[ホラー] 失われた鼻を探し続ける男の子
「これは近所のおじさんから聞いた話なんだけど、ある男の子が何者かに鼻を噛みちぎられちゃったんだって。それで男の子は今でも自分の鼻を探して、この世をさ迷ってるって話だよ」
「ええ、何それ」
「この地域に伝わる都市伝説らしいよ。まあ私も最近まで知らなかったけどね」
「ちょっと気持ち悪いね…。ははは…」
私はこの地域に引っ越してからまだ半年だ。友達と怖い話をしようということになり、学校でこの話を聞いた。正直聞かなければ良かった。
「なんでもこの地域では一年に一度、鼻だけがない遺体が見つかることがあるらしいよ。多分、男の子は自分に合う鼻を見つけるために人を殺しまわっているのかもね」
「ええ、もうその話はいいよ…」
こんな感じで私は遊び半分でこの怖い話を聞いていた。
そのあと、学校で部活をやって何事も今日も学校生活が終わった。そして、部活の帰りに家への道中のことだった。
私は家に帰るのに坂を上る道があるのだが、今日は坂の上に見慣れない誰かがいた。西日のせいで顔がはっきり見えない。
ただ、坂の上の人間は何かがおかしい。ゆらゆらと自然な動きをしていた。それに何よりも手にはナイフのようなものを持っているのだ。明らかにおかしい。
「けっけっけっけっけ」
「え…?」
「けえええええええ!!!!」
「はっ!」
坂の上にいる人間こちらに気付くとと奇声を上げながらこちらに走ってくる。さすがにこれは異常だなと思って私は走って逃げた。
ただひたすらに走って逃げた後ろを振り向かずにひたすら走った。だがこのままじゃ家に帰れない。
私は家に帰るのを諦めて学校で怖い話をした友達の家に転がり込んだ。
「どうしたの急に?」
「なんか変な人に追いかけられた! 助けて!」
「そりゃ大変だね。まあ上がっててよ」
「ありがと…」
これは近所のおじさんから聞いた話なんだけど、ある男の子が何者かに鼻を噛みちぎられちゃったんだって。それで男の子は今でも自分の鼻を探して、この世をさ迷ってるって話だよ…
ここで昼間の都市伝説のことを思い出した。もしかしたアレは鼻を失って今でも鼻を探してる男の子なのかもしれないと思った。
「あの!」
「どうしたの?」
「もしかしたらなんだけど、昼間に話してた鼻のない男が出たかもしれない…」
これを話した途端に急に空気が変わったような気がした。
「ほ、本当に…?」
「かもしれないってだけ…。でもこのままじゃ家に帰れないよ…」
「そっか、今日は私の家に泊まっていってよ」
「ありがとう」
「でも家の人が心配するかもしれないから、家に電話してね」
「うん」
私は家に電話をすることにした。
ピッ!ポッ!パッ!ピ!………。プルプルプルプルプルプル!プルプルプルプルプルプル!
ガチャ…
「もしもし」
「………」
家族の誰かが電話に出ているはずなのに何も喋らない。もしかして、電話番号を間違って入力してしまったのだろうか? そんな時だった。
「ねぇ、何で逃げたの?」
「!?」
受話器から男の子の声がした。私に弟などいないのにだ。
「ねぇ、鼻ちょうだいよ。ちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだい」
「うわあ!」
ガチャ…。
私は怖くなって急いで電話を切った。何で私の家の電話番号で男の子が出たのだろう? そんな時だった。
プルプルプルプルプルプル!プルプルプルプルプルプル!
電話がかかってきた。私は怖くなって友達の部屋に逃げ込んだ。
「ど、どうしよう…」
「どうしたの?」
「家に電話かけたら男の子が電話に出て、鼻ちょうだいって言ってきた…」
「え?」
そんな話をしている時だった。
ピンポーン! ピンポーン!
友達の家のインターホンが鳴った。
「もしかしたら、鼻を失くした男の子が来たのかも…」
「大丈夫。このままやり過ごそう」
そのあとも何度もインターホンが鳴るが、少ししてから鳴りやんだ。
「ふぅ…とりあえず助かったね」
「そうだね。」
とりあえずホッとした。
トントン!トントン!トントントントン!トントン!
「え? なに!?」
二人してそう言った。窓の外から誰かが叩いているような音がする。
「ちょっと待ってよ…。この部屋二階なんだよ…!?」
「キャー!」
私たちは怖くてベッドの中で一緒にくるまってひたすら怯えた。そうして一緒に夜を明かした。
次の日、近所で猟奇的な殺人事件が起きたとニュースになっていた。被害者はやはり鼻がなかったらしい。
それ以来、特に目立ったことは周りで起きていないし、家に帰ることもできた。私も男の子のターゲットになっていたのかもしれないが、他の人が犠牲となり私は助かったのだろう。
男の子は自分に合う鼻を見つけることができたのだろうか? だから目撃しなくなったのだろうと思う。
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なんでもこの地域では一年に一度、鼻だけがない遺体が見つかることがあるらしいよ。
多分、男の子は自分に合う鼻を見つけるために人を殺しまわっているのかもね。
一年後にまた恐怖は必ずやってくる…。
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