[ホラー] 電車の中の断末魔

「はぁ…今日も会社行くの憂鬱だなー…」

 そんなことを思いながら、私は今日も電車に揺られながら会社へと向かっていた。


次は◯◯駅。◯◯駅。お出口は右側です。

「まだ目的地の駅まで時間あるし少し寝ようかな…」

私は眠くなってウトウトとしていたその時だった。


「キャーーーーーーーー!!!!!!!」

 どこかからものすごく大きな悲鳴が聞こえた。


「わーー!え…!?なになになに…!?」

 私はビックリして飛び起きて慌てて周りを見渡した。けれどこれと言って他の乗客に変わった様子は無かった。


「…………………」

私は他の乗客に冷たい目で見られていたのだ。


「あっ、すいません。てへへ…」

 何か悪い夢でも見ていたのかな?と私は思った。それにしてもやけにリアルな叫び声だったような気がした。


「もー、さっきの悲鳴はなんだったんだろ?」

 私はスマホのカメラで自分の髪型を確認した。すると後ろに誰か黒い人立っていた。

 私は一瞬心臓が止まるかと思った。私は電車の座席に座っているので、普通は後ろに立つ場所など無いのだ。


「え…」

 次にスマホカメラを起動して見てみると後ろには誰もいなくなっていた。私は色々と疲れていて何かの見間違いだったのかもしれない。

 この時はそう思っていました。私は怖くなって目的地の駅までずっと目を瞑ることにした。この日から電車に乗るとたまに変な現象を経験するようになった。


次の日ことだった。

「キャーーーーーーーー!!!」

グシャグシャ…

 また昨日と同じ大きな悲鳴が上がっていた。そして、その悲鳴に誰も気が付いていないらしい。私は恐る恐る周りを見渡してみることにした。


「あ…」

 私は多分見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。片腕と片足が無く、血が出ている女の人がいたのだ。

 だかしかし、こんな大ケガをしている人がいたら普通は電車の中がパニックになるはずなのに、みんなまるでその人に気が付いていないかのように平然としていた。

 多分見えるのは私だけなのかもしれない。私も気が付いていないフリをすることにした。もし気付いているのがバレたら何か悪いことが起こりそうな感じがしたからだ。

 するとその大ケガをしている人が乗客の顔を1人1人順番にゆっくりと丁寧に見始めた。その人はどんどんと私の近くまで迫ってくる。


バクバクバクバク…

 心臓が口から出そうなほど鼓動していた。恐怖で変な汗も流れ始めた。


 とうとう私の前に来た。

「ねぇ、腕と足をちょうだい…」

 私は電源の入っていない画面の暗いスマホを必死にタップしたりスクロールしたりをひたすら繰り返した。


「聞こえてるんでしょ…。ねぇ…」

 血だらけの女の人と私の顔がほとんどゼロ距離だった。私はもうダメだと思った

 だが、その直後すぐに隣の乗客の顔をまじまじと見始めたので、私は難を逃れた。

 私はこの恐怖の出来事がきっかけで電車に乗るのをやめた。今は電車の移動をする必要のない別の仕事をしている。

 これは予想なのだが、私が聞いていた悲鳴は人身事故に遭った人の断末魔だったのかもしれない。

 そして目の前に現れた血だらけの女の人は、この世を未だにさ迷っている人なのかもしれない。

 あの時、もし血だらけの女の人に気づかれていたらどうなっていたのだろうか?

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