第十一話 テンプレの強制力には抗えないようだ。


〜 ダンジョン都市【幸福の揺籃ウィール・クレイドル】 政庁舎 〜



「お待たせ致しました。此方が御三方のカードです。魔法の効果は確かなようですね。」


 そう言って、メイソンさんがたった今出来たばかりの俺達の【滞在カード】を差し出してくる。


 何故わざわざ俺達がカードを発行しているかというと、新たに開発したステータスの偽造魔法【欺瞞工作トリックメイカー】の効力を確かめるためだ。


 一応、アネモネの【鑑定】Lv8も欺けたから大丈夫だとは思うけど、ギルドカードや俺の街の身分証のカードのような、偽造不可の術具の目も誤魔化せるか、試しているのだ。


 ちなみに俺達は、先の移民団の護衛やら、ダンジョンの調整やらで戦うことが多かったため、またレベルがだいぶ上がっていた。

 うん、こんな感じ。



 名前:マナカ・リクゴウ 種族:アークデーモン

 年齢:0歳 性別:男

 Lv:61 性向:31


 HP:2038/2038 MP:4182/4196

 STR:2097 VIT:1993

 AGI:2628 DEX:2061

 INT:4631 MND:4186

 LUK:53


 称号:【転生者】【迷宮管理人】【弄られし者フールアクター

 【拳師】【妖怪の主】【殲滅者ジェノサイド】【罠匠】

 【交渉人】【詐欺師】【扇動家】【工作員】

 【結界師】


 固有スキル:【全言語翻訳】【無限収納インベントリ

 【魔法創造】Lv6【魔物創造】Lv7【百鬼夜行】Lv6


 スキル:【鑑定】Lv7【空間感知】Lv7

 【危機感知】Lv8【感情感知】Lv7【魔力感知】MAX

 【魔力制御】MAX【魔力吸収】MAX【拳の理】Lv2

 【HP自動回復】Lv9【MP自動回復】Lv9

 【高速思考】Lv8【魔力纏い】Lv9【騎乗】Lv6

 【罠術】Lv8【話術】Lv7【建築】Lv6

 【身体操作】Lv7【扇動】Lv3【工作】Lv3


 魔法:【身体強化】Lv9【念話】Lv8【飛行】Lv9

 【固有属性魔法】Lv4【結界術】Lv4

 【固有造形魔法】Lv6【固有干渉魔法】Lv3


 加護:【転生神の加護】【異界の管理神の祝福】



 名前:アネモネ 種族:ホムンクルス

 年齢:0歳 性別:雌雄同体(現在:女)

 Lv: 63 性向:16


 HP:1984/1984 MP:3006/3006

 STR:1299 VIT:1407

 AGI:3692 DEX:2836

 INT:2421 MND:2235

 LUK:532


 称号:【真日の従僕】【完璧な使用人パーフェクトメイド】【苦労人】

 【司令塔】【知恵者】


 固有スキル:【家事の心得】MAX【明鏡止水】Lv8

 【叡智】Lv6


 スキル:【鑑定】Lv8【高速思考】Lv7

 【気配感知】Lv8【危機察知】Lv8【魔力感知】Lv8

 【魔力制御】Lv8【調合】Lv9【料理】MAX

 【清掃】MAX【裁縫】MAX【剣術】Lv5【隠密】Lv5

 【身体操作】Lv5


 魔法:【火魔法】Lv8【水魔法】Lv8【風魔法】Lv8

 【身体強化】Lv8【加速】Lv9【念話】Lv8



 名前:アザミ 種族:九尾の狐(固有種)

 年齢:0歳 性別:雌

 Lv:56 性向:15


 HP:2076/2076 MP:2524/2524

 STR:2001 VIT:1898

 AGI:2204 DEX:1795

 INT:2084 MND:2162

 LUK:210


 称号:【真日の従魔】【大妖怪】【真日の騎獣】【甘味王】【親衛隊】


 固有スキル:【変幻】【人化】


 スキル:【危機感知】Lv7【感情感知】Lv7

 【魔力制御】Lv8【魔力吸収】Lv7【HP自動回復】Lv5

 【MP自動回復】Lv5【魔力纏い】Lv6【威圧】Lv6

 【魅了】Lv6【舞踊】Lv7【身体操作】Lv4

 【鉄扇術】Lv5


 魔法:【身体強化】Lv6【念話】Lv6【飛行】Lv6

 【加速】Lv6【四属性魔法】Lv6【雷魔法】Lv9

 【闇魔法】Lv7【治癒魔法】Lv7



 名前:シュラ 種族:鬼人・酒呑童子

 年齢:0歳 性別:女

 Lv:55 性向:10


 HP:3058/3058 MP:1301/1301

 STR:3462 VIT:3341

 AGI:2319 DEX:1214

 INT:1198 MND:1417

 LUK:201


 称号:【真日の従魔】【大妖怪】【鬼神】【酒豪】【拳豪】【守護者】


 固有スキル:【怒髪天衝】【鬼化】【呪詛】


 スキル:【危機感知】Lv7【身体操作】Lv7

 【魔力纏い】Lv6【魔力吸収】Lv5【HP自動回復】Lv7

 【威圧】Lv6【格闘術】Lv7


 魔法:【身体強化】Lv6【念話】Lv4【加速】Lv3



 名前:イチ 種族:魔人・天魔雄

 年齢:0歳 性別:男

 Lv:49 性向:8


 HP:2219/2219 MP:1683/1683

 STR:2139 VIT:2671

 AGI:1962 DEX:1204

 INT:1142 MND:1318

 LUK:92


 称号:【真日の従魔】【侠客】【剣師】【鉄壁】


 固有スキル:【神通力】【金剛】【天邪鬼】


 スキル:【気配感知】Lv6【身体操作】Lv7

 【魔力纏い】Lv5【HP自動回復】Lv5【身体硬化】Lv5

 【威圧】Lv5【剣術】Lv8【刀術】Lv9【縮地】Lv5


 魔法:【身体強化】Lv5【念話】Lv4



 いよいよ、俺はアネモネに追い付いてきたね。


 でだ。流石にこんなステータスで冒険者登録は無理が有ろうということで、俺はせっせと新たな魔法を開発したというわけだ。


 【欺瞞工作トリックメイカー】は、対象者の魔力の質に似せた俺の魔力で、その者の魔力をヴェールのように覆い隠す性質を持つ。

 カードが偽造できないならステータスを偽造すれば良いじゃないの、と天啓が降りた末に出来上がった魔法である。


 ちなみにこの魔法、対象は有機物、無機物問わない上、覆う魔力の質も俺の自由自在。

 ステータスの偽造は勿論のこと、暗闇で木とか虫とかにこの魔法を掛ければ、擬似分身の術とかもできたりして、相手を撹乱したりできる。



 閑話休題それはさておき



「おお、ちゃんと種族が人間族になってる! 歳も20歳だ!」


「アザミは獣人族(狐)になっています!」


「儂は鬼人族じゃな。固有種である酒呑童子の表記が消えておるのじゃ。」


 ちなみに2人の年齢だが、アザミは18歳、シュラは19歳にしてある。

 見た目から推測できる年齢にしたから、文句は受け付けないよ?


「これならば、冒険者登録の際にも問題無いでしょう。マナカ殿は、角と耳は隠蔽なさるのでしょう?」


「うん、そのつもりだよ。俺の魔力を破らない限り、隠蔽は剥がせないからね。あとは注意するところは有るかな?」


 流石に有能なメイソンさん。冒険者登録に於ける注意事項を、事細かに教えてくれた。



 ・ギルドカードには、ランク、名前、性別、種族、年齢、レベル、性向、職業、登録ギルド、現在受注中の依頼が表記される。


 ・記載はされないが、スキル等も登録の際にチェックされる。


 ・ギルドカードの偽造は犯罪。


 ・性向が『-15』になると自動的にカードの効力は失効する。


 ・表記はされないが、魔物の討伐情報も、カードに記録される。


 ・ランクアップ可能になると、カードのランク欄に表示される。


 ・登録時、試験として模擬戦が行われる。



 まとめると、こんなとこか。これなら、あとは物騒なスキルを隠蔽しちゃえばなんとかなりそうだな。


 レベルの詐称は、協議の結果しないことに決めた。

 絶対ボロが出るからな。特に俺とか、シュラとか、シュラとか、シュラとか。


「ありがとうメイソンさん。忙しいところ手伝わせてごめんね。」


「良いのですよ。どうか苦しむ子供達を、1人でも多く保護してあげてください。」


 メイソンさんも平民出身だからか、孤児や口減らしの実情を良く知っている。

 王宮で働いていた時も、給金の一部を孤児院に寄付していたらしい。


 彼のように内政面に強い味方が居ると、非常に心強いね。


 あとは冒険者登録して、目指せDランクだな。

 改めてメイソンさんにお礼を言って、俺達は政庁舎を後にした。




〜 ユーフェミア王国 ブリンクス辺境領 領都ブリンクス 〜



 さて、やって来ました他所の街。

 辺境伯マクレーンのおっさんが治める領都、ブリンクスだ。


 北の辺境で一番の街だけあり、大通りには露店が軒を連ね、客を呼び込む声があちこちから上がっていてとても賑やかだ。


 まあ、王都には及ばないけどね。

 よく考えたら、俺ってダンジョン以外では、王都しか行ったこと無かったわ。


 当然だけど、俺は角と耳を魔法で隠蔽している。見た目には色黒の人間の男にしか見えない筈だ。


 だというのに。

 さっきからチラチラ、チラチラと。


 俺たち3人を横目で見、振り向いて見で視線が鬱陶しい。


 分かってるよ。シュラとアザミを見てるんだろ?


 2人とも黙ってれば……ゲフンゲフンッ! 2人ともかなりの美人さんだからね。

 しかもシュラは露出の多い動きやすいタンクトップにジャケット、ホットパンツという挑発的な格好だし、アザミに至ってはこの世界には存在していないだろう着物姿だ。


 いくら俺が平凡な人間を装おうと、この2人と行動を共にするならあんまり意味は無いような。

 まあ、だからと言ってアネモネやイチと歩いていても目立つだろうから、そこはもうそういうものと割り切ろう。


 まあそれはいいから、さっさと冒険者ギルドを目指そう。


 そうして遂にやって来た冒険者ギルドの建物。

 周りの建物に比べると随分と立派だな。


 正面玄関には、西部劇やファンタジーの定番のスイングドア。

 テンプレのひとつとしては、こうして観てると中から誰かが吹っ飛ばされて転がり出て来たりするんだよね。


 まあそんなことは起きる様子もなかったので、さっさと中へと入って行く。


 扉を通り抜けたその先には、広いフロアにテーブルと椅子が多数。

 そして如何にも冒険者っぽい人から、お前盗賊だろって人まで、大勢の人達が席に座って、日も高いというのに酒を楽しんでいる。


 オフなのかな?


 向かって右奥の壁にはこれまた如何にもなチラシが多数貼られた掲示板。

 左奥には2階へ上がる階段。

 そして正面には、いくつかの窓口を設けられたカウンターが在り、受付嬢が冒険者の相手をしている。


 うん、The 冒険者ギルドだわ。


 そしてそして、周囲から一斉に集まる視線。

 これまた分かり易い視線だこと。


 俺を睨め付け品定めし、そして後ろの2人を舐め回すように。

 下心満載な視線の坩堝るつぼだ。酒が手伝って余計に遠慮が無い感じだね。


 まあ、そんな視線は気にせずにカウンターへと行きましょか。丁度ひとつ空いてるし。


 そうしてカウンターへ向かう俺達の進路を、酒の匂いを振り撒きながら、3人組の男達が塞いでくる。


 これはまさか……テンプレ来たか!?


「おう、兄ちゃんよぉ。此処はおめぇみてぇなヒョロっちい野郎が女連れで来るような場所じゃねぇぞぉ?」


「悪いこたぁ言わねぇから、さっさと回れ右して帰んな。お家でママが待ってるだろぉ?」


「後ろの姉ちゃん2人は、俺らがしっかり面倒見てやるからよぉ。おら、さっさと帰んな!」


 キ……キターーーーーーーッッッ!!!!

 マジで来たよ、テンプレ展開!


 やっべぇ。オラ、ワクワクしてくっぞ!?


「悪いけど、俺たちは冒険者登録に来たんだ。道を開けてくれないかな?」


 内心のニヤニヤを必死で噛み殺し、できるだけフレンドリーに対応する。

 うん。そうしないと、後ろの2人の表情がどんどん剣呑になってきてるからね!


「ああ!? おめぇみてぇなヒョロヒョロが冒険者だあ?!」


「おう、冒険者稼業ナメてんじゃねえぞ?!」


「剣も持ったことねえような青二才にゃあ、どだい無理ってもんよ! おら! さっさと帰りやがれッ!」


 心底バカにした表情で声を上げる3人組。そしてギルドのあちこちからは、それに同調したように蔑みの笑いが湧く。


「主様よ、ちとコヤツら、叩きのめしても良いかのう?」


「マナカ様、アザミもシュラに同意です。戦闘の許可を。」


 ちょいちょい!?

 あいやっ! あいや待たれよっ!?


「なあ、頼むよ。俺たちは急いでDランクになって、迷宮を目指さないといけないんだ。頼むから、そこを通してくれ。」


 さあ、穏便に済ますなら今の内だぞ?! 俺の持ってる手綱はめっちゃ頼り無いからね!?


「ぶっ!? ぶはははははっ!? おめぇが? 迷宮だあ?! 冒険者ナメんのも大概にしろよ!?」


「おう! 身の程知らずの坊っちゃんには、親切丁寧な教育が必要みてぇだなぁ?!」


「ちょうどいいぜ! 俺らが迷宮を目指せるかどうか、腕を見てやるよぉ!!」


 あんれー? 何この人達?

 こっちは終始穏便に接していたというのに、勝手に喧嘩始めようとしとりますがな。


 あ、受付嬢さんと目が合った。

 うわ!? 物凄い勢いで顔を逸らされちゃったよ?! 俺傷付いちゃうよ?!


〘はぁ……シュラ、アザミ。絶対殺すなよ?〙


 後ろの2人に念話を送り、釘を刺す。

 それと同時。引き絞った弓の弦を放したかの如く、飛び出した2人。


 そう、一瞬だ。

 一瞬で、3人組の内の1人は、シュラに頭を床に叩き付けられ(勿論床はバキバキです)、頭を血塗れにして気絶。

 もう1人は、宙に浮いたアザミに片手で首を絞められ、吊るされたまま気絶していた。


「お前ら……やり過ぎだっての。さて、あとはアンタ1人だけど、まだ邪魔する?」


 残った3人組最後の1人に、そう訊ねる。


「て、テメェら、おお俺らにこんなことして、た、タダで済むと思ってんのかっ!?」


 あらあら、ビビっちゃってまあ。

 でも、虚勢を張るのは止めないんだね?


「それは、俺たちに敵対するってこと? そう受け取って良いんだよね?」


 結界を展開。首だけ外に出して、両手は開いて、足は“気をつけ”で拘束する。

 うん、十字架に磔されてるみたいだな。


「俺は、ちゃんと退いてくれって頼んだよね? 通してくれってお願いしたよね? なのにしつこく絡んで来てさぁ。これは、お仕置されても文句言えないよね?」


 のんびりと、磔の男に近付く。


「なっ!? なんだよこれ!? 動けねぇ!? よ、よせ! 近寄るんじゃねえっ!!??」


 手を男の顔の前に突き出し、中指を折って親指に引っ掛ける。


「これに懲りたら、他人ひと様に迷惑掛けんじゃねえぞ? もしまた同じ事してたら、こんなもんじゃ済まさねえからな?」


 さて、それでは指に力を込めまして(勿論手加減バリバリですよ!)、せーのぉ!


「デッコピーン♪」


「へぐぶぇっ!!??」


 磔状態で避けることも出来ず、まともに俺のデコピンを喰らった男は、奇っ怪な声を上げて沈黙した。


「アザミ、シュラ。邪魔だから外に放り出しといてね。」


「うむ。」


「承知しました、マナカ様。」


 アザミとシュラが3人組の男達を引き摺り、スイングドアから放り投げる。

 俺はその間に、シュラが割った床板を造形魔法で修復した。


 さて、改めて受付へ行きますか。


 そうして3人で空いているカウンターの受付へと行くと……おやこの女性ひとは。

 さっき絡まれてた俺から目を逸らしたお姉さんじゃないですかぁ〜。


「い、いいいいいらっしゃいませっ!! よ、ようこそ、ぼぼぼ冒険者ギルド、ぶぶブリンクス支部へ!?」


 名札を見ると……【フィーア】さん?


 んふふふふ。これから、ねぇ〜?



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る