人生の階段と死神①

「ここはどこだろう?」


 自分は気が遠くなるくらいに途方もなく長い階段を下っていた。


「何なんだ、この階段は。終わりがないじゃないか」


 上も下も無限に階段が続いているのだった。

 自分はこのどこまで続いているのかも分からない階段をひたすら下っていく。

 正直、上った方がいいのか下った方がいいのかどっちかわからない。


「とりあえず、頑張って出口を目指すぞ!」


 だがしかし、一向に階段の出口は見当たらない。

 下りても下りてもキリがない。もしかして選択をミスったのかもしれない。

 上る方が正解だった可能性がある。だがしかし、上るというのは疲れそうなのでやめたのだ。

 上りよりも下りの方が体力の消耗が少ないと判断して自分は階段を下りている。


「ハァハァ…。なげぇーよ…」


 階段を下りてからどのくらいの時間が経っただろうか?

 ここには時計も何もないので正直時間の感覚は分からない。

 だが間違いなく1日以上は階段を下り続けていると思う。


「疲れたよ…。いつまで階段を下り続けなければいけないんだよ…」


 そんな時だった。階段を下っているとずっと遠くに豆粒のようなものが見える。


あれは何だ!?


自分は階段を下るのをひとまず止めた。


「あはは!あはは!」


 誰かの声が聞こえる。もしかしてずっと遠くに見える豆粒みたいなのが喋っているのだろうか?

 自分はあれが人間だと確信した。


「まさかこんなところに人がいるとはな…!」


自分は急いで階段を下りようとして足を踏み出そうとした。

 だが、自分は階段を下りれなかった。 何とも言えない不気味さと寒気を覚えたからだ。

 自分は来た道を急いで引き返した。階段を走って上った。


「あはは!あはは!」

「なんなんだあれは!?」


 結論から言うと豆粒大の大きさに見えたのはリュックを背負ったおっさんだった。 だが自分はなぜかおっさんに捕まってはいけないような気がしたのだ。

 あはは!という、あの笑い声がずっと頭から離れない。


「なんでだ! クソ! 消えろ消えろ!」

「あはは! あはは!」


 いや違うのだ。脳みそからあの声が消えないんじゃない。

 実際に笑うおっさんがすごい速さで自分に追い付こうとしてるから声が消えないのだ。


「あはは! 待て待てー! あはは!」

「ちくしょー!」


 自分もおっさんに追いつかれないようにひたすら階段を上る。

 おっさんは笑いながら永遠に自分のことを追っかけてくる。

 間違いなくあのおっさんのターゲットは自分だ。

 そしてあのおっさんは人間ではなく、人間の形をした何かだ。

 自分は階段を下ってきたという2択の選択はミスしただったようだ。

 本当は階段を上らないといけなかったようだ。

 やはり人生というのは楽な道を選ぼうとすると必ず後で追い詰められてしまうらしい。

 あの時、上り坂を選んでおけばよかったと今になって死ぬほど後悔をしている。

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