閑話 世界の狭間より親しみと少しの悪意を込めて Re:


〜 転生神ククルシュカーの神域 スナック【女神のオアシス】 〜


《転生神ククルシュカー視点》



 ふんふふーんふーん♪


 今日もお仕事お疲れ様〜♪


 そうだねぇ今日は、ざっと五千人くらい転生させたかな〜。


 これでも少ない方だよー?


 どっかの地球とか言う惑星なんて、日に万単位で死ぬことだってざらに有るんだから!


 はーヤダヤダ!

 もっと、創造神様が与え賜うた生命を大切にしてよねー。


 具体的に言えば、1日千人くらいに減らして!

 もーマジで大変なんだから!


 システムで自動化してるんじゃないかって?


 そーだけどー! そーですけどもー!

 確認作業ってモンがあるでしょうがーッ!!


 現場監督舐めてんのー?

 お仕事って、そんな楽なもんじゃないんだよー?


 カランッと、お気に入りのドアベルの音に迎えられる。


 薄暗い店内へと入り、足は自然に、1番奥のカウンターの角席へ。


 バーテンホムンクルスから、温かいおしぼりを開いて渡される。


 うん、だいぶこの仕事に慣れたみたいだねー。

 最初の頃は、接客の仕方からお酒の作り方から、色々指導するのが大変だったんだからー。


「ようこそ、ククルシュカー様。お飲み物は何になさいますか?」


 口調はまだ堅いわねー。でもまあ、これはこれでいいかー。


「んーと、とりあえず生ー。」


 やっぱり、仕事を終えた1杯目は生ビールよねー!

 なに? 神様に異論あんのー?


 先に御手元が置かれ、次に凍ったジョッキを手に、洗練された手つきでビールサーバーを操作するバーテンホムンクルス。

 最早その技術は職人レベルよー。


 見よ! この神泡をー!!


 なんでもコツは、一旦垂直のグラスなりジョッキに勢い良く注いで、敢えて泡を作るらしい。

 そして少し置き、泡が昇って少なくなってきたら、そこに高い位置からそっと注ぐのが肝。


 そうすると、荒い泡が撹拌されて肌理きめ細かくなり、緩かったのも硬めの泡になりつつ、グラスの上に押し上げられる。

 硬く肌理細やかな泡は溢れることなく、グラスの上に盛り上がるという、正にカミワザ!!


 やっぱり神様専属のバーテンダーだったら、これくらいやってもらわないとねー。


 今日のお通しは何かなー?


 おつまみ系かなー? オカズ系かなー?


 機嫌良くお通しを待っていると、聞き慣れたドアベルの音が鳴った。


「お邪魔するわよ、ククル。なあに? やけにご機嫌じゃないの?」


 二重ドアを潜って来店したのは、私の神友しんゆうのイライアメネスだった。

 というか、神様友達の少ない私の所に遊びに来るなんて、彼女くらいしか居ないんだけどねー。


「ライア、いらっしゃーい。ていうかアンタ、しょっちゅう入り浸ってるでしょー?」


 そう、このひとつの世界を管理する女神は、本来なら年中無休の管理の仕事を配下の使徒に一部任せて、このスナック【女神のオアシス】にかなりの頻度で通っているのだ。


「だって、他の神様達と飲んでても、此処ほど拘ったお酒は出ないんだもの。特にキンキンに冷えた生ビールが最高なのよッ!」


 いや、オッサンか!?

 いやいや、確かに私も此処の生ビールは自信を持ってお奨めできるけどさー。


「そんなこと言って、どうせいつもビールばっかりなんだからー。偶には別のも飲んだらー? ビールベースのカクテルだって有るんだよー?」


 真日さんも気に入ってくれてたよね、レッドアイとかシャンディガフ。


「そうねえ。気が向いたらねぇ。」


 これは今日もビールでオーラスだわー。

 まあオープンからラストまでって言っても、ぶっちゃけ神域には時間の概念なんて無いんだけどねー。


 でもそこは節度あるオトナな女神の私なのよー。

 ちゃんと店内には、24時間単位の時計を設置してあるんだからねー。


「バーテンさん、とりあえず生ね♪ ……それで? ご機嫌な理由は、やっぱり例の彼なのかしら?」


 むぅー。折角華麗にスルーしたのにー。


「そうだよー。今日はこれから、また真日さんの行動を観るとこなのー。」


 やっぱりライアに隠し事なんて無理だなー。

 どっちみち、読もうと思えばお互い考えてることは筒抜けだしねー。


「あらあら。丁度良い時に来られたわねぇ。私も彼のこと、ちょっと気になってたのよねぇ♪」


 なっ!? 何言ってるのこの女神ひとーッ?!


「まさか、ライアも真日さんのこと……?」


「ククルのお気に入りだものねぇ。元気で生きてるか、そりゃ気になるわよ。んー? ククル、私って? 私、何なのかなー?」


 くぅーっ! やられた!! ほんっと油断ならない女神オンナねー!


「なんでもなーい! ほら、そんなことより乾杯しよーっ!」


 苦しい話題転換だけど、いじられ続けるよりマシだよねー。


「はいはい。お疲れ様ー♪」


「おつかれー♪」


 カチャンッとジョッキがぶつかる。


 凄い! これでも泡が溢れない!! まさに神業!! 神の泡だよー!!


「ほらほら、そんなに無駄に神様を推しても、貢献度は変わらないわよ?」


 ふん! そんなこと分かってますぅーだ!


 ん? 貢献度って何かってー?

 私達神にも、当然上下関係は有って、頂点はお馴染み創造神様なのは分かるわよねー?


 そんな創造神様が世界を数多あまたに創造してー、生命も創造してー、それらを管理するために私達手足となる神も創造してるのよー。


 そんな部下である私達が、それぞれに与えられた使命(存在意義)を全うしているとー、それに見合った貢献度――GPゴッドポイントを付与されるのよー。

 私達はそのGPを使ってー、こうやって物を創造したりー、ある程度生命に干渉したりー、創造神様にお願いしたりするのー。


「いや、貴女いったい、誰に説明してるのよ?」


 甘いなーライアは。まるでフルーツポンチのシロップみたいだよー。


「世界は遍く監視されてるんだよー?」


 誰に観られてるか分からないんだからねー?

 もしかしたらー、創造神様が抜き打ちでこの様子を観て居られるかもしれないんだからー。


「はいはい。ほら、お通し来たわよ?」


 おぉっとー。今日のお通しは……つくね! キムチ! 冷奴!!

 これはビールが進むわー♪


「むぐむぐ♪ そう言えばライア、アンタしょっちゅう此処で飲み明かしてるけどー、GP大丈夫なのー?」


 アタシだって無料タダで飲ませてる訳じゃないからねー。最初に来た時は兎も角、それ以降はちゃんとGP換算で請求してるのよー。


「それは大丈夫よ。こう言っちゃなんだけど、私の世界は運営も上手くいってるしね。GPは貢献度だけじゃなくて、信仰値でも貯まるからね。」


 ふーん。いいわねー、世界の管理神はー。

 チョロッと聖職者に干渉して神託でも与えれば、勝手に信仰してくれてボロ儲けだもんねー。


「ちょっとククル? 神聞きひとぎきの悪いこと考えないでくれない?」


 おっとー、読まれてたかー。


「まあー、私みたいな転生神は、やって来る魂を捌くだけのお仕事だからねー。」


「そんな捻くれたこと言わないの。大切なお役目を頑張ってるんじゃない。今日は私の払いにしてあげるから、機嫌治しなさい?」


 ほんとにー? やったねー♪

 それじゃ追加のビールを頼んでー、テレビをスイッチオーン♪


「現金なねぇ……」


 え? 聴こえませーん♪




『だーかーらっ! もうちょい真面目に考えてくれよお!?』


 おー? なになにー? ダンジョンの名前ー?


 え、今更ー?


「今更そこなの……?」


 ライアも思わずツッコんでるわー。


「私としてはー、やっぱり【戦慄! 罠迷宮!!】が推しかなー?」


「やあよ。マスコミとかが押し寄せて来そうじゃない。私は【フォレストリゾート・ニューマナカ】が良いわね。なんだか寛げそうじゃない?」


 マナエちゃん、センス有るなー。


 あ、結局王女に振るんだー? んで即決とかどうなのよー?


 ふーん……【惑わしの揺籃】ねー。

 揺籃ゆりかごって所が良いわねー。


 でもー、こういうのなんて言うんだっけー? 地球の若者言葉でー……


「なんだか、結局厨二病っぽい名前になるのねぇ。」


 そう、厨二だー! 真日さんなら悶えそうなもんだけどー、それだけ他がダメってことなのかなー?


 【戦慄! 罠迷宮!!】って良いと思ったのになー。


 ていうか、まーたボコボコにされてるよー。

 しかも味方全員にとか、ウケるー♪♪




『まあ、大事な用というか、我儘を言いに来たというか……それよりアザミ、急がせて悪かったな。お疲れ様。』


 おー? お城訪問かなー?

 魔族の真日さんが堂々と王都に入場しようとか。


 あ、やっぱり止められてるしー。


 おー! ゴリゴリのゴリ押しだー。

 うわー、一国の王女にお迎えに来させるとかー。無いわー。


 この王女ちゃんもなんでこう、都合良く振り回されるかねー?


「なんだか、彼ってどんどん口が上手くなってない?」


 あー、それ私も思ったよー。どれどれー?


「うわー……【詐欺師】の称号と【話術】のスキル取れてるー……!」


「あー、それでかぁ。口が上手くなる訳だわねぇ。」


 この王女、もしかしなくても真日さんに既に落とされてないー?




『アンタにとって、国の面子と民の安寧、一体どっちが大事なんだよ!? どうせ周りは潜在敵国だらけだろうが! 今更取り繕ったってなんも変わりゃしないんだ! いい加減したいことを、ハッキリ言ってみろ!!』


 うっはー♪ 言うねえ真日さーん♪

 なんかそっちの世界行ってから、妙に熱血漢してないー?


「これもきっと、王女さんや王様のためなんでしょうねぇ。」


 そうだねー。真日さんはいっつもそうだからー。

 ほんと、ヒトの事にばっか一生懸命でさー。




『それでは陛下、僭越ながら。元王太子殿下の、、所望致します』


 うわ、悪いお顔だぁー。

 その【猫パンチグローブ】って、鬼人のシュラちゃんが使ってたヤツだよねー?


 …………ぶはっ!!!


「あっはははははははは♪♪♪」


「やだもぉー! イケメン王子も形無しねぇ! ふふふっ♪」


 何をするかと思えば、王子の顔面殴って前歯バッキバキとか……!


 やっばい! すんごいスッキリしたー♪♪ 良くやったぞ、真日さんー!




『はぁ……後から文句言わないでくれよ? これでいいかな、王様?』


 すごーい。本当に、王様と友達になっちゃったー。


 しかも豪華なご馳走……


「私、牛タンのワイン煮込みが食べたいわ。」


「私は豚バラのセイロ蒸しねー!」


 思わず空腹を覚えて、料理を注文する。


 おのれ、真日さんめー。神域にまで飯テロかますとか、やりおるわー!


「あら、王家全員集合ね? (約1名を除いて)」


「ホントだー。親睦会かなー? (約1名を除いて)」


 王家の一人一人と話をする、真日さん。


 生意気そうな王子の頭をワチャワチャして、内気そうな白髪王子に何かを渡してる……?

 あれって、結構高位の術具だよね?


 あー! 真日さんったら、金髪縦ロールなですわ姫様にデレデレしてるーッ!


「前から思ってたけど……彼って、ロリコンってやつなのかしら?」


 神様ライアに引かれてるよ、真日さーん!?


「いやー、あれは単に、妹的な子を愛でて甘やかしたいだけなんじゃないかなー? 真日さんって、子供好きみたいだしさー。」


 あれー? でもそうするとー、私はー?


「ククルのことも、妹みたいとしか見てなかったりして?」


「ちょっ! 違うよー! あれは、絶対もっと上のランクの扱……い……?!」


 ニマニマしてるライアの顔を見て、ハッと我に返る。


「もうっ! ライアってば、出禁にするわよーッ!?」


「うふふふ、ごめんごめん♪ 良いなあククルは。青春って、こういうのを言うのかしらねぇ♪」


 もうっ! もうもーうっ!!

 ライアったら! すーぐ私のことを揶揄からかうんだからー!


 それもこれも全部真日さんが悪いんだからねーッ!

 バーテン! 生、お代わりー!!




『ま、マナエ? どどどうしたんだ、そんな怖い顔をして? ほほほら! いつも通りに、ニコニコ笑ってくれないか?』


 あーらら、今度はマナエちゃんにお説教されてるよー。


「彼って、彼女達の主なのよね?」


 仰りたいことは解りますよ、ライアさーん。


「まあ、真日さんはー、きっと行動で引っ張るタイプなんだよー。多分。」


「ふぅん?」


 その意味深な流し目をやめなさいー。それより驚いたのはさ。


「真日さん、無茶するなー……!」


「ホントよねぇ。まさか、神を創造しようとするなんて……!」


 ビックリしたよー。また固有スキルで配下を創ると思ったら、神気が溢れてくるんだもんー!


 まあ、流石に世界の抑制力に引っ掛かって、失敗してたけどねー。

 けどそれでも懲りずに亜神クラスの魔物創ってたしねー!


「前も思ったけど、あれって、完全に生命創造よね? 下僕を創るスキルで出来る範疇、超えてるわよね?」


 言わないでライアー! 私は目を瞑ってるのよー!


「前に創造神様の干渉受けてたしー、スキルが変な感じになったっぽいー?」


 だから私のせいじゃないからー!


「……薮蛇っぽいし、私も深く追求はやめときましょ……」


 うんうん、それが良いよー。




『うっさい、黙れブタ。醜く肥え太りやがって。ちょっとは辺境伯のおっさんを見習えや。』


 お、おおう……! 真日さんがガチ切れだー。

 ホント口悪いねー?


「あらあら。またこの子ってば、自分以外のことで怒ってるわね?」


「それが、真日さんなんだよー。」


 彼は自分のことなら大抵は我慢してしまう。いいよって、流してしまう。


 でも、彼に親しくしてくれる人のためなら、烈火の如く怒る。


 あの元王太子も殺し掛けたくらいだもんね。


「なんだか、ククルが入れ込むのも分かるわぁ。」


 そうでしょー? 今時居ないよ、こんな人ー♪


「あらあら、嬉しそうね?」


 うぐっ!?


「もう! ライアーッッ!?」


 もー! 笑ってんじゃないわよー!!




『という訳で、来ちゃった♪』


 移民団の護衛ねー。

 ほんっと、人のためには気が回るなー。


「ねえ? よく考えたら、この子、転生してからまだふた月も経たないのよね?」


 あー、やっぱりそう思うー? 尋常じゃない行動力だよねー。しかもそれを行うに足る実力も、しっかり身に付けてるしー。


「王国全土を巻き込んで移民計画とかー。やってることとんでもないよねー?」


「この子、前世は地球人でしょ? 何か、人を導くような仕事でもしてたの?」


 そんなんじゃないよー。


「ううん。主にやってたのは、老人介護の仕事だねー。あーでも、周囲の同僚からは頼りにされてたみたいー。仕事も早いしー、丁寧だしー。技術指導とか、レクリエーション考案とかー、色々働き易くなるように率先して頑張ってたみたいー?」


「それって、ほぼ管理職なんじゃない? え? それだけやってて平なの? うわ、こういうのをブラックって言うのねぇ……!」


 成果を上げる人が正当に評価されない。


 人間社会の闇だよねー。こわいこわいー。




『準備は良いか? 飲み物も行き届いたか? 今は武器じゃなく杯を掲げろ! 今夜は無礼講だ! 俺達の、移民計画の成功を祈って! かんぱーい!!』


「楽しそうねぇ。」


「楽しそうだねー。」


「混ざりたいわねぇ。」


「混ざりたいなー。」


 ホント……楽しそうだなー。


 初めて会った筈の冒険者達も巻き込んで、王族も貴族も平民も魔族も、関係無しのどんちゃん騒ぎ。


「素敵な子ね。」


「うん。真日さんはー、特別だよー!」


 GPを貯めて、現界しちゃおうかなー、なんてねー。


「あら! それ良いわねククル! 今度一緒に遊びに行きましょうよ!」


 はぁっ!? 何言ってんの、ライア!?


「ちょ、馬鹿言わないでよー。だいたい二柱も現界するなんて、どんだGP掛かると思ってんのよー!」


「ええー? 良いじゃないのよぉ。貴女も碌にGP使ってもいないんでしょ? 偶にはパーッと使うのも、気持ち良いわよぉ? あ、それともぉ……?」


 なんだかライアが、意地悪な顔だー。


「いっその事、肉体を得てこの世界に【天下り】しちゃっても良いかもねぇ?」


 …………は?


「はああああぁぁっ!?」


「だってそうすれば、もっと間近でこの子の生を観られるじゃない? ククルは、より彼に接近できるわよぉ?」


 な、何を言ってるの、この駄女神は!?

 だいたい、そんなことして、私達の後任はどうするのよ!?


「そんなの、創造神様がどうとでもしてくれるわよぉ♪」


 ダメだ。お話にならない……!

 続き観よう……


 でも、【天下り】かぁー。いつかは、良いかも…………?




『ゔあ゙あ゙ああぁぁぁぁんッッ!! マナカ殿! マナカ殿!! まなかどのおおおぉぉぉぉぉッッ!!!』


 まーた、女の子泣かせてるー。真日さん、いい加減にしなよねー?


「この騎士の女の子、何を見たのかしら……?」


「そうだねー。気になるねー?」


 これはー、観ちゃうー? 観ちゃおっかー♪




(レティシアにチャンネルを合わせ鑑賞中……)




「ちょっと!? どうしてくれるのよ!! 怖くて夜道を1柱ひとりで歩けないじゃない!? このあと別の神の所で飲み会もあるのよっ!?」


「うわーん! 真日さんのバカー!! 私ジャパニーズホラーは苦手なのにーッ!!」


 ヤバいよ怖いよー!?

 バーテン! 店内もっと明るくしてー!!


 おのれ真日さんめー!

 今度会ったらタダじゃ済まさないからねー!?




『ああ。あの神様は転生神ククルシュカーっていって、俺をこの世界に導いてくれた神様だよ。折角教会を創るから、せめて感謝を込めてってね。』


 え、なにしてんの?

 なに勝手に、ひとの御神体なんか創ってんのよ?


「あらあら。真日くんったら、隅に置けないわねぇ♪」


 ライア、うっさいー! あと、何を勝手にさり気なく、名前呼びに変えてるのよー?!


 むぅー! ほんっと、真日さんってば、ほんっとに……!!


「素直に嬉しいって、認めなさいな。こんなにもククルのことを大事に想ってくれてるのよ? ほんと、良く出来てて羨ましいわ。」


 うるさいなー。分かってるわよ、そんなことー!

 そんな風に悶えていると、不意にドアベルの音が響いた。


「ちょっと!! ククルシュカー居る!? なんか私達のGPがとんでもなく増えてるんだけど!? アンタ何かした!?」


 断りも無く私の神域に侵入しはいって来たのは……真日さんが居る世界、アストラーゼの神々?


「ちょっとー、何なのよー? 他神ひとん家に勝手に入って来るんじゃないわよー!」


「あら、【ユタ】じゃない? 久しぶりねぇ?」


 折角ひとが気恥ずかしくも、良い気分を噛み締めてたってのにー!


「あら、イライアメネス? アンタも来てたのね? ってそれどころじゃないわ! ククルシュカー、アンタがアタシの世界に転生させたマナカって男、何者なの!? ソイツが信者の爺さんに接触した途端、GPが凄い勢いで増えてるのよ!?」


 うんうん、と後ろに続く神々も頷いている。


 あー。心当たりはー、あるかなー?


「たぶん、コレだねー? まあ、そんなとこで立ってないでー。一緒に観るー? お酒も出すよー? ライアの奢りだしー。」


「こらククル!? 貴女には奢るけど、この子達のまでは――――!?」


「あらホント!? じゃあアタシはバーボン、ロックで!」


 梅酒ソーダ割り、レモンサワー、ソルティドッグ、カルーアミルク、ジンジャーハイボール、サングリア……


 一斉に注文されて、バーテンホムンクルスが大忙しねー。


 このお店も賑やかになったことだしー、スタッフ増やそうかなー?


 真日さんのせいかなー?


 なんかー、私の御神体を囲むように、抱き締めるように祭壇に創ってくれてるしー。ユタなんかは後ろから抱きしめてるしー。


 はあー。【天下り】はー、もうちょっと考えとこうかなー。


 今は、この賑やかさがちょっと、嬉しいもんー。


 真日さん……ありがとー。




 あ、え? う、うわー。


 私のGPもめっさ増えとるー。


 真日さんパネェっすー。



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