一学期
第2話 入学式という名の試練
四月。
入学式、クラス発表、
それは人見知りの
僕にとっては
災難と試練でしかなかった。
ある事柄がきっかけで、
僕は中学のとき、
女子たちから嫌われる
存在となっていた。
それ以来、
僕の人見知りは
悪化してしまった。
だから、新学期ほど
ストレスで
胃が痛くなるときは
ないと自負している。
「そーう!
何、しょぼくれてんの!
今が新しい友達を作る
絶好の機会なの、
座ったままじっと待ってた
って誰も寄ってこないよ」
僕の名前は東雲奏、
「かなで」と
間違えられることが多いが、
僕の名前は「そう」と読む。
ちなみに、
このお節介焼きな女子は、
中学からの友人で、朝倉桔花だ。
中学のあの一件を知る彼女は、
僕に構い、
あれこれ世話を焼いてくれる。
正直、助かっているのだ。
「桔花ならいるじゃん。
だから、いいの」
この発言もそういう
信頼と甘えの証だ。
そう呟いて、
僕はまた机に
顔を伏せようとした。
「そんなんじゃ、
あの目標は
到底叶いっこないよ」
その、「目標」というのが
無謀だということは
分かっている。
だからこそ、
その言葉に耳を傾け、
僕は弱々しい声音を漏らす。
「そう、なんだけどさー……
人種が違うから、
話しかけられない。
化粧濃い人とか、
ホント無理。怖い」
ふんふんと頷き、
共感しながらも桔花は、
僕に追い打ちをかけてきた。
「それは分かるかも。
だけど、今話しかけないと、
ぼっちになるよ?
女子の輪に参加する
わけにもいかないでしょ?」
さすがの僕も、頷く他なかった。
「はい、そうでございます」
「じゃあ、男子でもいいから、
話しかけてきたら?」
その言葉は
僕の行動エンジンをかけた。
「うん、そうする」
こう、なるべくちゃらくなさそうで
大人しめな雰囲気の……
そう心に決めて周囲を見渡すと、
丁度イメージに当てはまる
男子生徒がいた。
「あの、初めまして、東雲奏です。
よかったら、
友達になってくれないかな?」
「いいよ。俺は、瀬戸秋史。
こちらこそよろしく」
「瀬戸くんのことは
なんて呼べばいいかな?」
「なんでもいいよ」
「じゃあ、あきくんで!
よろしくね、あきくん」
僕のネーミングセンスに
突っ込むこともなければ、
表情一つ変えずに彼は応答する。
「じゃあこっちも、
奏くんって呼ばせてもらうな」
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