[ホラー小説]旧校舎の幽霊②(終)
「うわああああ!」
「ズボボボボ!」
僕は怖くてひたすら前に走った。すると走っても走っても前に進まなかったのが、少しずつ確実に前へ進んでいて女との距離が離れていった。
これなら逃げ切れる!と思った時だった。床がツルツルしていている箇所があり、僕はこけてしまった。
「グハッ!」
「ズボボボボ!」
こけた時に頭を強く打って気を失いかけた。
僕と吸引する女との距離はどんどん縮まっていく。
だが、ここで気を失ったら本当に危ない気がしてすぐに立ち上がって無我夢中で前へ走った。
今まででこんな全力で走ったことが無いんじゃないかというぐらいに全力で走った。
多分その瞬間だけは陸上部のエースよりも速く走れていたんじゃないかと思う。
「うわああああ!」
「ズボボボボ! ズボッ! ズボッ!」
旧校舎の廊下の角を曲がった時に吸引する女の直線上から外れたので、前に進めるようになった。
僕は泣きながら後ろを振り向かずにひたすら前へ前へと走って旧校舎から出た。
旧校舎に出た瞬間に大の字になって汗をダラダラとかいていた。
さすがにもう動けないやと思っていたのだが、ガラス越しに女が吸引しながら旧校舎の廊下を歩いてやって来るのが見えた。
外だとしてまた女の直線上に入ったら今度こそ捕まる…!
疲れでパンパンに張った足にムチ打って無理矢理校舎に向かって走った。
「はぁ…はぁ…」
「お、お前どうしたんだよ? ずいぶん帰ってくるのが遅かったな。もしかしてうんこか? ガハハ!」
「………」
教室に着いた後はガタガタと震えながらその日の授業をすべて受けた。
授業中にあの女が来ることは無かった。
「はぁ…。今日は散々だったな。帰るか」
「もう帰るのか? なら一緒に帰ろうぜ」
「ああ、分かったよ」
友達と一緒に帰ることにした。
「そういえばお前なんで今日は上履き履いてないんだ?」
「え? そんなはずは」
冷静になって足元を見ると上履きが2つともどこかで脱げて無くなっていた。
逃げてる途中でやつに上履きを吸われたのだろうか。
あんな怖い思いをしたので、さすがにもう旧校舎に行って上履きを探す勇気はなかった。
「そ、そんなことよりもあの旧校舎はヤバイ幽霊が出るんだよ」
「お前何言ってんの? 旧校舎ってとっくの昔に取り壊されてるじゃん」
「え?」
外に出て友達と旧校舎を見に行ってみると本当に旧校舎は無くなっていたのだった。
「ほら、旧校舎なんて無いだろ?」
「え、どうして…」
かなり前から今日まで旧校舎は確実にあったのにどうして突然なくなったのだろうか?
僕は何か長い間悪い夢でも見ていたのだろか? そう思えてきた。
だけど、僕の上履きはキレイに2つとも無くなっている。
そして何よりも、あの時の恐怖は体にしっかりと刻みこまれている。
それから、旧校舎は2度と姿を現すことは無かった。
そして僕以外に今日まで旧校舎が取り残されていたのを誰も覚えていなかった。
旧校舎とは一体なんだったんだろうか? それにもしあのまま女から逃げ切れていなかったら、僕はどうなっていたのだろうか?
そのことを考えると今でもゾッとする。
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