親、バイト先にやってきて説教

「もう! なんで私のバイト先に用がないのに来るの!? 散々来ないでって言ったのに!」


 私のバイト先にお父さんとお母さんが私のバイトの様子を見に来た。


「いや、お前がどうしているのかちょっと気になってな」

「見にきたわよー」

「もういいから早く帰ってよ!」

「おいおいどうしてそんなことを言うんだ? 俺たちはお客さんだぞ! そんな口のきき方でいいのか!」

「そうよ! ほら早く仕事しなさい!」

「ぐぬぬ…」


 ムカついたけどここはグッとこらえて我慢した。


「い、いらっしゃいませー!」

「ふむふむ、なるほどなるほど」


 親がメモを取り出して何かを書き始めた。


「お父さん! じゃなかった、お客様どうされました?」

「いやいや点数をつけているんだよ」


 点数をつけるとかいったい何様なのだろうか?


「何も点数をつけることまではないでしょ!」

「はい、それダメね」

「え?」

「他のお客さんにそれいつもやってるの?」


 親は私に嫌がらせをしてきたのだろうか? これじゃあさすがにちゃんと接客なんて出来ない。


「もういいから早く帰ってよ!」

「何を言っているんだ! まだ来たばっかりじゃないか! 今からゆっくりお前の仕事のことを確認するんだよ


 私もイライラが募ってきた。なんで仕事の邪魔をされた挙句、点数まで付けられなきゃいけないのだろうか?


 いくら帰ってと言っても一向に帰る気配はなかった。


「帰らない!」

「お父さんとお母さんはいいから帰ってよ! 邪魔しないで!」

「邪魔とはなんだ! お客様に向かって! お客様は神様だと何度も言っただろ!」


 急に親は怒鳴り始めた。


「お前はどんな気持ちで仕事をやっているんだ! もっと紳士的に真面目に取り組みなさい!」


 大勢の客の前で公開説教が始まったのだった。


「もう恥ずかしいからやめてよ!」

「恥ずかしいとはなんだ! 実の親に向かって! 俺はな、お前のためを思ってアドバイスをしてやっているんだぞ!」

「えええ…」

「このままじゃ立派な社会人になれないぞ! それでもいいのか!」


 何が社会だ。だったらもうちょっと暮らしが楽になるように稼いで来いと思ったのであった。

 そもそも誰のせいでバイトすることになっているんだという話なのだ。

 親の稼ぎが悪いからこうなっているのだ。親の頭はめちゃくちゃ硬いのでもう無視することにした。


「お客様〜3番テーブルです!」

「おい、あやか」

「お客様~4番テーブルです!」

「おい無視するな、あやか!」


 全部無視した。恥ずかしいからお願いだからやめてと思いながら顔を真っ赤にして作業をする。

 それにしても何で親は私のバイト先にやってきたのだろうか?

 普通だったら、この時間帯は親も働いているはずなのだが、これはもしやと思った。

 クビになったのではという疑念が生まれたのだ。

 親に直接本人に聞きに行くことにした。


「お父さんとお母さん、仕事はどうしたの?」

「あー、今日から無職だ。だから俺たちはお前に養ってもらうことにするよ。そのためにお前は徹底的に教育して社会に出ても恥ずかしくない労働者にしてやるからな」

「はぁ…」


 2か月後、私はなんやかんやあって実家から出ていたのだった。

 お父さんとお母さんは今はどうやって生きているのか分からない。

 子供に威張って養ってもらおうなんて親として恥ずかしくないのだろうか?

 でも助けたいとも思わないので、もうどうでもいいや。

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