第4話 健康診断という名の晒し


 健康診断は、

 十六日に行われた。


 実のところ僕は、

 この「健康診断」とか

「身体測定」だとか

 言うものが

 あまり好きではない。

 それはこの僕が

 平均すぎる故だ。



 今度こそは、今度こそは、

 と懇願する勢いで

 心の中で祈りながら、

 まずは身長を測定した。



「百七十一・五センチですね」



 そ、そんなぁ……

 僕が事前に調べておいた

 高校一年生の平均身長よりは

 数センチほど高い。


 しかし、

 一般男性の平均身長と

 ほぼ変わらないのである。



「せ、切ない」


「奏くんは贅沢だよ、

 俺なんか……」



 そう言って彼は

 健康診断カードを

 差し出してきた。



「え、これ見てもいいの?」

「…………」



 あまりに気力を失ったのか、

 彼は無言で頷いた。


 えっと、

 じゃあ見てみようかな。

 なになに、百ごじゅ……え。

 思わず振り返り、

 彼を見つめた。そして。



「……うん」

「無言で哀れみの目を

 向けるのやめて、

 余計にくるから。

 言いたいことがあるなら

 はっきり言えよ」

「あきくん、

 今からでも牛乳飲んで、

 いっぱい寝ようか」

「うん、そうするわ」



 ちなみに、

 あきくんの身長

 百五十八・七センチというのは

 中学二年生の平均身長より

 一センチ低いよ。



「そういや、僕らの身長差って、

 十二・八センチだ。

 それって、カップルの理想的な

 身長差と同じくらいだね!」



 その後暫くの間、

 あきくんは僕と自分との

 身長差を見比べていては、

 こう呟いていた。



「筋トレしようかな」



 それを聞いて、

 僕が必死に笑いを

 堪えていたのは言うまでもない。


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