぽう、最小の被害で抑える攻略ルートは、ゲーム本編とエピローグまでは
なまじ余裕を持たせた結果、権力者たちは自分の組織だけ優先する姿勢を崩しません。
さらに、一部の権力者はストレス解消のために手を出した
世間の恨みつらみを集中させたいという
×××をわざと残していたのも、自分たちに批判が及ぶのを嫌がったから。
グッドエンドであるにもかかわらず、最終的に多くの犠牲を払って倒した×××が復活した挙句に咲耶を始めとした加護を失ったのは、とても皮肉な話です。
え?
澪ルートのグッドエンド後に、どうなったのか?
現代兵器と同じだけの戦闘力を持ち、人間と同じ頭脳に統率された巨大な
他にも、彼らを消し飛ばせるだけの権能を持つ存在がいれば、その周辺は安全でしょう。
たとえば、ブリテン諸島でずっと引き籠もっている、黒真珠さん。
彼女は気難しく、気紛れに人を消し飛ばしますが、たぶん×××も瞬殺です。
ん?
黒真珠さんを攻略したい?
うっかり登場させたら、選択肢を間違えるどころか、本人が退屈しただけで国を消しかねない危険物を?
彼女の逆鱗に触れる基準が分かりにくく、常に不機嫌という、素敵な仕様であるのに?
私も、寝ている黒真珠さんを朝に起こしただけでゲームオーバーとなった時は、しばらく立ち直れませんでしたよ!
寝顔を見た、目玉焼きに塩がかかっていない、という理由で、いちいち殺さないで!!
そんなに、主人公の
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
「若さま!?」
どうやら、いつの間にか眠っていたようだ。
俺は、そんなに疲れていたのだろうか?
思わず頭を振りながら、自分の意識を戻す。
それを見ていた
「あの、ごめんなさい……。そこまで疲れているのなら――」
「わざわざ上京してまでの、用事だろう? とにかく、結論を出すぞ」
理由は分からないものの、時間をかけてはいけないと強く感じた。
俺が前向きに考えていることを感じ取った詩央里が、澪に話しかける。
「
澪は、すぐに否定する。
「いいえ。今回の手順は、どれもおかしいわ! いつもは、自宅まで迎えに来ないから……。装備一式を
眉を少し上げた詩央里が、質問する。
「……別の意図があると?」
小さく
「たぶん、凪は処分される……。連絡がなくなってから、1週間は
俺のほうを向いた澪は、その気が強そうな顔を赤らめつつ、止水学館の学生証で顔写真があるページを開き、必死にアピールしてくる。
これは、先ほどの説明のように、公共交通機関で移動する際のパスにもなる。
しかしながら、お役目による公務の時だけで、それ以外は普通に支払う。
学生証の中の小さな写真には、曲がったことは許さないぞ! と言わんばかりの、真面目な澪の顔が写っている。
偽造防止として、浮き出るプレスによる証印なども見えた。
澪は、原作のヒロインの1人だけあって、かなりの美少女だ。
ルビーを思わせる紫の瞳には弱気が見え隠れしていて、俺の言うことに逆らう気がないと分かる。
見るからに柔らかそうな肌にシミはなく、量販店の無難な組み合わせの私服であるにもかかわらず、彼女の雰囲気によって特別な衣装に感じられた。
原作のゲーム中では、Hなことは結婚してから! と厳しい顔で言っていた澪が、
彼女のファンからすれば、もうたまらない状態だ。
さて、どうしたものかねえ……。
確かに世間一般で、
なぜなら、下手にナンパをすれば、警官と同様に公務執行妨害となってしまう可能性があるからだ。
まして、養成学校にいる女子高生となれば、その価値は計り知れない。
「ふざけないでください……。そもそも、桜技流の北垣さんが若さまを殺しかけたことが全ての始まりでしょう? これ以上の迷惑は、許しません!」
うん。
詩央里は、こう言うよな。
俺の近くにいる
一番機嫌が悪いのは、せっかくベルス女学校から帰ってきたのに放置されたままの彼女だ。
考えてみれば、交流会でも我慢させたわけだし、早く相手をしないと……。
俺と詩央里が千陣家から戻ってくるまでお預けにさせておき、ここで澪を抱いた日には、マルグリットが本気で怒る。
……そもそも、この澪が出てくるエピソードは、何だっけ?
俺が返事をしたら、その時点で決定だ。
考える時間を稼ぐためにポテチを摘まんでいたら、今度は澪がパーティ開けをした袋を下から持ち上げ、グイッと差し出してきた。
あ、すまんな……。
サクサクとお菓子を食べていたら、じーっと、澪の視線が突き刺さる。
手を伸ばしたら、その前に、澪が動く。
ペットボトルの
ありがとう……。
そろそろ、返事をするか。
俺が口を開こうとした前に、詩央里が話し出す。
「申し訳ありませんが、お引き取りください! 今の私たちは、あなた方の事情に首を突っ込んでいる余裕がありません」
タンッ
応接セットの真ん中にあるテーブルに、勢いよく、紙コップが置かれた。
その乾いた音を聞いて、俺たちはその実行者に注目する。
俺の義妹である、
カレナは澪に好意的で、苛立っている詩央里を
「そう言うな、詩央里よ? 今は、猫の手も借りたいほど。いや、ルーナ、そなたは呼んでおらぬ……。ともかく、お主が止水学館から追放され演舞巫女を止めても良いと覚悟を決めているのなら、凪の救出を考えてやろう。先に言っておくが、命の危険もあるからな?」
途中で実体化した詩央里の式神、猫又のルーナを見ながら、カレナは言い切った。
「お願いするわ!」
澪が即答したことで、その場の空気が変わった。
グレーの
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