所持金10円、ラーメン無銭飲食!?

「いらっしゃいませ~」

「ぐぅ~、美味しそう…」


 自分はお金がないのになぜか駅前のラーメン屋に入ってラーメンを頼んでいたのだった。本当にアホだ。


「はい、醤油ラーメンね」

「いただきます! ずるずる、美味い!」


 お金のことなんてすっかりと忘れてラーメンを口いっぱいに頬張る。

 スープも美味い。ずるずるとラーメンをひたすら食べる。

 本当にラーメンが美味すぎる。自分は数日ぶりにご飯を食べているのだ。

 その空腹が最高の調味料となって、なおさらラーメンが美味しく感じる。

 自分は空腹に耐えきれずにラーメンを食べてしまったのかもしれない。

 ラーメン屋の良い匂いを嗅いで、気が付いたらラーメン屋の中に入っていたのだ。

 自分もあっという間にラーメンを食べ終えてしまったのだった。

 気がついたらラーメンの器の中身はもう空っぽになっちまった。


「さてと、それではそろそろ帰ろうかな」


 自分は財布の中身を見てみた。財布の中には10円しか入っていなかった。

 さっき食べたラーメン、実は値段が1100円もするのだった。


「嘘でしょ…」


 やばい、どうしようどうしようどうしよう。


「お客さんどうしたんだ? お勘定は?」

「え、あの…」


 自分は内心めちゃくちゃ焦っていたのであった。

 これってもしかして無銭飲食ってやつになるのかな?

 そして自分は捕まって刑務所にぶち込まれるのかもしれない。そこまで想像していた。

 うわまじか、俺の人生ここで終わったよもう!

 どうすれば自分は救われるか必死に考えを巡らす。


「お客さん、さっきから黙っててどうしたんだよ。早くお金を渡してくれ。こっちも忙しいから」


 ラーメン屋はものすごく忙しそうだった。従業員はみんな忙しそうに働いている。

 周りの流れる時間はものすごく早く感じる。

 自分だけ、時が止まっているかのようだった 。

 だが、このままずっとフリーズをしていてもしょうがない。

 これ以上レジの人を待たせるわけにもいかない。

 もうこうなったらあれしかない。


「あの…」

「はい、何ですか?」

「実はその、すいません…。お金が足りなくて…」

「嘘ですよね…?」


 店員はものすごくびっくりしていた。


「お、お客さん、こっちだってお金を払ってもらわないと困りますよ!?」

「それはそうなんですけど、手持ちがこれしかなくて…」


 10円を出す。


「はぁ…。10円しかないのか…。まったくしょうがないなぁ…。だったら家から1090円を急いで取ってきてください」

「はい、わかりました!」


 自分は走って家へと帰るのだった。ちなみに走ってる途中で気持ち悪くなって胃の中のラーメンを吐いた。

 食後にすぐに運動するのはやめよう。


「と、とにかく1090円を持ってラーメン屋に行かないと! どこだ、早くお金出てこい…!」


 自分は必死に探すがお金がなかった。家の中を探しまくったが、100円すら1枚も落ちていなかった。

 実は自分、全然貯金をしない主義なのであった。

 だからどっかに100円が落ちていないかといろいろタンスの裏とか探したけど見つかる訳がなかったのだ。

 いくら探しても見つかるはずもなく諦めるしかなかった。


「いやー、これめちゃくちゃやばいやつじゃん…。俺、無銭飲食になっちゃうじゃん…」


 絶望感しかなかった。もう本当に人生が終わったと思った。

 自分はとにかく店に戻ることにした。


「いらっしゃいませ~ あ、お客さん。1090円持ってきた?」

「あの、実は…」

「はい」

「1090円がありませんでした…」


 一瞬、空気が凍り付いた。


「え、いやいやいや1090円ぐらいあるでしょ?」

「1090円がないんです…」

「どうして?」

「自分の全財産さっきの10円だけだったんです…」

「嘘でしょ…? どうすんのよ」

「すいません…」

「とりあえず店長と相談するからそこで待ってて下さい」

「はい…」


 自分はもう完全に終わったと思った。そしてラーメン屋の店主が出てきた。


「君が1090円払えなかったってやつか」

「すみません!」

「うーんそうだな、じゃあ今日は急に休みになった人がいるから代わりに働いてもらおうかな」

「え、そんだけでいいんですか?」


 自分はてっきり捕まるかと思っていた。


「いいよいいよ、特別大サービス! ただし、みっちり働いてもらうから覚悟しろよ!」

「は、はい!」


 自分はひたすらラーメンの器を洗い続けたのだった。


「いやー、めちゃくちゃ疲れたなぁ…」

「おう君、お疲れ! 助かったよ!」

「そ、そうですか」


 仕事が終わって、自分はものすごく疲れてくたくたになっていた。


「そうだ、せっかく手伝ってくれたんだしラーメンを無料で食ってけ!」

「え、良いんですか!?」

「次はちゃんとお金持ってきて来いよ!」

「はい!」


 自分はラーメンの食器を洗ったお礼としてラーメンを与えられたのだった

 ちなみに給料は出ていない。


「ズルズル美味い!」


 やっぱりラーメンは最高だ。

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