ガム依存症
「クッチャクッチャ!」
私はガム依存症だ。ただひたすらにガムを噛んでいる。
「クッチャクッチャ!」
別にガムが美味しいとか美味しくないとかそんなものは関係ない。ただガムを噛まなくてはいけないからガムを噛んでいるのだ。
もはやガムを噛んでいないと落ち着かないのだ。ガムを噛んでいないと何かこうイライラしてきてしまう。
これは病気なのだろうか? ガムを噛んでいないと歯が痒くなってきてしまう。
「あー! かゆいかゆいかゆい! ああああ!」
ガムを噛んでいない時はもう歯を思いっきり搔きむしりたくなる。これはもうガムを噛まないと鎮まらないのだ。
私はもうガムさえあれば何もいらないのだ。
いつかは世界中のガムを集める旅がしたい。
そしていろんなガムを同時に口に入れて思いっきりくちゃくちゃしたいのだ。
あーもう想像しただけで頭がおかしくなりそうだよ。
分かっている、本当は世界中を旅してガムを集めたいとか建前に過ぎないということだ。
ただガムを噛みまくって自分を落ち着けたいだけなのだ。
私はそんなことを考えているとまたガムを食べたくなってきた。
「あーガム! ガム!」
だがしかし、ガムのボトルの中身は空っぽだった。
もうガムをすべて噛み尽くしてしまったのであった。
家の中を必死で血眼になりながらガムのボトルを開けていく。
しかしどれもガムは入っていないようだ。
「あああああ! ガム!ガム!ガム! あああああ! 私のガムはどこに行ったのよおおお!!! ガムを返せええ!!!!」
ガムを噛みたすぎてその場でのたうち回る。
まるで子どもが駄々をこねるかのように地べたでジタバタしている。
「そうだ、ガムを買いに行こう。グヒヒ…」
財布の中身を確認してみた。だがしかし、空っぽだった。
「あれ、お金入ってないじゃないの…。あああああ! クソ!」
財布を壁に叩きつけた。財布の中から大量のレシートが散らばる。
そのレシートには、ずらっとガムを買った履歴が書かれている。
財布の中に入っていたお金は全てガムに費やしてしまったようだ。
「なんで家にガムがないのよー! ぶっ殺すわよ!! あああああ!!!」
どうやら無意識の間に全てのガムを噛んでしまったようだ。
寝ている時にもおそらくガムを噛んでいたのだろう。
「ガム噛みたい! ガムが嚙みたいんだよおー!」
ガムを噛んでいないと精神が安定しないのだ。
「このやり場のないモヤモヤはどうすればいいのよ! 誰か助けてよ! あああああ!」
床をドンドンと叩きつける! 部屋中には空のボトルがたくさん転がっていた。これは全てガムのボトルだ。
「もうだめだ…。ああああああ!!!!!!」
そしてついに歯をかきむしり始めたようだ。歯を掻きむしっている途中に歯茎を搔きむしって思いっきり血が出る。
「あー痛い!痛い!」
口から多量の血が吹き出てきた そして血が床へポタポタ垂れていく。
「駄目だ。今すぐガムを食べないと満たされない…」
するとゴキブリが汚い床を這っているところを発見した。
「もう何でもいい…。何か嚙みたい!嚙みたい!嚙みたーい!」
目を血走らせてゴキブリを全力で捕まえた。
ゴキブリを素手で捕獲するとガム依存症の人は、がぶがぶとゴキブリを食べ始めた。
恐らくは頭がおかしくなりすぎてゴキブリがガムに見えたのだろう。
食べた瞬間、目は上を向いていてものすごく満たされたような顔をしていた。
そして1分後には口の中からゴキブリは消えてなくなっていた。
もう原型を留めないほどにぐちゃぐちゃになったのだろう。
「あー、終わっちゃった…。なにか、なにか噛まないと落ち着かない…。あああああ!」
壁をドンドンと叩きつける。部屋中を走り回って暴れる。
その時、床に転がったガムのボトルを踏んづけた。
「あ…」
そして、それで滑って転んで後頭部から強く地面に叩きつけた。
どうやら気絶してしまったらしい。ただ、気絶したのは少し幸せなことなのかもしれない。
気絶している間はガムのことを考えずに済むからだ。
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