第3話 部活紹介という名のオリエンテーション


 こうして僕は、めでたく、

 あきくんと

 友達になることができ、

 LINKを交換した。

 少しでも彼のことを知ろうと、

 会話を続けていくうち、

 話題は恋バナとなっていった。

 そういう話題は不得意で、

 それを避けたかった僕は

 部活の話題を持ちかけてみる。



「奏くんはさ、

 気になる子とかいないの?」

「残念ながら

 今はいないんだよねー、

 彼女募集中ではあるんだけど。

 ところでさ、あきくんは

 何部に入るつもりなの?」



 ちょっと強引すぎたかな、

 心の中で冷や汗が止まらないや。


 しかし、その考えはどうやら

 杞憂に終わったようだった。



「今は考え中。

 でもまあ、文化系で

 目立たない部活に

 入ろうかなとは思ってる。

 そういや、

 文化部に珍しい

 部活があるらしいよ。

 名前は忘れたけど、結構有名だって」



 それ以上の

 情報が得られるでもなく、

 僕たちは今月十一日に行われる

 オリエンテーションを

 待つこととなった。



 そして待ち望んだ

 オリエンテーションの日。


「私たち料理部は――」

「僕たち

 男子バスケットボール部は――」


 

 特にこれと言って、

 別段変わったところもなく、

 部活紹介の

 最後の部活となってしまった。



「では次で、

 最後の部活紹介となります。

 ラストを飾るのは、

 風紀部の皆さんです!」



 司会が盛り上げ、

 一年生徒の視線が集まる中、

 彼らは異彩を放ちながら、

 紹介を始める。


 それはなんと言うか、

 真面目で先生受けのいい

 優等生の雰囲気を

 身に纏っていた。



「我が風紀部は、

 我が校の健やかな

 校風を存続するため、

 風紀を乱す生徒を取り締まる

 活動を行っています。


 真面目に

 過ごしている生徒はいつも、

 規則を守らない不良生徒に

 迷惑をかけられてきたこと

 と思います。

 

 だからこそ、

 そんな生徒を救うために、

 我々風紀部部員は一丸となって、

 取り締まりや

 検査も行っています。


 その件については、

 体験入部時に詳しく

 説明させていただきます。

 真面目で奉仕精神に

 満ち溢れた生徒の入部を

 心からお待ちしています」



「絶対、この部だ……」



 呆れとも拒絶とも

 つかない感情から、

 そう呟いていた。

 教室に戻り、

 あきくんに訊いてみると、



「あ、うん。

 そうそう、風紀部だよ。

 珍しいでしょ?」



 珍しいは珍しいが、

 堅苦しくて、

 何の面白味も感じられない。


 寧ろ、あの部長の

 笑顔と言動が既に嘘くさい。

 これじゃあ新入部員なんて、

 そうそう集まらないだろうな。



「ところでさ、あきくんは

 どこに入部するか決まった?」

「とりあえず、

 科学部と合唱部に

 体験入部しようと考えてる」



 本当に

 目立たなさそうな部活だなぁ、

 その部活の人には

 悪いかもしれないけど。


 そんなことを言えるわけもなく、

 あえて、

 その話題には触れないでいた。



「すごいねー、掛け持ちかぁー」



 この日から、

 あきくんは宣言通り、

 科学部と合唱部に体験入部した。


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